23年9月22日に発売されたiPhone 15シリーズですが、iPhone 15/15 Plusは「Wi-Fi 6」なのに、iPhone 15 Pro/15 Pro Maxのほうは「Wi-Fi 6E」に対応することが話題となっています。でも、“E”が付いているだけで、何がどのように違うのでしょうか? そこで今回は、iPhone 15 Proシリーズだけが対応する「Wi-Fi 6E」が「Wi-Fi 6」とどう違うのか、じっくり解説しましょう。
iPhone 15シリーズは機種によってWi-Fiの仕様が違う!
いよいよ23年9月22日に発売されることになった新型iPhone 15シリーズ。ラインナップはiPhone 15、iPhone 15 Plus、iPhone 15 Pro、iPhone 15 Pro Maxの全4モデルとなっています。
今回は、いずれのモデルもLightning端子が廃止され、USB-Cを採用されることが大きな話題となっていますが、ほかにもノーマルの「15/15 Plus」とProシリーズの「15 Pro/15 Pro Max」とでは、仕様が大きく異なっているのをご存じでしょうか?
上位機種のProシリーズはボディにチタンを採用することで軽量化を実現、チップも最新のA17 Proチップを採用、さらにアクションボタンが装備されるなど、ノーマルの15/15 Plusにはない特徴がたくさんあるのです。
●Apple「iPhone 15/15 Plus」(公式)は→こちら
●Apple「iPhone 15 Pro/15 Pro MAX」(公式)は→こちら
ノーマルとProシリーズの違いはほかにもあります。たとえば、USBの仕様もノーマルでは「USB 2」となっており、転送速度が480Mbpsしかないのに対し、Proシリーズでは「USB 3」に対応しており、転送速度はケタ違いに速い10Gbpsなのです。
このことから「えっ? USBって全部同じじゃないの?」とネットでは大きな話題となりました。詳しくはこちらの記事をご確認ください。
そして、もうひとつネットで話題となっているのがWi-Fiの規格です。iPhoneではデータ通信のほかにWi-Fiでネットに接続できますが、ノーマルの15/15 Plusが「Wi-Fi 6」なのに対し、Proシリーズの15 Pro/15 Pro Maxのほうは「Wi-Fi 6E」に対応しているのです。
でも、「Wi-Fi 6」と「Wi-Fi 6E」って“E”が付くか付かないかだけでそんなに大きく違うものなのでしょうか? そこで今回は、Wi-Fi 6とWi-Fi 6Eの違いをじっくり解説しましょう。
「Wi-Fi 6E」はWi-Fi 6より実行速度が速い拡張版!
そもそも無線LAN(Wi-Fi)の規格は「米国電気電子学会(IEEE・アイ・トリプル・イー)」で定められたもので、規格名は「IEEE802.11〜」という表記になります。
しかし、これでは分かりにくいので、業界団体の「Wi-Fi Alliance」が接続互換性を認定した製品には「Wi-Fi」ロゴの表示が認可されています。
●Wi-Fi Alliance(公式)は→こちら(英語)
たとえば、IEEE 802.11n規格は「Wi-Fi 4」、IEEE 802.11ac規格は「Wi-Fi 5」、IEEE 802.11ax規格はWi-Fi 6という愛称で表記されています。
もし、Wi-Fiの規格についてもっと詳しく知りたい場合は、こちらの記事で確認してください。
2019年に登場した「IEEE 802.11ax(Wi-Fi 6)」は、2.4GHz帯と5GHz帯の2つの帯域を利用しており、最大速度は9.6Gbpsと非常に高速です。
このWi-Fi 6は、すでにiPhone 11/12/13/14や、5G対応のAndroidスマホでも広く使われていますので聞いたことがある人も多いでしょう。
このWi-Fi 6の拡張版が「Wi-Fi 6E」です。6Eの“E”は「Extended(拡張)」という意味で、無線LAN規格としてはどちらも「IEEE802.11ax」であり、理論値は最大9.6Gbpsとなります。
Wi-Fi 6との違いは、2.4GHz帯と5GHz帯の2つの帯域に加え、新たに6GHz帯を追加していることです。
Wi-Fi 6Eでは6GHz帯において最大14本の80MHz幅チャネルと超ワイドな160MHzチャネル7本を利用できるため、実効速度の向上と安定性が飛躍的に向上すると言われています。
■Wi-Fiの規格
【Wi-Fi 4】IEEE802.11n(2.4GHz/5GHz)最大600Mbps
【Wi-Fi 5】IEEE802.11ac(5GHz)最大6.9Gbps
【Wi-Fi 6】IEEE802.11ax(2.4GHz/5GHz)最大9.6Gbps
【Wi-Fi 6E】IEEE802.11ax(2.4GHz/5GHz/6GHz)最大9.6Gbps
Wi-Fi 6とWi-Fi 6Eはどちらも理論上の最大通信速度は9.6Gbpsですが、Wi-Fi 6Eにはいったいどんなメリットがあるのでしょうか?
