意外と知らない「Mozilla Firefox」が最近ブラウザとして人気が低迷している理由

いわゆる「火狐」の愛称で親しまれているブラウザ「Mozilla Firefox」を、長らく愛用していた方はこの記事をお読みの方の中にも少なくないのでは? しかし、改めて考えてみると『最近はChromeやSafariしか使用していない』、『Mozilla Firefoxの最新版をインストールしたのが何年前だか、もう思い出せない』という方もいるのでは。

Mozilla Firefoxは実は15年ほどかけて、全盛期の6分の1以下までシェアが低下したものと見られます。今回は「火狐」の名前で愛された同ブラウザの現在のシェア状況や、人気低迷の背景について詳しく解説していきます。

Mozilla Firefoxのシェア(国内)

(「StatCounter」調べ)

ブラウザやOSの統計を行う「StatCounter」の調査では、2024年9月時点でFirefoxのシェアは3.77%(日本国内)。Chrome(56.73%)やSafari(23.97%)はもちろん、Edge(12.24%)にも大きく離されてしまっているのが現状です。

(「StatCounter」調べ)

2009年2月時点では国内で22.36%のシェアがあったFirefox。15年かけて6分の1程度までシェアが減少した形となります。

「モバイル」のみに集計対象を絞るとシェアは約1%

(「StatCounter」調べ)

なお先のデータはPCやモバイルをすべて含んだブラウザシェアのデータですが、集計対象をモバイルのみに絞るとFirefoxのシェアは1.18%となります(※2024年9月時点)。

モバイルのブラウザシェアは、主にiPhoneで使用されるSafariが47.79%。Androidで使用されるChromeが45.5%を占めており、それら以外のブラウザはほぼシェア自体が極めて小さいのが現状です。つまりMozilla FirefoxはPC・スマホを問わないブラウザシェアでも、モバイルに絞ったブラウザシェアでもChromeやSafariといったブラウザに大きくシェアで先行されている形です。

とはいえ「気に入ったブラウザ」は長く使い続けるという方も多いはず。Firefoxはアドオンの開発なども活発で、開発者にも愛されたブラウザです。そんなFirefoxがここまで急速に衰退したのは、なぜなのでしょうか?

「Mozilla Firefox」がそもそも人気を呼んだ背景

(画像は「Firefox」公式サイトより引用)

「Mozilla Firefox」の歴史は1998年、ウェブブラウザ「Netscape」のソースコードがオープンソースとして公開されたことから始まります。公開されたソースコードを元に、ウェブブラウザやメーラーなどのソフトウェアを開発する非営利法人として設立されたのが「Mozilla Foundation」です。その後はさまざまな変遷がありつつ、2002年に「Firefox」がリリースされます。

リリースから1年弱でダウンロード数は1億回を突破。高速なページ読み込みや、拡張機能(アドオン)によるカスタマイズ性の高さなどが評価され、多くのユーザーから評価されました。

アドオンの後方互換の切り捨てで一部ユーザーから反発を招く

Firefoxはユーザーから大きな支持を集めましたが、00年代後半ごろから少しずつ人気に陰りが見え始めます。その要因の1つが「アドオン」。アドオンはFirefoxの魅力のひとつのはずでしたが、バージョンアップのたびにうまく動作しなくなるという問題が発生していました。

2017年末に行われた大規模なアップデートも、Firefoxの開発者コミュニティからの支持を低下させる原因になりました。これはアドオンの仕様を一新し、WebExtensionsに完全移行した上で、WebExtensionsベースではない既存アドオンの利用を不可とするものでした。

この移行はFirefoxが長年培ってきた豊富なアドオンの後方互換性を、極めて大きく切り捨てるものでした。いわば「レガシー」を手放す行為が、既存ユーザーの反発を招いた側面があります。

Firefox OSの失敗

Mozillaは2013年に独自のOSである「Firefox OS」をリリースしましたが、その失敗も、Firefoxの人気低下に影響を与えたと考えられます。Firefox OSはスマホ、タブレットへの搭載を念頭において開発されたOS。その最大の特徴は、Mozilla Firefoxと同じレンダリングエンジン「Gecko」の搭載です。

つまりFirefox OSはいわば「Linuxの上でFirefoxと同じレンダリングエンジンが動作するもの」です。分かりやすく言えば、今日のChromebookに近しい仕様のスマホです。ちなみに、Firefox OS向けにアプリを作るということは「Webアプリ」を作るのと限りなく近いです。

日本では2014年にKDDIから発売されたスマホ「Fx0」に搭載された「Firefox OS」ですが、上記のようなコンセプトの端末及びOSは「時代が早すぎた感」が否めません。

内蔵ウェブブラウザで実質的にすべてが完結するスマートフォンは、裏を返せばモバイル通信にすべてを依存しており、電波が不安定な環境ではできることが極めて限られます。スマホそのものの性能が今日の端末ほどには充実していない時代であり、なおかつ5G普及の遥か前の時代です。

筆者個人としてはFirefox OSの着想は時代を先取りしており、魅力的だと感じますが「2014年当時のスマホ」として魅力的だったかは別問題。Firefox OSの普及の失敗は、そのままFirefoxの「モバイル分野でのシェア獲得の失敗」に繋がっていきます。

モバイル分野でのブラウザシェアの獲得に失敗した「Mozilla Firefox」

Firefox OSでのモバイルOSのシェア獲得に失敗した「Mozilla Firefox」は、そのままずるずるとモバイルにおいて存在感を失っていきます。

PCからスマートフォンへとインターネット利用の主戦場が移る中、Firefoxは「Firefox OSの失敗」から立ち直れず、その変化に十分に対応できなかったと言えるでしょう。結果、iPhoneユーザーならSafari、AndroidユーザーならChromeを利用するといった形でブラウザシェアが変化していきます。

さらにたとえばChromeユーザーは、モバイル版とデスクトップ版で履歴やブックマークを簡単に同期することも可能。そのため、PC版においてもFirefoxを使用するメリットが相対的に低下してしまいます。スマホ性能が向上し、モバイル回線の使い放題プランなども充実した今日であれば、ブラウザ特化型OSとしての「Firefox OS」はまた別の受け入れられ方をしたかもしれません。

ChromebookがWindowsともMacとも異なるPCとして一つの市場を築いた一方で、近しい着想を持っていたFirefox OSがうまくいかず、そのままブラウザシェアの回復に至れずにいるのが現状だと言えるでしょう。

※サムネイル画像(Image:Mojahid Mottakin / Shutterstock.com)

オトナライフ編集部
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