どうして「VTuber」はこんなに人気があるの? その理由を6つの視点で考察

トップクラスになると、スパチャ(投げ銭)だけで年間2億円以上も稼いでいる「VTuber(バーチャルYouTuber)」。2016年12月に「キズナアイ」が登場して以来、2018年ごろから急速に人気が出始め、今では毎月100人近くがデビューしているという。そこで、今回は、なぜ今VTuberがこれほど人気を集めているのか? その要因を考えてみたいと思う。

スパチャ生涯獲得額1億円を超えるVTuberは39人もいる!

そもそも、VTuberとは「バーチャルYouTuber(ユーチューバー)」の略。動画共有サイト「YouTube」において、二次元(3Dモデリング)のイラストをアバターとして使い、動画投稿やライブ配信をしている人たちのことをいう。

もちろん、VTuberはアニメキャラのようなアバターが画面に出ているだけで、声を担当する中の人は誰か分からない。なかには女性キャラなのに男性がボイスチェンジャーでVTuber活動を行っている場合もある。

■YouTube(公式)は→こちら

2016年12月に元祖VTuber「キズナアイ」がYouTubeに登場すると大変な話題となり、2018年頃から急速に人気が拡大。その後もどんどんVTuberは増え続け、ユーザーローカルの調査によると、2021年10月には1万6,000人を超えるVTuberが乱立する状況となった。

■ユーザーローカル「バーチャルYouTuber、本日1万6千人を突破」は→こちら

そして現在では、コンスタントに月100人以上のVTuberがデビューし、YouTuberのなかでも一大勢力を形成することになる。

それを裏付けるデータとして、YouTuberの分析&ランキングサイト「PLAYBOARD」によれば、2022年7月現在、YouTubeの生配信で利用できる投げ銭「スーパーチャット(スパチャ)」で、生涯獲得額1億円以上を稼いでいるのは57人(グループ)。そのうちの39人がVTuberで占められているのである。

それにしても、どうしてこれほどまでにVTuberが流行し、YouTube視聴者が思わずスパチャを大量に投げてしまうほどの人気を得ているのだろうか……? ここでは、その理由を6つの視点で考察してみたいと思う。

■PLAYBOARD(公式)は→こちら

PLAYBOARD(Image:playboard.co)

PLAYBOARDによるYouTubeのスパチャ生涯獲得額ランキングのTOP5のうち、なんと4人がVTuberである。6位以下もVTuberたちがズラリと並んでいる(画像はPLAYBOARD公式サイトより転載)

数万人が活躍するVTuberのなかで、人気を集めているトップVTuberに共通しているのは、やはりそのキャラクターコンセプトが際立っていること。

その代表例が2022年5月にデビューし、初日にいきなり登録者数12万人を突破、2週間後にはVTuber界最速でチャンネル登録者数100万人を突破した「壱百満天原サロメ(ひゃくまんてんばら さろめ)」であろう。

■壱百満天原サロメ(YouTubeチャンネル)は→こちら

壱百満天原サロメ(YouTubeチャンネル)(Image:youtube.com)

衝撃的なデビューを果たした壱百満天原サロメは、大手事務所のにじさんじに所属し、キャラクター性を重視しながらもゲームの腕はそこそこ。少しおバカな面も親しみやすく、人気VTuberとなるすべての要素を兼ね備えている(画像はYouTube.comより転載)

彼女がこれほどまでにウケた理由のひとつは、動画内でのトークやTwitterのつぶやきに必ず「ですわ」を付けて“お嬢様”を強く意識したキャラクターを打ち出していること。

壱百満天原サロメは動画内ではブッ飛んだ行動をしでかしているにも関わらず、「ですわ」とお嬢様としての振る舞いを決して忘れない。そのギャップが大きな魅力となっているのだ。壱百満天原サロメについてはこちらの記事で詳しく解説している。

VTuberの多くは同じようなゲーム実況をしたり雑談トークなどを配信している。そうなると、やはりゲームの上手い下手ではなく、いかに印象に残るトークができるキャラクターかが重要になってくる。

そうしたキャラクター性は、生身のYouTuberよりVTuberというアバターを使うほうが打ち出しやすく、キャラクターの性格が明確となっていることが、VTuber人気の理由のひとつになっている。

【理由2】VTuberはクラスに一人はいる身近な人気者!

