今話題沸騰中のAIチャットですが、代表的なものにOpenAIの「ChatGPT」とMicrosoftの「Bing」があります。いずれもAIが生身の人間のように質問に答えてくれるのですが、実はこの2つのAIチャットは似ているようでかなり違う部分があります。そこで今回は、筆者が実際に両方のAIチャットに同じ質問をして、両者の回答がどのように違うのか? 結局どちらが優秀なのか解説しましょう。
OpenAIの「ChatGPT」と「Microsoft Bing」とは何者か?
そもそも「AI(Artificial Intelligence)」は“人工知能”という意味です。膨大な情報を深層学習(ディープラーニング)させ、まるで生身の人間のように受け答えをしたり、ときには人間以上の情報処理能力を発揮します。
そのようなAIを利用して、さまざまな知的会話が楽しめるのがAIチャットですが、その代表格がOpenAIの「ChatGPT(チャットジーピーティー)」とMicrosoftの「Bing(ビング)」です。
まず、ChatGPTは、2022年11月に「OpenAI」という非営利団体がリリースしたAIチャットサービスです。ChatGPTは、人工知能によって学習させられた大規模なテキストデータを分析し、まるで、生身の人間が答えているかのような自然な文章を生成できます。
2023年2月26日現在、ChatGPTにスマホアプリはなくWebサイトでしか利用できませんが、会員登録さえすれば、誰でもすぐに無料で会話を楽しめます。
ただし、文字による受け答えのみで、音声ではやり取りできません。また、2021年までのデータでしか学習していないため、最新情報を尋ねても正しい答えは得られません。
●OpenAI「ChatGPT」は→こちら
これに対しMicrosoft Bingは、2023年2月に発表されたばかりのWeb検索エンジンです。WebブラウザMicrosoft Edgeに統合されているほか、現在はスマホ用アプリも提供されています。
Microsoft Bingも、やはりOpenAIの技術がベースになっていますが、iPhoneの「Siri」のように音声でのやり取りも可能となっています。
また、Bingは学習させたデータベースだけでなく、独自にネット検索してくれるので、最新情報にもしっかり答えてくれるのが特徴です。
●Microsoft Bing→こちら
●Microsoft Bing 検索(Android)→こちら
●Microsoft Bing Search(iPhone)→こちら
ChatGPTとMicrosoft Bingに同じ質問をするとどうなるのか?
代表的なAIチャット「ChatGPT」と「Microsoft Bing」は、どちらもOpenAIの技術を利用しています。となると興味が湧くのが同じ質問をするとどうなるか? ということでしょう。
それではさっそく、両方のAIチャットに「月3GB以下で最も安い格安SIMプランを教えてください」と質問してみます。
まず、ChatGPTは、UQモバイル「かけ放題3GB」が月額1,980円、IIJmio「データSプラン」が月額1,380円、LINEモバイルの「音声SIM3GBプラン」が月額1,980円と回答しました。
このなかで、目につくのがLINEモバイルでしょう。すでにLINEモバイルはソフトバンクに吸収され新規申し込みは終了。現在はソフトバンクの格安プランの「LINEMO」として提供されているからです。
よく確認してみると、ChatGPTの回答の冒頭に「2021年9月現在の情報です」と書かれていました。
ChatGPTは2021年までのデータを学習したAIチャットなので、それ以降の最新情報についてはまったく情報がないのですから、これは仕方ありませんね。
続いて、Microsoft Bingの回答を見てみましょう。こちらはHISモバイルが月額770円、NUROモバイルが月額792円、Povo2.0とLINEMOが月額990円、楽天モバイルとイオンモバイルが月額1,078円と紹介してくれました。
ChatGPTに比べるとかなり実用的で正確な内容となっています。これはMicrosoft Bingが過去のデータベースだけでなく、自分でネット検索してデータを集めているからです。
実は編集部調べでは、月3GBは日本通信の「合理的シンプル290プラン」が月額730円でさらに安いのですが、それに次ぐHISモバイルやNUROモバイルを提示してきたのは、まあ頑張ったほうでしょう。
このような結果から、最新情報を聞くならMicrosoft Bingを使ったほうが良いことがお分かりいただけたと思います。
ChatGPTには何を聞くのがいいのか?
