実は「スマホ元年」以前のWebコンテンツは消えている? Flashや個人HPを辿る難しさ

日本にiPhoneが上陸した00年代後半は、いわば「スマホ元年」といえるでしょう。そして早くからスマホ向けのSNSとして定着したTwitter(現:X)やFacebookは、2024年現在でも健在で、10年以上過去の投稿などを辿るのも比較的簡単です。

一方で90年代~00年代頃のWebサイトやコンテンツを、2024年現在から辿り直すのは実は想像以上に難しいことです。この記事をお読みの方の中にも、昔お気に入りだったウェブサイトをまた見たいと思ったのにサイトが消えてしまっており、Wayback Machineにも目当てのページが残っていなかった経験をしたことがある方もいるのでは?

その理由には90年代~00年代に一般的に使われていた各種ホスティングサービスの終了や、大きな影響力を持っていたFlashコンテンツの消失、またガラケーサイトの終了などが挙げられます。

かつて流行したFlashアニメや個人HPも閉鎖され、その多くを見ることができなくなっています。今回はそんな「古いWebコンテンツを今から辿ることの難しさ」について解説します。

実は「スマホ元年」以前のWebコンテンツは続々消えている?

・ニフティサーブやジオシティーズのサービス終了
・「リンク集」の消失
・Flash Playerの終了
・「ガラケーサイト」の閉鎖

といった理由により90年代~00年代のウェブサイトを辿る難しさが増しています。特にホスティングサービスとして大きなシェアを誇ったニフティサーブが2006年に終了したことで、2006年以前のWebサイトが次々閉鎖。同様にジオシティーズが2019年に終了したことで、同様に個人サイトなどが次々閉鎖したことの影響は大きいです。

ニフティサーブやジオシティーズのサービス終了

かつてのWebコンテンツが消失している理由のひとつが、90年代~00年代に支持を集めたホスティングサービスが次々サービス終了していること。たとえばニフティサーブは2006年にサービスを終了、ジオシティーズは2019年に終了しています。

2000年のジオシティーズの公式サイトスクショ(画像は「Wayback Machine」より引用)

ニフティサーブやジオシティーズは個人サイトのホスティングサービスとして、90年代~00年代に多くの人に選ばれていました。そして90年代~00年代頃には、趣味目的のサイトから学術・研究目的のサイトまで多数の個人サイトが作られていました。

たとえば趣味目的の場合、よく制作されていたのは、
・90年代~00年代に放送されたテレビ番組などの感想サイト
・90年代~00年代にウェブ上で公開されていた二次創作サイト
など。この多くはホームページ制作者がコンテンツを別サービスに移行していない限り、消滅済み。

たとえば当時のテレビ番組の反響や、数字に表れづらい「当時のコアな楽しみ方」などを2024年現在から検証することの難易度はすでに高いです。

また同様に「90年代~00年代の旧車の情報」「90年代~00年代に無くなってしまった店舗の情報」「90年代~00年代に無くなってしまったスポーツチームの情報」などを辿る難しさも増しています。

「リンク集」の消失

もっとも90年代~00年代のウェブサイトであろうと、Wayback Machineにアーカイブされているウェブサイトも少なくありません(※アーカイブされたページも全URLが閲覧可能とは限りません)。しかし、当時のウェブサイトの「URL」を特定する行為自体の難易度も高まっています。

90年代~00年代にかけてはGoogle、Yahoo!など各種検索エンジンの性能が必ずしも高く無く、有用なサイトをまとめた「リンク集」の価値が2024年現在とは比べものにならないほど大きいものでした。

しかしその「リンク集」自体もニフティサーブやジオシティーズといったホスティングサービスにホストされていることが多く、それらのサービス終了とともに消失しているケースが多数です。

Flash Playerの終了

(画像は「Amazon」公式サイトより引用)

Flash Playerが2020年にサービス終了し、Flashコンテンツがウェブ上から消失した影響も非常に大きいです。Flashアニメなど「Flash」を用いたコンテンツは、90年代~00年代に極めて人気が高かったためです。

作者自らがFlashアニメを動画変換し、動画共有サイトに投稿したり、FlashコンテンツをHTML5に変換して公開を継続する一部の例を除き、多くのコンテンツが失われました。

たとえば日本では2004年、モルドバ出身の音楽グループO-Zoneの『恋のマイアヒ』の歌詞が「日本語に聞こえる」とネット上で話題になり、次々Flashムービーが作られ、大きな話題に。社会現象ともなり、ムービーに登場する猫が「のまネコ」と名付けられ、「マイアヒ旋風」とも呼ばれました。一説には流行当時、この曲の空耳FLASHは10作品以上あったと言われています。

