米Appleは年9月19日より、同社が提供中のクラウドストレージサービス「iCloud+」において、新たに大容量プランの提供を開始した。同年9月13日(日本時間)のイベントにおいて、「iPhone 15」シリーズでは、高性能カメラで高解像度の写真や動画を撮影できる、という紹介に続けて発表された。今回はこの新プランや、アップルのサブスク戦略についてお伝えしたい。
iCloud+の新プランの容量と利用料は?
「iCloud+」は、5GBの無料ストレージが使える「iCloud」のアップグレード版にあたるサブスクリプションサービスで、これまでは50GB(月額130円)、200GB(月額400円)、2TB(月額1,300円)の3プランだった。端末内の自動バックアップや、家族とファイルを共有できるなどの機能が利用できる。今回は新たに、6TBと12TBのプランが追加され、月額料金は6TBが3,900円、12TBが7,900円と決して安い金額ではない。
もともと、iPhoneはmicroSDカードなどの外部メディアを挿入することができず、カメラの機能が高性能になった現在は、写真や動画を保管するためにはクラウドストレージが必須になりつつある。また逆に、それを利用して、iPhoneなど端末本体のストレージ容量を少ないものにし、値上がりする本体の購入価格を抑えるユーザーが増えており、新プランを歓迎する声は多い。
一方「2TBで十分」「200GBと2TBの間に1TBのプランを作ってほしい」という意見もあり、6TB、12TBという大容量で高価格の新プランを開始したのには何か思惑があるのだろうか。
なぜ今、大容量プランなのか? Appleの戦略とは
近年、スマホの平均使用期間は4.6年(内閣府経済社会総合研究所景気統計部「消費動向調査 令和4年3月実地調査結果」より)と伸びており、以前に比べて買い替えのペースが遅くなっている。つまり、スマホの販売台数が頭打ちになりつつあるのだ。これは世界的にも同じ傾向で、AppleもiPhoneをいかに多く売るかよりも、サブスクなどのサービスを伸ばす転換期に差し掛かっている。今回のiCloudの新プランもそのひとつだと考えられる。
Appleは今回のイベントで、「iPhone 15 Pro」が空間ビデオ撮影への対応を明らかにした。空間ビデオとは、2024年はじめごろにアップルが発売を予定している新型デバイス「Apple Vision Pro」で再生できる3D映像のこと。「信じられないほどの奥行き」臨場感あふれるパノラマが特長だが、その半面、データの大きさも信じられないようなサイズになるだろう。
iCloudの新プランは、このような高画質でサイズの大きなファイル保存に耐えうるための、先行的な戦略だとも考えられる。今後、高画質の動画を撮影したい人や、Apple Vision Proを購入したい人は、検討してみてはいかがだろうか。