なにかと話題の実業家・イーロン・マスク氏がCEOを務めるスペースX社が提供しているインターネットサービス「Starlink(スターリンク)」をご存じですか?2022年にはロシアから軍事侵攻を受け、通信インフラが危うくなったウクライナに無償でサービスを提供し、大きな話題にもなりました。
実は日本でも利用可能で、山間部や離島など通信インフラが整っていない地域でもネット接続ができるようになる「Starlink(スターリンク)」。この記事では、Starlink(スターリンク)の概要や仕組み、利用方法を解説します。
Starlink(スターリンク)とは: 他の通信サービスと比較して何が画期的?
Starlink(スターリンク)は、SpaceXによって開発された衛星インターネットシステムであり、イーロン・マスク氏の指導の下で展開されています。2023年3月にもロケット「ファルコン9」の打ち上げを成功させ、2023年5月現在、プロトタイプを含む4053機の衛星を打ち上げています。
Starlink(スターリンク)の概要
Starlink(スターリンク)の仕組みとその革新性
Starlinkは、非常に多数の衛星を結ぶ衛星コンステレーションを利用しています。これにより、地上から衛星へのデータ送信と衛星から地上へのデータ受信が行われます。
Starlink(スターリンク)の事例
ウクライナ軍の通信インフラとしての衛星提供Starlink(スターリンク)はウクライナ軍の通信インフラとしても活用された実績があります。2022年のロシアによるウクライナへの軍事侵攻時、ウクライナ国内の通信インフラは壊滅的なダメージを受けました。
参考元:マスク氏がStarlink(スターリンク)をウクライナ国内に提供開始した際のツイート
Starlink(スターリンク)の衛星通信は、ウクライナの従来の通信インフラが破壊された状況でも重要な役割を果たし、情報伝達や救援活動に活用されました。この事例は、同サービスの持つ災害時や戦時下の通信バックアップとしての価値を示しているといえるでしょう。
Starlink(スターリンク)の主なメリット
Starlink(スターリンク)の一番のメリットは、場所に左右されないネット環境。また、災害時にも利用可能、通信速度が高速、設置や操作方法が簡単といったことも挙げられます。
メリット1. 場所に左右されないインターネット環境
Starlink(スターリンク)の大きなメリットは場所に左右されないインターネット環境。衛星通信により、これまでの通信サービスではカバーしきれなかった山奥や辺境の地域でも、ネットを使えるようになります。
メリット2. 自然災害などへの通信インフラの備えとしても最適
先述した通り、Starlink(スターリンク)は自然災害に対する通信インフラの備えとしても期待されています。
災害時は通信回線が寸断されることがあり、被災地ではネット環境が使えないことも起こります。しかし、衛星通信は、地上の通信インフラが破壊されている状況でも独立して機能。
メリット3. 衛星インターネットとしては非常に高速な通信速度
これまで述べてきた通り、Starlink(スターリンク)は衛星インターネットとしては非常に高速な通信速度が提供されています。
従来の衛星通信と比較して通信速度や遅延が大幅に改善されているため、高品質な通信体験が期待できます。
メリット4. 簡易な設置と操作方法
初期設定やアンテナの設置はユーザー自身が行うことができ、設置場所さえ確保できていれば専門知識は不要です。設置にかかる時間も10分から20分程度で済みます。「場所」さえ確保すれば、設定が極めて簡単なのはStarlink(スターリンク)のメリットです。
Starlink(スターリンク)の主なデメリット
Starlink(スターリンク)のデメリットは、取り付け場所に注意が必要なこと、現状では光回線に勝るメリットは薄いことが挙げられます。
デメリット1.設置自体は簡単だが「取り付け場所」には注意が必要
Starlink(スターリンク)の利用には専用アンテナを設置できるスペースがあることが前提。その設置場所は上空が開けていて、なおかつ専用アンテナの電源が確保できる場所であることが求められます。
以下の記事で、実際にスターリンクを導入した方の事例を紹介しています。
「ウォルテ(@YF_YANDF)」さんは、ADSLのサービス終了に伴いスターリンクを導入したそう。ツイッターの投稿には、スターリンクでインターネットサービスを利用するために必要な通信用アンテナの画像が添付されており、このアンテナが自動で衛星を探して向きを調整してくれるとのことです。
この投稿からも分かるように、やはり山奥など光回線が来ていないエリアでは導入しやすいサービスだと言えるでしょう。スターリンクは自然災害にも強く、非常事態でも安定的な通信インフラとして活躍が期待されます。
デメリット2.2023年現在、国内では光回線に勝るメリットは薄い
逆に言えば光回線が通っているエリアであれば、光回線に勝るメリットは薄いです。高速通信が可能とは言え、速度は光回線にはおよびません。加えて屋根や外壁へのアンテナの固定などやや大掛かりな工事が必要になることを踏まえると、導入メリットは小さめ。
猫たちによる通信妨害の詳細については、以下の記事でも取り上げています。
Starlink(スターリンク)の国内での提供はまだまだ始まったばかりであり、今後も利用料金の改定やハードの刷新などは続くと見られます。月額プランやハード価格がお手頃になるまで様子を見るのも一案です。
Starlink(スターリンク)の料金と日本での契約方法
Starlink(スターリンク)を日本で契約する方法と料金をご紹介します。
