「映画の見どころが簡単にわかる」として、近年YouTubeを中心に流行しているというネタバレ「ファスト映画」。しかしそんなファスト映画界隈で、6月23日に全国初の逮捕者が出た。
現在、若年層を中心に「タイムパフォーマンス」を重視する風潮が流行しているといい、そのウェーブに合わせて映画やドラマの「倍速視聴」などの時短テクニックが世の中全体に広がってきている。ファスト映画も、映画のおおまかな内容を知って自分に合う作品かどうかを確認してから視聴することで、「この映画見て時間無駄にした…」という失敗の確率を低減させる手段のひとつなのだろうか。
ファスト映画投稿で全国初の逮捕者!
23日に逮捕されたのは男女3人。著作権法違反の疑いでの逮捕だといい、2020年6月から7月にかけて複数の映画を権利者の許可なく編集しファスト映画としてYouTubeに投稿。広告収入を得ていたとされている。
この事件について、知的財産に詳しい中島博之弁護士は出演したABEMAの『ABEMA Prime』でファスト映画について、「(投稿者の)自分の意見が“主”で引用元の著作物についてはおまけ程度の“従”になっている」「報道・批評の目的の範囲内である」といった場合には、著作権の侵害に当たらないと解説。しかし「勝手に編集した映画の映像を流し、『面白かった』などと最後に10秒くらいで感想を語っている」程度では、主従に分かれているとも報道・批評の目的の範囲とも言えないと指摘。さらにその多くが、投稿者が広告収益を得るために行われている実態を明らかにした。
また今回の一件についても、逮捕された容疑者は複製権侵害・翻案権侵害・公衆送信権侵害などの罪に問われる可能性があると語っている。
ファスト映画すべてが違法なものというわけではなく、見た側としても「YouTube上であればストリーミング再生であってダウンロードには当たらず、違法だと認識した上で見たとしても取締まる法律はない」とABEMA Primeで中島弁護士が伝えている。
しかし罪に問われないからといって、ファスト映画を安易に利用していいというわけでないのも事実だ。業界団体のCODAは今回の1件を機に、ファスト映画によるこれまでの被害額を推定956億円相当であると明かしている。「ファスト映画が無ければこの金額がすべて興行収入になっていた」とは言えないかもしれないが、まったくの無関係でないことも確かだ。行為としてはファスト映画も“映画泥棒”に近いものなのかもしれない。
自分の時間を無駄にしないため、時短テクニックを駆使して効率化を図る気持ちもよくわかる。しかし「作品選びを失敗したくない」「要約で十分楽しめる」と自分のタイムパフォーマンス“だけを”求めるあまり、好きなはずの映画業界の不利益となって業界が衰退してしまっては元も子もないのではないだろうか。
映画を見るときくらいは、劇場に足を運んで時間を忘れて楽しんでみていただきたいものだ。
引用元:批評ではなく、単に広告収益を得るため?…“倍速視聴”が広まる中、悪質な「ファスト映画」動画にメス【ABEMA TIMES】
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