近年多発するデジタル時代を象徴するような犯罪被害の報告がまたひとつ届いた。今度は楽天グループで個人情報の漏洩(ろうえい)が確認されたのだ。その規模は、個人・法人を含めて150万件近くにものぼる可能性があるという。ここ数年急速に普及してきたキャッシュレス決済だが、ハイテク化が進む一方でこうしたデジタル犯罪の被害報告も後を絶たない。この一件が、現在繰り広げられているQRコード決済サービスの覇権争いにどのような影響を与えることになるだろうか…。
今回は、この一件で楽天グループが受けてしまうかもしれないダメージについて考えていきたい。
楽天の顧客情報に外部からのアクセス
楽天株式会社は2020年12月25日、「クラウド型営業管理システムへの社外の第三者によるアクセスについて」と題したお知らせを自社HPに掲載。楽天株式会社・楽天カード株式会社・楽天Edy株式会社の3社で、社外の管理システムに保管していた顧客情報に、第三者からのアクセスを確認した、と発表した。その数は最大で、楽天株式会社で約138万件、楽天カード株式会社、楽天Edy株式会社でもそれぞれ約1万5千件、8万9千件にわたる可能性があると報告している。その多くは法人や事業者の情報だとされているが、電子マネー決済サービス「楽天Edy」ではユーザーの情報も対象となっていた。
ここ10年ほどで急速にデジタル技術が発達し、それに伴い各種サービスも続々とデジタル化・オンライン化が進んでいる。しかし高度化した技術は悪意ある人々の使う手口も高度化させてしまい、近年急増するデジタル犯罪とそれを防ごうとする企業側のいたちごっこが続いている。
それは現在熾烈なシェア争いが繰り広げられているQRコード決済業界にとっても他人事ではなく、利用サービスを選ぶ基準の調査でも「安全なセキュリティ」が毎回上位に入ってくるほどだ。やはりQRコード決済が注目を集めていた2019年に、「7pay」で大規模な不正利用が発覚しスタートからわずか3ヶ月でサービスを終了した過去もあり、世間が「QRコード決済」という新たな決済方法の安全性に懐疑的になってしまったのかもしれない。
そうした前例のイメージがあるからこそ、QRコード決済にとってセキュリティへの信頼感は絶対不可欠なものと言える。今回の一件も、同じ楽天グループのサービスとして「楽天ペイ」の評判の低下につながる可能性もゼロとは言えないはずだ。
2019年頃には新規顧客獲得のため各サービスがこぞって大規模な還元キャンペーンを打っていたQRコード決済も、ここ最近は多くのサービスが既存顧客の囲い込みにシフトチェンジした様子も窺える。そんな中でも精力的に展開を続けて業界トップの座を争っていたのが、業界1位のPayPayと2位の楽天ペイだった。楽天ペイ自身の失策ではないが、これをきっかけに覇権争いから脱落してしまうかどうか。今後のシェア調査等の結果を待ちたい。
参照元:クラウド型営業管理システムへの社外の第三者によるアクセスについて【楽天】