借用書の正しい書き方をテンプレート付きで解説!契約を無効化しないための正しい手順

借用書とは、お金や物品などを貸したり借りたりする際に作成する契約書。個人間でも、たとえば「後払いサービスの支払いに遅れそう」といった場合に、一時的にしのぐ目的でお金を借り入れることもあるのでは。

個人間の借金でも「借用書」は簡単に作成できますが、必要な項目やルールに注意しなければ、法的効力が弱くなったり無効になったりする恐れがある点は要注意。

借用書の正しい書き方をテンプレート付き解説!契約を無効化しないための正しい手順1

友人や家族からお金を借りる場合、「わざわざ借用書を交わす必要はないのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、いくら近しい関係の人でも、お金に関することではのちのちにトラブルが発生しがち。家族だとしても借用書は作っておくべきです

そもそも借用書はなぜ必要?書く意味とは?

借用書は、お金や物品などを貸したり借りたりする際に作成する契約書。正確には「金銭借用書」や「金銭消費貸借契約証書」などと呼ばれます。

借用書を作成するメリットは、貸し借りの事実や条件を明確にできること。また、返済の遅れやトラブル発生の際に、証拠として利用できます。

借用書を書くのは「借主」か「貸主」か?

借用書は貸主が書くのが一般的です。これは、返済遅れやトラブル発生時に証拠として利用するのが貸主なことが多いため。借用書は、貸主が条件を提示して借主に同意を得ておき、契約内容に不満や不安を持たせないようにするのも目的です。

一方で場合によっては、借主が書くことも。たとえば、個人間での買い物代金や飲み代などの小額の負債や、友人・知人間での信頼関係が高い場合などです。借主は自分から積極的に借用書を作成することで、貸主に対して返済意思を示せます。

借用書の書き方【テンプレート付】

実は、借用書は形式や様式が決まっていません。借用書を書く「紙」にも規定はありません。極論、紙はチラシやカレンダーの裏紙などでも問題ありません

借用書の書き方【テンプレート付】1

「返済期日」「利息」「遅延損害金」「返済方法」など、一般的に必要と思われる記載が一切ないこのような借用証で、たとえチラシの裏に書かれたものでも書面としては一応機能します。ただし、トラブルを避けるためには以下で紹介する7つのポイントは最低限抑えておきましょう

借用書で押さえるべきポイントは下記の7つ。

・表題(タイトル)
・収入印紙(1万円を超える場合)
・作成日
・貸した金額
・返済期限・方法
・借主の名前・住所・押印
・お金を貸す人の名前

借用書の書き方【テンプレート付】2

①収入印紙

借用書は、印紙税の課税対象である「課税文書」です。そのため、1万円を超える金銭の貸し借りには収入印紙が必要。収入印紙を忘れた場合は印紙税法に違反し、脱税に該当する場合があるため気を付けましょう。

収入印紙の金額は借入金額によって変動します。借入金額ごとの収入印紙の金額は以下の通りです。

借入金額 収入印紙の金額
1万円未満 非課税
1万円以上10万円未満 200円
10万円以上50万円未満 400円
50万円以上100万円未満 1,000円
100万円以上500万円未満 2,000円
500万円以上1,000万円未満 1万円
1,000万円以上5,000万円未満 2万円
5,000万円以上1億円未満 6万円
1億円以上5億円未満 10万円
5億円以上10億円未満 20万円
10億円以上50億円未満 40万円
50億円以上 60万円
契約金額の記載のないもの 200円

借用書を作成せずに親族から借入をした場合、贈与税の対象になる可能性があります。余計な出費を抑えるためにも、必ず借用書を作成しましょう。

 ②借用書の表題

表題は「借用書」でも構いません。しかし、貸し借りの内容によっては、正式名称を用いると書類内容を把握しやすくなります。正式名称を用いる場合は、金銭の貸し借りは「金銭借用書」や「金銭消費貸借契約証書」、物品の場合は「物品借用書」といったように使い分けます。

③借用金額(事前に印刷するか漢数字で記載する)

アラビア数字の場合は、末尾に勝手に0を付け足すなど、分からないように金額を変化させることが可能。つまり、借用書の内容を簡単に変更できるため、おすすめできません。一方で漢数字の場合、勝手に数字を増やすのは困難。

たとえば、1万5千円の貸し借りが発生した場合は「壱萬伍阡円」と記載します。漢数字を使用すると、借用書の管理者が内容を変更する可能性がほとんどないため安心です。

なお、あらかじめ借り入れる金額が決まっている場合は、「不動文字」として始めから契約書に金額や内容を印字しておき、双方が納得した上で署名するという方法もあります。

 ④作成日

借用書の作成日は、借主がお金を受け取った日付を記入します。法的には、貸主が催促や取り立てなどの行動がないまま10年が経過すると借金は無効となります。作成日をもとにして定期的に返済要求を行い、時効が成立しないように対策しておきましょう。