Starlink(スターリンク)の国内での利用料金と支払い方法
日本でのStarlinkの利用料金は、月額6,600円と初期費用(ハードウェアコスト)73,000円が必要です。初期費用には機器代が含まれており、利用開始前に支払う必要があります。なお、30日間の無料試用期間も設けられています。
日本でのStarlink(スターリンク)の契約手続き方法
日本でのStarlinkの契約手続きはオンラインで行うことが可能。公式ウェブサイトから申し込みを行い、必要な情報や支払い方法を入力します。申し込みが承認されると、機器が発送されます。到着後は、簡単な設置手順に従ってアンテナを設置し、スマートフォンアプリで接続設定を行うことで利用を開始できます。
Starlink(スターリンク)の設置と使い方
先述した通り、Starlink(スターリンク)の設置は簡単ですが、取り付ける場所には注意が必要です。以下で、設置のコツをご紹介します。
Starlink(スターリンク)のアンテナ設置ガイド
まずはルーターの設置を行います。アンテナの設置に適した場所の中から、アンテナをしっかり固定できる場所を確保しましょう。遮蔽物がなく、とくに北向きを中心として空が開けている場所を探します。
Starlink(スターリンク)は通信可能位置を判定するアプリも提供しているので、できれば事前にそちらをチェックしておくと安心です。
場所を決めたらアンテナとルーターの接続方法、そして、アンテナとルーターを繋ぐケーブルの配線も検討します。純正のケーブルの長さは20メートル余りですが、長さに不安がある場合はキット購入時にオプションでより長いケーブルも買っておきましょう。
Starlink(スターリンク)の接続設定と操作方法
アンテナの設置が完了したら、アプリから設定を行いましょう。
スターリンクを利用する際の注意点
Starlink(スターリンク)の契約・利用時には以下の点に注意しましょう。
・他のインターネットサービスと料金を比較する
・最適な通信環境を得るための条件を把握しておく
注意点1. 他のインターネットサービスとの料金比較
Starlinkを利用する際の注意点として、他のインターネットサービスとの料金比較を行うことが重要です。
サービス | 月額料金 | 工事費用(初期費用) | 事務手数料 |
スターリンク | 6,600円 | 7,3000円 | ― |
NURO光 (2ギガ/2年契約プラン) |
5,700円 | 44,000円 ※お申し込み特典で実質無料 |
3,300円 ※一部お申し込み特典で無料 |
auひかり (ずっとギガ得プラン/3年単位自動更新/戸建て) |
6,160円 | 41,250円 ※初期費用相当額割引で実質無料 |
3,300円 |
ドコモ光 (1ギガ タイプA2年定期契約/戸建て) |
5,720円 | 19,800円 ※ドコモ光1ギガをWEB新規申し込みで無料 |
3,300円 |
※税込み価格
Starlinkは他の通信サービスよりも高額な料金がかかり、価格と速度だけを考慮すれば多くの場合は光回線に軍配が上がります。2023年時点での国内利用かつ光回線が開通しているエリアでの利用に関しては、「災害時の通信インフラとしての安定性」をどのように評価するかで導入の可否が決まるでしょう。
注意点2. 最適な通信環境を得るための条件
Starlinkの最適な通信環境を得るためには、適切な取り付け場所や設置条件に注意する必要があります。アンテナの設置場所は、建物や樹木などに遮られず、開けた空間であることが条件となります。また、アンテナの周囲には遮蔽物を置かないようにするなど、通信の妨げとなる要素を避けることが重要です。そうした環境が確保できない場合は、導入は現実的ではないでしょう。
Starlink(スターリンク)はどのような用途に最適なインターネット環境?
Starlink(スターリンク)は先述した通り、従来の通信サービスが提供されていないエリアでも利用可能。さらに災害時のインフラとして活用したり、法人利用もできます。
山奥など従来の通信サービスがカバーできないエリアの通信インフラ
Starlinkは山奥など従来の通信サービスがカバーできないエリアの通信インフラとして最適です。山間部や辺境地域など、光回線や携帯電波が届きにくい場所でも高速で安定したインターネット接続が可能です。これにより、地域に制約されずに情報へのアクセスやビジネス活動が行えます。
自然災害時のサブの通信インフラ
Starlinkは自然災害時のサブの通信インフラとしても優れています。災害が発生した場合、地上の通信インフラが被害を受ける可能性がありますが、Starlinkの衛星通信は独立したシステムであるため、通信の継続性が確保されます。これにより被災地での情報伝達や救援活動に不可欠な役割を果たすことが可能です。
法人利用
Starlinkは法人利用にも適しています。たとえば近年、工場などでもIoT化が進み、多くの設備がインターネットに接続されるようになりました。機器が「24時間365日、安定的にインターネット接続されている状態」をキープしたい場合、衛星インターネットは力強い味方となるでしょう。メイン回線としてもサブ回線としても十分に導入を検討する価値があります。このほかにも、地方に拠点を持つ企業が高速な通信環境を確保する場合に活用できます。
まとめ
スターリンクは他の通信サービスよりも高額な料金がかかり、また、設置条件に注意する必要があることから、多くの人にとって、現時点での導入は現実的ではありません。しかし、従来の通信サービスがカバーできないエリアでの使用や、災害時の通信インフラとして、大きな役割を果たす有用なサービスと言えます。国内での提供は始まったばかりですので、今後の動向に注目です。