インターネットには広告があふれる時代となったが、その一方で、ウェブサイトに広告が表示されると、それを邪魔だと感じる人も多いのではないだろうか。そんな時に役に立つのが、「広告ブロッカー」だ。なんと、世の中では10億人もの人が広告ブロッカーを利用していると言われる。しかし、その広告ブロッカーには怖い落とし穴があったことを、サイバーセキュリティ研究員のSergey Mostsevenko氏がレポートにして、公開している。その内容を紹介しよう。
ほんの少しの痕跡から、あなたの情報が!
一般的な広告ブロックツールは、閲覧サイトにほとんど情報・痕跡を残さない。しかしあくまで“ほとんど”であって、それ単体ではユーザーのブラウザの特定には至らないものの、複数残された痕跡を総合することでブラウザの特定が可能になってしまうというのだ。このテクニックは「フィンガープリンティング」と呼ばれるもので、フィンガープリントとは指紋のこと。警察が指紋で個人を特定するように、ネット上でも小さな情報からユーザーを個別に特定してしまうのだ。実際に触っていないのに痕跡を残してしまうのは、考えようによっては指紋よりも厄介なものかもしれない。
広告ブロックツールには様々な種類があり、データを集めるのが難しそうなイメージがあるが、実はそんなこともないようだ。
10億人のネットユーザーは、それぞれ異なる広告ブロックツールを使っている。しかし、それがフィンガープリンティングのやりがいのある場所になっているようだ。Mostsevenko氏の解説よると、ウェブ観覧者の中からターゲットにしたい広告ブロッカーのリストをまとめ、それぞれのブロッカーがどんな広告をブロックしているかを調査。次に、HTMLコードをWebページに仕込み、ユーザーの見えないところでどの広告が通過できたかなどをチェックする。実際には、相当手間がかかるようだが、本気の企業がそれなりの技術力を導入すると、1秒もかからずに調査できてしまうようだ。Mostsevenko氏のテストでは、45個の広告ブロッカーリストを対象にしたチェックは3ミリ秒で、400個ものリストに対して20ミリ秒。ウェブ観覧中のページロードで調査されていても、数ミリ秒ならまったく気が付くわけもなく、知らない間にトラッキングされてしまう。
広告ブロックツールといえば、日常的に多くのウェブサイトを閲覧するようなヘビーユーザーなどが使っている印象も強い。しかしそうした比較的ネットリテラシーが高いであろうユーザーであっても、その裏に潜む危険性を完全に把握しているかと問われると難しいところだろう。
ネット上では何が安全で何が危険なものなのか。広告ブロックツールは、その線引きが難しい世の中になってきたことを示すものなのかもしれない。
参照元:知らない間にトラッキングされているかも… 本当は怖い広告ブロックツール【GIZMODO】