 ⑤借主の氏名・住所

借主の氏名と住所を借用書に記入するのは「同姓同名の別人の借金」と言い逃れされるのを防ぐのが目的です。

同時に注意すべきなのが「押印」。押印は印鑑証明書が添付された借主の実印で行っておけば、トラブル発生時に公的な証拠として活用できます。

⑥借入日

借入日は作成日と同じ日付を記入します。借入日には、契約成立日・借金返済義務発生日・利息発生日という意味があります。借入日は、適正な利息を計算するためにも必須なため、必ず記入しましょう。

 ⑦返済期限

返済期限がなければ、いつまでも返済してもらえない・借金が無効になるなどのリスクが生じます。なお、返済期限は利息を含めた、すべての支払いが終わる日を表します。

⑧利息(利息なしの場合でも記載する)

利息を設定する場合は、貸主と借主の話し合いで割合を決定し、「利息〇%」と記載します。利息は利息制限法で以下のように定められています。

借金の元本 金利の上限
10万円未満 年利20.0%まで
10万円以上100万円未満 年利18.0%まで
100万円以上 年利15.0%まで

一方で、出資法では個人間の金銭の貸し借りの場合、最大年利109.5%まで可能と定めています。利息制限法と出資法の違いは罰則の有無。利息制限法には罰則がなく、出資法には罰則があります。

そのため、上記の表よりも大きな利息を設定できますが、借主は利息制限法を超えた利息を過払い金として返還要求できる点に注意。余計なトラブルを防ぐためにも、利息制限法に従っておくのが賢明です。

なお、家族や友だちなど近しい人との借金の場合、「利息は不要」という場合もあるでしょう。この場合も「利息は発生しない」ことを明確に書いておく必要があります。

 ⑨返済方法

現金渡しか振込か、分割返済か一括返済かなど取り決めておきましょう。手渡し・口座振込など、具体的な返済方法も同時に決めておくとよりスムーズです。

返済方法に関わらず、返済時は必ず「領収書」や「受領証明」を発行してもらうのもポイント。銀行振込の場合は通帳には但し書きが記載されず、返済の証拠としては不十分です。領収書や受領証明は、借金返済のための支払いだったことを示す証拠となります。

借用書の効力がなくなる?作成時の注意点

借用書の効力がなくなるのは、おもに以下のようなケースです。

・署名捺印がない
・借主が未成年で、親権者の同意がない
・金銭を受け取ったことを証明する文言がない

上記以外にも、常識から大きく外れた内容や違法な内容があった場合は、借用書が無効になる可能性があります。前述した借用書の項目に記載漏れがないかをチェックするとともに、注意点を守って借用書を作成しましょう。なお、確実性を求める場合は弁護士など専門家に相談・依頼するのがベストです。

借用書に関するFAQ

借用書に関するよくある疑問をご紹介します。

借用書は後から書いても効力がある?

借用書はお金を貸すときに作成するもの。後から作成する場合は「債務承認弁済契約書」という別の書類になります。

債務承認弁済契約書は、お金を貸したことや返済条件などを改めて確認するもので、元金の一部がすでに返済されている場合でも作成可能。

債務承認弁済契約書は、借用書の内容を補填できるのもポイントです。返済日や返済金額が不安定な場合に、債務承認弁済契約書で返済日と返済金額を具体的に指定できます。なお、債務承認弁済契約書の作成には借金の金額に関わらず、印紙代が200円必要です。

借用書を作るときのポイントは?

個人間で借用書を作るときのポイントは以下の通りです。

・署名は手書きする
・借用書の内容を変更できないようにする
・借用書は1枚作成し、借主が記入したものを貸主が保管する
・返済時は銀行振込で記録に残るようにする
・収入印紙が必要な条件を把握しておく

上記のほかにも、領収書の発行や返済日の指定などについても記載できればより安心でしょう。

収入印紙は必要なの?

1万円以上の金額を借り入れる場合は必要です。収入印紙の金額は借入する金額によって異なるため、事前に確認しておくのがおすすめです。

借主が未成年の場合も借用書は有効?無効になる?

借主が未成年の場合は親の同意が必須。親の同意がない契約は無効になるケースがあります。トラブルを回避するためにも未成年とのお金の貸し借りは避けましょう。

まとめ | 借用書があれば人間関係が崩れる心配が減る

筆者は数年前に従兄弟に50万円貸した経験があります。借主は筆者以外の親戚からも借金があった上に、複数の相手に返済が滞っていることが発覚。現在は孤立状態になっています。

筆者が貸したお金は、10万円ほどが返済されておらず「借用書を作成しておけば良かった」と感じています。お金を貸し借りするときは借用書を作成し、お金だけでは手に入らないものを失うリスクを軽減しておきましょう。

オトナライフ編集部
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