NHK受信料は「NHK放送を受信できるテレビや機器」を設置している場合に支払い義務が発生します。放送を見ていなくても支払い義務があるため、一部からさまざまな疑問や不満が噴出しているのも事実です。
受信契約後「NHKを見ていない」という理由から受信料を支払わずにいると、NHKから督促状が届きます。それでも滞納し続けた場合、裁判所を通じて「支払督促」が届き、支払い拒否をすれば強制執行で財産を差し押さえられることも。
一方「NHKが受信できるテレビや機器」が家にない場合は、契約そのものが不要です。この記事では「NHK受信料を払わないとどうなるか」や「NHKが受信できる機器とはそもそも何か」「正式に支払いを免除する方法」について詳しく解説します。
NHK受信料とは
NHK受信料とは、日本放送協会 (NHK) が放送するテレビ・ラジオの受信機を所有している全世帯に対して課金される料金のことです。しかし「受信料が高い」と不満を抱いている人は数多くいます。
アンケート結果について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
「NHKが受信できる機器」とは?チューナーレステレビやスマホは対象?
「NHKが受信できる機器」とは、基本的に「NHKを受信できるチューナーを搭載したテレビ」のこと。しかしテレビだけが対象というわけではなく、過去の判例などからNHK放送を受信できるカーナビやパソコン、ワンセグ搭載の携帯電話なども対象となることが分かっています。
なお、NHKの公式サイトにも「NHKの放送が受信可能な設備」として携帯電話・スマートフォン、カーナビ、パソコンが記されています。
一方、これを逆手に取れば「チューナーレステレビの保有者」はNHK受信料の支払い対象にはならないということです。
しかし家にテレビを設置しておらず「NHKの放送が受信できない」スマホやパソコンなどネット環境がある場合でも、将来的には受信料を徴収される可能性も。「受信料支払いの対象になるか」は“ネット受信料”を含め、NHKの業務などを検討する総務省の有識者会議「公共放送ワーキンググループ(WG)」が議論を重ねています。
なお「NHK+」などネット事業の進出が加速しているNHKは弁護士JPの取材に対して、将来的なネット受信料の徴収は想定していないと回答。しかし現在の法令では難しくとも、将来的な法改正の可能性を指摘する専門家もいます。
受信料が支払われない理由と割合
NHKが発表した2021年度末の受信料「都道府県別推計世帯支払率」によると、全国値は78.9%。約2割の世帯が受信料を支払っていないという結果です。なお、大阪府では65.2%、東京都で67.3%と、全国値を下回っており大都市圏では低い傾向にあります。世帯の移動や単身世帯が多いこと、テレビなどの受信器の設置確認が難しいことが理由と考えられています。
●2021年度末 受信料の推計世帯支払率(全国・都道府県別)について(PDF)【NHK】
受信料が2023年10月より値下げされる
NHKは2023年10月から受信料を1割値下げすることを決定しています。
具体的には、地上契約は月額1,100円(125円値下げ)、衛星契約は月額1,950円(220円値下げ)に変更されます。
NHK受信料を支払わないとどうなる?