そもそも、Wi-Fiデバイスは年々増加しており、チャンネルが重複してしまうことが増えてきました。電波が混線すれば、Wi-Fiの実行速度は遅くなってしまうのです。
たとえば、古くから使われている2.4GHz帯は、Bluetoothや電子レンジなどの家電製品にも使われていますので、Wi-Fiが途切れることがよくあります。
また、2.4Ghz帯は14チャンネルありますが、重複しないのは実質3〜4しかないので、マンションでは隣の部屋とチャンネルが混線して速度低下を招く場合もあります。
一方、5GHz帯では独立したチャンネルが20ほどありますので、マンションでの混線は避けやすくなっています。
ところが、5GHz帯は気象レーダーや船舶・航空レーダーでも使われているため、これらの電波をWi-Fiルーターが検出すると「DFS」という機能が働いて別のチャンネルに切り替わるため、1分ほど途切れてしまうことがあります。
そのような状況のなか、Wi-Fi 6Eは2.4GHz帯と5GHz帯のほかに「6GHz帯」にも対応しているため、利用できる周波数帯域が広くなり、チャンネル数も多いのが特徴です。
チャンネル数が増えれば、当然、混雑を避けられますし、電波の干渉も起きにくく安定するため、Wi-Fiの実行速度は理論値に近いものになると言われています。
このように、Wi-Fi 6とWi-Fi 6Eは、どちらも同じ「IEEE802.11ax」規格であり理論値は最大9.6Gbpsですが、Wi-Fi 6Eでは6GHz帯を使えるため混線などが起きにくく安定しており、実行速度はWi-Fi 6よりも速くなることがお分かりいただけたでしょう。
なお、現在Wi-Fi 6対応のルーターは数千円と格安で購入できますが、6GHz帯が使えるWi-Fi 6Eには対応していません。
もし、iPhone 15 Pro/15 Pro Maxを購入して、Wi-Fi 6Eの速度を体感したいなら、Wi-Fiルーターも6GHzを利用可能なWi-Fi 6E対応機種を購入しないと、本来の速度は出せないのでご注意ください。
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まとめ
いかがでしょうか? Wi-Fi 6Eでは新たに6GHz帯が利用できるため、電波が混雑せずWi-Fi 6よりも実行速度が速くなると言われています。
Wi-Fi 6Eでは大容量のデータ通信もわずかな遅延で通信できるため、将来普及する8K動画やVR映像などでも、ストレスなく楽しむことができるのです。
なお、すでにWi-Fiは次世代の「Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)」規格の策定が進んでいます。
こちらも、6GHz帯が利用可能で最大46Gbpsという超高速通信の実現を目指しており、24年12月ごろに策定される予定ですので、次世代iPhoneで採用されるかどうかは分かりません。
※サムネイル画像(Image:IIIARKED / Shutterstock.com)