日清・UHA味覚糖・サントリーなど大企業が次々と「VTuber」を起用する本当の理由とは?

最近、UHA味覚糖・花王・日清・サントリーといった大企業のCMで、生身のタレントではない「VTuber(バーチャルYouTuber)」を目にする機会が増えてきた。本来、VTuberの活動場所はYouTubeだが、今や大企業のCMに起用されるほどの人気を誇っているのだ。しかし、どうして大企業が芸能人ではなく、わざわざVTuberを起用するのだろうか? そこで今回は、VTuberが大企業のCMに起用される裏事情を探ってみる。

TV番組でも特集を組まれるほど人気の高いVTuber


 2016年12月、YouTubeに「キズナアイ」が登場して以来、数えきれないほどのVTuber(バーチャルYouTuber)が誕生した。キズナアイは、すでにYouTubeの登録者数が295万人を突破。その人気は留まることを知らない。VTuberについては→こちらの記事を参考にしてもらいたいが、2020年8月には、NHKが『NHKバーチャル文化祭』と題して人気VTuberを一堂に集めた特番を放映するなど、若者を中心に大変な人気を集めているのである。
 それだけの人気があれば、当然、企業がCMに起用するのも頷ける。たとえば、日清「カレーメシ」では、ホロライブ所属のVTuber3人が限定ユニット「スパイスラブ」を結成して、オリジナルCD付きのセットを発売。UHA味覚糖は「e-ma e-ma project」と題したVTuberたちとのコラボキャンペーンを開催しており、こちらはオリジナルのCDまで発売している。だが、大企業がVTuberを起用するのは、人気面だけではないある深い事情が隠されているという。それは……。

人気のあるVTuberは数十万人のフォロアーがおり、下手な生身のアイドルよりも人気が高い(写真はイメージです)

VTuberファンたちによるSNSの拡散力が凄い!

 まず、VTuberが企業CMに採用される第1の理由は、VTuberファンがSNSを日常的に使っているため、下手なアイドルより拡散力が高いことが挙げられる。VTuberのファンが「推しの○○が××のCMに出てる!」とTwitterで一言つぶやけば、一気に数多くのリツイートが行われる。それを見た人は、そのCMが気になってさらにリツイートを繰り返すので、アッという間に話題が拡散するのだ。もちろん、CMに出演するVTuber自身が「××とコラボしました!」とTwitterに投稿すれば、瞬く間に数万人の目に触れるのは言うまでもない。

トップクラスのVTuberともなれば、アッという間に数万単位の「リツイート」と「いいね」を稼ぎ出す。下手なアイドルでは、考えられないほどの拡散力を秘めているのだ

 生身のタレントを使ってCMを撮影をすると、スタジオはもちろんカメラマンやヘアメイク、スタイリストなど大勢のスタッフが必要となり、制作費だけで数百万円かかる場合も多い。しかし、VTuberなら人気タレントと違ってスケジュールを押さえる手間もいらないし、CMの制作コストもかなり安くなる。もちろん、出演料も超人気タレントに比べれば、現時点ではかなりリーズナブルであろう。
 さらに、CMの演出面でもエフェクトはCGを使えばどんなシチュエーションでも作れる。この辺りも芸能人を使った撮影に比べれば自由度が高く、企業側が求めるセールスポイントを強調したCMが作りやすいという側面もある。
 ちなみに、現在では人気VTuberの多くがフリーランスではなく、「ホロライブ」「にじざんじ」「Active8」「のりプロ」「774inc」といったタレント事務所に所属しており、制作会社や広告代理店がCM契約の話をしやすい環境にあることも付け加えておきたい。

VTuberは生身のタレントより圧倒的に制約が少ない。危険な場所での撮影や激しいアクションでもなんなくこなせる

VTuberなら芸能人よりもスキャンダルが少ない!

 大企業がVTuberをCMに起用する理由はほかにもある。まず、VTuberは若い世代に支持されているが、最近の若者はテレビをほとんど見ないため、テレビ用のCMをYouTubeで拡散できるというメリットがある。これはマーケティング的には重要な要素であろう。
 また、CMは商品のアピールだけではなく、企業のイメージアップという側面もある。たとえばCMに出演した芸能人が不倫や薬物などのスキャンダルを起こした場合、CMに起用した企業側もイメージダウンを免れない。その点、VTuberならば芸能人のようなスキャンダルは考えにくい。もちろん、最近はVTuberでも所属事務所とのトラブルや一部のVTuberによる炎上騒ぎはあるものの、比較的安心して起用できるのだ。企業にしてみれば、実はこの点がもっとも重要なポイントになっているのかもしれない……。
 いずれにせよ、このような理由から大企業は次々とVTuberをCMに起用している。これからもCMでたくさんのVTuberを見かけることになるだろう。

CMに起用した芸能人にスキャンダルが発覚すると、その企業のイメージダウンにつながる。VTuberにはこのようなリスクが少ないことも大きなメリットになっている

文=いしばしいちろう/編集・ライター

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