NHK受信料を支払わずにいると財産を差し押さえられる可能性があるため注意が必要です。
未払いから強制執行までの流れ
先述した通り、NHKは過去、受信料滞納者に対して強制執行(財産の差し押さえ)を行った実例があります。
(画像は「NHK放送文化研究所」より引用)
差し押さえされる財産とは
前述の通り、NHKは2010年に滞納受信料に対する初の強制執行を行っています。具体的には不払いの意志が固く、再三の通告にも対応を行わなかった5人が対象でした。なお5人の受信料の滞納期間は36か月~54か月、滞納額の最高は13万1,800円、最低は7万1,746円。総額は48万5,858円でした。
参考元:NHK放送文化研究所
一般的に強制執行で差し押さえの対象となるのは、不動産、債権、動産の3種類。たとえば債権者の勤務先の給料は「債権」にあたり生活維持費以外は差し押さえの対象になります。家や土地は「不動産」、債権者が所有する現金(66万円を超える現金)や貴金属、有価証券などは「動産」に当たり、これらも差し押さえの対象です。
消滅時効や最高裁判例について
NHKの受信料については、2014年の最高裁判決で「消滅時効の期間は5年」と認められています。つまり、過去5年以上遡った受信料については支払義務がなくなるということです。
ここで重要なのが「時効の起算点はいつか?」ということ。NHKと受信契約を結んでいる場合、最終支払日の翌日が起算点(時効カウントのスタート日)となります。一方、NHKと受信契約を結んでいない場合は時効期間が進行せず、いつまでも支払義務が続きます。
なお、NHKの受信料は「NHKを受信できる機器」を設定した時点で支払義務が発生します。つまり長期間契約せずにいた場合、5年以上前の分から請求される可能性があるということです。
NHK受信料の支払いを正式に免除する方法とは?制度・手続きの詳細
NHKの受信料手続きを正当な方法で免除する方法について解説します。
受信機器がない場合や免除制度について
自宅に「チューナーレステレビのみを設置している」などNHKの受信機器が無い場合は、NHKとの契約は不要です。また「テレビを設置している」場合でも、生活保護世帯の方や親元から離れて暮らす奨学金受給対象の学生などはNHK受信料が全額免除になります。
(画像は「NHK公式サイト」より引用)
NHKとの契約拒否や解約方法について
契約を解約したい場合はNHKふれあいセンター(営業)に連絡して手続きが必要です。
連絡先は以下の通りです。
・フリーダイヤル:0120‐151515
・ナビダイヤル:0570‐077‐077
解約時は所定の届出書の提出が必要になるため、NHKふれあいセンターの指示に従って進めてください。
参考元:NHK受信料の窓口
NHK受信料に関するよくある質問
NHK受信料についてよくある疑問をご紹介します。
学生や単身赴任の場合でもNHK受信料は払う必要がある?
NHK受信料には「家族割引」が存在します。同一生計で離れて暮らす学生や単身赴任の場合、それぞれが受信契約を結んだ上で学生や単身赴任者は受信料が半額になります。また前述した通り、親元から離れて暮らす奨学金受給対象の学生や経済的理由から授業料が免除になっている学生は、NHK受信料も全額免除です。
NHK受信料を払っても「一切視聴していない」場合は返金される?
たとえばNHK受信料を前払いした場合、「一人暮らしから実家に戻った」などの理由で解約したのなら過払い分は返金されます。この場合、住民票などの証明書類などの提出が必要です。なお、単に「見ない」という理由では解約できず返金もできません。
参考元:NHK放送受信料に関するご案内
NHKは「受信料を支払っていない海外の人向け」にも放送されているのはなぜ?
放送法第二十条で「邦人向け国際放送及び外国人向け国際放送を行うこと」と定められています。つまり、NHKが海外向けに国際放送を行っているのはNHKの必須業務として法律で決められているからです。
NHKの受信料の支払い方法は?
受信料は金融機関からの口座振替、クレジットカード払い、払込用紙での支払いが可能です。払込用紙の場合、金融機関や郵便局、コンビニエンスストアのほか、また、「ペイジー」でネットからの支払いもできます。
NHKの受信料には「消滅時効」がある?
前述の通り、受信料には5年の消滅時効があります。ただし「NHKと契約していること」が前提で、そもそも契約をしていない場合は時効が発生しません。
まとめ
多くの人が「高い」と感じているNHK受信料ですが、支払わずにいると強制執行を受ける可能性があります。ただし最近はNHK放送を受信できない「チューナーレステレビ」を利用する人も多く、この場合は支払義務はありません。また条件によっては受信料が全額免除や半額免除になるケースも。チューナーレステレビでもTverなどのアプリを利用すればテレビの視聴も可能なため、NHK受信料を支払いたくない人は検討してみるといいでしょう。
監修者コメント
NHKの受信料強制に反対の考えをお持ちだからといって、「協会の放送を受信することのできる受信設備」を設置しているにもかかわらず、受信契約を結ばないことは「違法」となります。
また支払義務について、NHKは放送受信規約を根拠に支払いは義務づけられているとし、一方で参議院総務委員会でのNHK前田会長発言を根拠に「契約は義務だが、支払いは任意」との解釈でNHKの受信料制度に対抗する政党も存在しています。
国民の価値観が多様化し、様々なメディアが存在する現代において、契約が強制される公共放送が妥当なのか、民意を反映した議論が必要とされているのかもしれません。
※サムネイル画像(Image:yu_photo / Shutterstock.com)
監修日:2023年4月12日