ChatGPTに最新の格安SIM情報について聞いてみましたが、2021年以前の情報しか教えてくれませんでした。
また、おすすめ居酒屋の情報なども同様の理由で実用的な情報は得られません。それどころか、実在しないお店まで含まれていたのでまったく役に立たないのです。
また、ChatGPTは未来に関する予測が苦手です。たとえば、「2023年中に1ドル110円になるか?」と聞くと、「予測できない」という答えが返ってきました。
これに対し、Microsoft Bingに同じ質問をすると、「1ドル110円になるかどうかは、様々な要因で変わる」と前置きしながらも、「市場関係者の予測では緩やかなドル安・円高が進む可能性が高いと言われています」と教えてくれました。
それでは、ChatGPTがまったく使い物にならないかと言えば、決してそのようなことはありません。
たとえば、「25世紀を舞台にした宇宙忍者映画のストーリーを教えて」と聞いたところ、いかにもそれらしい映画のプロットを創作して提示してくれました。
これに対し、Microsoft Bingはストーリーを創作するのではなく、すでにある「宇宙忍者映画」についての情報を提示してきました。思わず「そうじゃない!」と思いましたが、筆者の質問の仕方が悪かったのかもしれません。
このように、ChatGPTは「テーマ」を与えてレポートやストーリーを創作させることに関しては、なかなか威力を発揮します。日本語もかなり自然なので、会社の企画書やレポートなどの作成では、きっとChatGPTが活躍することでしょう。
ここまでの説明で、何となく最新情報の検索はMicrosoft Bingが得意で、レポートやストーリーの創作などはChatGPTのほうが優れているように感じたことでしょう。
ところが、もう少しいろいろ試してみると、筆者は「やはりMicrosoft Bingのほうが優れているのでは?」と思うようになりました。
たとえば、「25世紀を舞台にした宇宙忍者映画」の件も筆者の聞き方が悪かったと思い、質問を「~のストーリーを考えてください」と変えて聞いたところ、きちんとストーリーを創作してくれました。
さらに、Microsoft Bingでは、現在の話題について追加質問ができるのが便利です。たとえば、登場人物について聞くと人物設定を教えてくれますし、このあとの展開や宇宙帝国の設定などを聞けば、それにしっかり答えてくれるのです。
このようにMicrosoft Bingは、まさに対話形式でどんどん話を掘り下げることができる点が、ChatGPTより優れている部分だと感じました。
また、Microsoft Bingはスマホアプリによる音声チャットが使えるのが実用的です。
たとえば、ChatGPTで「早稲田のおすすめ居酒屋」を聞いたときは、情報が古くて使い物になりませんでしたが、Microsoft Bingアプリなら、食べログなどの情報から実際に営業しているお店を教えてくれますし、マップでお店の場所も表示してくれます。
しかも、Microsoft Bingでは、必ず情報源のWebサイトのリンクが提示されますし、電話番号や営業時間、お店までの経路なども表示してくれるので、仕事帰りにこれから飲みに行くような状況であれば、非常に役に立つでしょう。
さらに、会話を進めるとお店の予約方法まで教えてくれるのですから、まさに“コンシェルジュ”のような使い方ができるのには感心しました。
まとめ
いかがでしょうか? 筆者は今回、ChatGPTとMicrosoft Bingの両方で同じ質問をし、その回答を比較してどちらが優秀なのか調べてみました。
ChatGPTは2021年までのデータしか学習していないので、最新情報には弱いものの、テーマを与えてレポートやストーリーを考えるのは得意だと思っていました。
しかし、よく考えてみればMicrosoft Bingも同じOpenAIの技術が導入されているのですから、人間的な自然な文章の生成や創作能力などに、あまり差はないのです。
しかも、Microsoft Bingのほうはひとつの話題について、何度も質問を続けることで、より議論を深められるのが素晴らしいのです。
そのうえで、Microsoft Bingならデータベースにない最新情報も情報源のソース付きで調べて教えてくれるのですから、実用性は圧倒的にMicrosoft Bingのほうが高いと言えるでしょう。
また、Microsoft Bingの真価が発揮されるのは、パソコンよりスマホアプリのほうだと感じました。たとえば、土地勘のない出張先で飲食店を探したいときなどは、まるでMicrosoft Bingが優秀なコンシェルジュのように頼りになるでしょう。
アナタもこの2つのAIチャットを利用して、どちらが便利なのかぜひ自分で試してみてください。