かつて、アイドルや映画俳優といえば雲の上の存在であり、憧れであったが、最近は、もっとファンが共感できる身近なアイドルやタレントが増えている。“会いに行けるアイドル”で人気を博したAKB48は、その先駆けであろう。

そもそもYouTubeでは、必ずしも話芸に秀でたプロのタレントや有名人の配信がウケるわけではなく、人気があるのは意外と無名の素人だったりする。

これはVTuberにも当てはまっており、ゲームや歌がほかの人より少し上手いといった程度で、あとはキャラクター性やトーク力で勝負している。

なかには、配信が始まっているのに肝心なゲームの準備ができておらずオロオロしてしまったり、お酒を飲んで配信し、最後は酔ってグダグダになってしまうVTuberもいる。

だが、視聴者はそのVTuberのダメっぷりやドジな部分に親近感を持ち、応援することを楽しんでいたりするのだ。

つまり、VTuberは芸能人や俳優といったあこがれの存在ではなく、クラスに一人はいるちょっと面白い人気者といった存在だからこそウケているのである。

VTuberが普通の顔出しYouTuberと違うのは、生配信が非常に多いこと。生配信でスパチャが稼げるというのも大きいが、理由はそれだけではない。

YouTubeの生配信では面白い場面で視聴者が一斉にスパチャを投げて応援するが、金額が大きければVTuberがファンの名前を読み上げてくれたり、チャットに投じたコメントを読んでリアクションをしてくれる。

これによりライブの臨場感や一体感を味わえるため、VTuberと視聴者の距離はグッと近くなるのだ。

まして、VTuberに自分の名前を覚えてもらえば、その喜びはひとしお。結果、おのずとファンのスパチャ額もどんどん大きくなっていくのである。

YouTubeの生配信におけるスパチャがどういうものかは、こちらの記事で詳しく解説しているので参考にしてもらいたい。

【理由4】大手事務所の「箱推し」で全体を押し上げる

VTuberは素人がやっているといっても、トップクラスのVTuberになると、そのほとんどが「ホロライブ」や「にじさんじ」といった大手事務所に所属している。

しかも、同じ事務所に所属するVTuber同士でグループを作ったり、コンビを組んだりすることで、相乗効果を高めているのだ。

これは、リアルアイドルグループのAKB48や乃木坂46、欅坂46などでも行われている手法で、グループ全体を応援する「箱推し」と呼ばれるもの。これによって、事務所のメンバー全員でグループ(箱)の人気を押し上げる効果が期待できるのである。

また、事務所ごとにグループ内でのメンバーの立場を確立させている場合も多い。ホロライブでいえば、事務所で開催するイベントで司会役を務める「大神ミオ(おおかみ みお)」や、リーダー的立場の「白上フブキ(しらかみ ふぶき)」などが、その代表例だ。

■白上フブキ(YouTubeチャンネル)は→こちら

白上フブキ(YouTubeチャンネル)(Image:youtube.com)

トップクラスの人気を誇る白上フブキ(ホロライブ所属)は、事務所内イベントでは常にリーダーとして活動。自身の配信の中では視聴者をとても大事にしているのが伺える。だからこそファンはスパチャを投じて応援するのだ(画像はYouTube.comより転載)

もちろん、個人でがんばっているVTuberもたくさんいるが、やはり、1人だけで同じことをやっていてもマンネリ化し、結局は1〜2年で飽きられてしまう。

その点、大手事務所に所属するVTuberなら、グループ全体で盛り上げられるし、新人が定期的にデビューして、常に新しい人間関係が築かれていくことも、大手事務所所属のVTuberがいつまでも飽きられない理由といえるだろう。