しかし2024年11月時点では、筆者が調べた限りでは当時制作された空耳FLASHが「本当に10作品以上あったのか」は「確かに多数のFLASHが公開されていたのは事実だが、厳密な公開本数やその再生回数はよく分からない」と思われます。

当時のFlash投稿サイトの多くが閉鎖済みであり、なおかつFlash Player自体もサービス終了しており、投稿者による動画変換か無断転載が行われていない限り、作品自体が消えているケースが多いためです。

Flashコンテンツが大量に消失してしまったことで、少なくとも『恋のマイアヒ』に関しては、何故流行したのかが2024年現在から見ると分かりづらい側面がありそうです。

「ガラケーサイト」の閉鎖

(画像は「photoAC」公式サイトより引用)

ガラケーサイトの終了の影響も、かつてのウェブコンテンツ消滅に大きく関与しているといえます。

ちなみに筆者もかつて好きだった掲示板型のガラケーサイトがあり、手を尽くして調べた結果、2012年までに閉鎖されていたことが判明。URLまでは特定できたものの、Wayback Machineでも各ページまでアクセスすることはできませんでした。ガラケーサイトはPCサイトに比べ、より一層「アーカイブされていない」ケースが多そうです。

スマホの登場で「ガラケーサイト」の需要が一気に減り、たとえばドコモのiモードは2019年に新規受付を終了しています。1990年代~2010年代前半のガラケー向けサイトの歴史はぶつ切りになっている状態で、どのようなサイトがあり、どのように盛り上がっていたのか知ることは意外と難しいのが現状となっています。

「スマホ黎明期のSNS」の閉鎖の影響も大きい

(画像は「ウェブ魚拓」より引用)

冒頭でFacebookやTwitter(現:X)は2024年現在でも健在としましたが、その裏には「閉鎖済みのスマホ黎明期のSNS」も存在しています。

たとえば、Googleがかつて運営していた「Google+」は人気SNSの1つでした。写真や動画などさまざまなコンテンツを投稿でき、更新性の高さやプラットフォームそのものの認知度の高さから、Google+への個人サイトの引っ越しも流行しました。

しかし、Google+は2019年にサービスを終了。結果、Google+でどの時期にどんなコンテンツが盛り上がっていたのか知ることは難しく、引っ越しした個人サイトも消失することに。
つまり、ホスティングサービス自体の終了にくわえ、「終了すると思っていないSNSに個人サイトが引っ越しをしてしまったこと」も、Webコンテンツ消失に拍車をかけているといえます。

余談ですが、アイドルグループ「AKB48」を中心とする48グループが2011年末~、数年間頻繁に更新していたSNSとしてもGoogle+は有名でした。「ぐぐたす選抜」の名称でGoogle+のCMソングを同グループが発表したこともあります。

しかし同グループが当時、Google+で行っていた発信を2024年現在から辿るには地道にWayback Machineを不完全ながらも辿るか、ファンによる無断転載を見るのが現実的な方法です。48グループのファンの方にとっては、同グループの絶頂期のSNSとその投稿内容が丸ごと1つ消えているのは大きな損失ではないでしょうか。

「Webコンテンツ」が消えるデメリットとは?

Webコンテンツの消滅は「懐かしい気分に浸りたかったのに残念」という感情的なメリット以上に、後々のインターネット文化に関する研究にも影響してくる可能性があります。

たとえば先に上げた『恋のマイアヒ』関連の空耳FLASHが当時、実際にはどの程度の本数作成されており、どの程度の再生回数があったことで国内でのヒットに繋がったのかを2024年現在から辿り直すことは意外と難しいです。

またGoogle+とAKB48の関係についても述べたように、SNSやホスティングサービスの終了が「そのアーティストやアイドルグループなどの活動記録の消失」に繋がる場合があります。たとえばAKB48の活動を網羅的に研究する機会があったとして、「ぐぐたす」での活動を辿る難易度は高いです。

・CD
・書籍

など物理媒体ではなく、デジタルでコンテンツを楽しむことが当たり前になった昨今ですが、裏を返すと「Google+」が丸ごと消失したように、そのサービスが終了するとアーカイブが残らないことも意味します。

Wayback Machineにページが残るケースもありますが、全ページが網羅的にバックアップされるとは限りません。デジタルコンテンツの「アーカイブの残し方」は今後も多くの事業者やコンテンツの作り手にとって課題となり得、その課題が解決されずにいた90年代~00年代のコンテンツは消失が大きく進んでいるのが現状でしょう。

※サムネイル画像(Image:Jarretera / Shutterstock.com)

オトナライフ編集部
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