Google Chromeが事業売却される? 代替となり得る(?)Webブラウザ3選

2024年11月20日、米司法省がGoogleに対してブラウザ「Chrome」を売却することを命じるよう連邦裁判所に要請したことが報じられ、大きな話題になりました。この要請は米連邦地裁が、Googleの検索サービスなどについて「反トラスト法(独占禁止法)違反」を認定したことに基づくものですが、Google側は「過激な介入である」として反発しています。

実際に事業売却されるかは不透明ですが「売却」の可能性は低くはないかもしれません。そこで仮にGoogleがChromeを手放した場合、代わりとなり得る(?)ブラウザをご紹介します。なお「?」付きであることには大きな理由がありますが、それらについても記事内で解説します。

Google Chromeが事業売却される?

冒頭でも触れた通り、現在GoogleはChromeの売却を求められています。これは米司法省が、Googleの広告が独占禁止法(反トラスト法)に違反していると訴えた訴訟の判決によるもの。たとえばAndroidスマホはGoogleがデフォルトの検索エンジンに指定され、なおかつブラウザとしてChromeが入っているため、ほかの検索エンジンなどが競争上不利な立場になっていることを指摘する内容でした。

(画像は「Google Chrome」公式サイトより引用)

そこで冒頭で述べた通り、米司法省はGoogleに「Chrome売却を命じること」を連邦裁判所に要請しています。もっとも「自分はGoogle Chromeではないブラウザを使用しているので、Chromeが売却されようが関係ない」と思う方も多いかもしれません。しかし「他のブラウザ」にも、Chrome売却の影響は及ぶ可能性があります。

実はChromeのコードベースはオープンソース

実は、Google Chromeの基盤となっているのは「Chromium」というオープンソースのプロジェクト。Chromeはオープンソースのブラウザに対して、Google社が機能追加などを行って製品化し、ユーザーに提供しているブラウザです。ここで論点となるのが、米司法省が求める事業売却が「何を指しているか」です。

オープンソースのブラウザをカスタムした「Google Chrome」単体を手放すことを求めているのか。それとも製品を手放すだけでなく、オープンソースとしてのChromiumへの「Googleの関与」を締め出すことを意味しているのか、事業売却の基準が曖昧です。

まずブラウザ自体は元々オープンソースであるため、仮にChromeを事業売却したとしても「全く新しいブラウザ」をChromiumベースでGoogleが作ることは難しいことではありません。製品単体で売却を求めることの意味がどの程度あるのか、まず微妙です。

ではChromiumのオープンソースプロジェクトにGoogleが関与すること自体を締め出した場合、どうなるでしょうか。

実はGoogleはオープンソースとしてのChromiumにも積極的な関与を行っています。オープンソースとしてのChromiumをベースとして開発された他のブラウザも、Chromiumの今後が怪しくなると、存続が危ぶまれる状態になります。

つまり次の項目で紹介する「Chromeの代替になり得る可能性があるブラウザ」が、オープンソースプロジェクトの衰退によってすべて「継続的な利用が危ぶまれる」可能性があります。

Google Chromeの代替となり得る(?)Webブラウザ3選

仮に「製品としてのGoogle Chrome」の売却だけが決定し、オープンソースとしてのChromiumは継続されたとしましょう。この場合、個人ユーザーの視点から見るとGoogle Chromeの代わりとして使いやすいのは「Chromiumベースのブラウザ」です。主要なChromiumベースのブラウザを3つご紹介します。

なおこれらのブラウザはいずれもChromiumベースのため、オープンソースとしてのChromium自体にも米司法省や裁判所のメスが入った場合、継続的な運営に支障が出る可能性があります。

Microsoft Edge

(画像は「Microsoft Edge」公式サイトより引用)

Microsoft Edgeは、Microsoftが提供するChromiumベースのブラウザです。MicrosoftとGoogleは競合関係というイメージが強いですが、実はEdgeはChromeとの互換性が高いブラウザです。開発当初は独自エンジンだったものの、2020年のバージョン79.0.309.65以降からChromiumベースの同名ブラウザに置き換えられました。

Chromeの拡張機能も利用できるため、Chromeユーザーにとって乗り換えやすいブラウザの一つです。

Edge独自の強みとしては、Microsoftが近年注力するAI機能「Copilot」との相性の良さです。Edgeで閲覧しているページをCopilotを使い、要約することなども可能です。

Brave

(画像は「Brave」公式サイトより引用)

Braveは広告やトラッカーをデフォルトでブロックしてくれるブラウザです。また、暗号資産との連携機能を備えており、ブラウザの利用によってトークンを獲得できる独自の報酬システムも特徴です。Braveは2018年12月にChromiumベースのブラウザとしてバージョンアップされました。

Vivaldi

(画像は「Vivaldi」公式サイトより引用)

Vivaldiは、高度なカスタマイズ性を特徴とするブラウザです。開発会社はOperaの創設者のひとりで、対象ユーザーとなるのは、かつてのOperaユーザー。そのため、かつてのOperanoようにユーザーインターフェースを細かく調整でき、キーボードショートカットやジェスチャー操作なども自由にカスタマイズできます。Vivaldiは当初からChromiumベースで開発されています。

Googleからブラウザを切り離すのは現実的に困難?

3つのブラウザをご紹介しましたが、これらはいずれも「Chromiumベース」のブラウザです。そしてオープンソースとしてのChromiumには、Googleが開発リソースの提供や研究など様々な点で貢献してきたことも事実です。つまり現実には、Googleからブラウザを「あらゆる意味で完全に切り離すこと」は簡単ではありません。

GoogleとChromeを切り離し、なおかつオープンソースとしてのChromiumへの関与も切り離した場合「他社の極めて多数のブラウザ」にも大打撃を与える可能性が大きいでしょう。

今回の売却案騒動は独占禁止法によるものですが、その独占禁止法によって守られるべき企業すらダメージを負うことになりかねず、そもそもChromeの売却先としてどのような企業が選ばれるのかも不透明です。

米司法省が主導する「Chromeの売却騒動」は、本当に売却という形で結末を迎えるのか今後の展開が注目されます。

※サムネイル画像は(Image:​Shutterstock.com)※画像は一部編集部で加工しています

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