■ホロライブは→こちら

ホロライブ(Image:hololive.tv)

最大手事務所「ホロライブ」には、スパチャ生涯獲得額3億円超の「兎田ぺこら」、チャンネル登録者数400万人超の「がうる・ぐら」など、超ビッグネームが多数所属している(画像はPLAYBOARD公式サイトより転載)

■にじさんじは→こちら

にじさんじ(Image:nijisanji.jp)

「にじさんじ」には、今話題の壱珀満天原サロメをはじめ、スパチャ生涯獲得額2億円超えの葛葉などが所属。ほかにも叶、イブラヒム、Vox Akuma、ルカ・カネシロといった人気の男性キャラも数多く在籍している(画像はPLAYBOARD公式サイトより転載)

大手事務所ではVTuber同士の横の繋がりも重視している。そのため、コラボ配信(自分のチャンネルに事務所内のメンバーを呼んで複数人で配信すること)を数多く行っており、それがまたグループ(箱)としての人気を高めている。

たとえば、誕生日配信や1周年記念配信などでは、同じ事務所所属の仲良しVTuberが駆け付け、一緒に配信を盛り上げることが多い。このような配信では1回で数百万円のスパチャが飛び交うことも珍しくない。

VTuberの世界では、ギスギスした現実社会と違って基本的に“みんなで平和に仲良く配信”を行っており、視聴者もその平和なグループの一員として一緒に参加できる。そして、疲れ切った心が癒されリフレッシュできる仕組みが出来上がっているのである。

【理由6】二次創作や切り抜き動画で口コミ集客が期待できる

アニメやマンガ、ゲームの世界では、人気のキャラクターのコスプレや、パロディ同人誌やグッズなど、ファンが自由に二次創作活動をすることで、そのキャラクター人気が増幅される(バズる)傾向にある。

その点でも、VTuberはアニメキャラのような可愛らしい女性やかっこいい男性キャラが多いので、二次創作活動を行っている、いわゆる“オタク”層に人気が出やすい。

VTuber大手事務所側も、ファンがVTuberを応援するために二次創作することに理解を示しており、著作権をむやみ主張することなく二次創作時のガイドライン(ルール)を公表している。そのため、VTuberのファンも安心して二次創作活動を行える環境が整備されているのだ。

■ANYCOLOR二次創作ガイドライン(にじさんじ)は→こちら

このようにして作られた二次創作作品は、本人がTwitterなどのSNSで発表したり、動画のサムネイルなどに使用されたりするため、それを見た人が「なんか面白そう!」と、VTuberの動画を視聴し、新たなファンを獲得するという好循環が出来上がっている。

ほかにも、YouTubeではVTuber配信の「切り抜き動画」も数多く存在するが、これはVTuberの動画配信のなかの見どころ部分だけをピックアップした動画のこと。

VTuberの配信は数時間に渡るものも多いので、10分〜30分程度にまとめられた切り抜き動画なら、効率的に話題の動画をチェックできるというわけだ。

このような「二次創作作品」や「切り抜き動画」なども、生身のYouTuberではほとんど見られないが、VTuberではごく当たり前になっており、口コミ集客力にも一役買っていると言える。

まとめ

いかがだろうか? VTuberがどうしてあんなに人気があるのか、何となくお分かりいただけたと思う。

現在、VTuberは日本だけでなく日本の漫画・アニメ文化が大好きな外国人にもウケているが、最近注目されているのは「ホロライブEN」や「にじさんじEN」などに所属する“外国語が堪能なVTuber”たちだ。

多言語を自在に操れるVTuberなら、世界を相手に活躍できるので、その収益もケタ違いになってくる。今後はグローバルに活躍できるVTuberがさらに増えてくることだろう。

いしばしいちろう
編集・ライター。20年以上、某ゲーム雑誌の編集部に所属。ゲームやパソコン、カメラ、鉄道などが得意分野だが、フリーになってからはコスプレイヤーの撮影にハマったあげく、最近はVTuberにどっぷり浸かっている。

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