パソコンにちょっと詳しい人ならストレージ(記録装置)にHDD(ハード・ディスク・ドライブ)やSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)が使われていることはご存じだろう。でも、たまに「SSHD」というものが搭載されているパソコンもある。これっていったい何なの? HDDやSSDとはどこが違うの? と思っている人も多いだろう。そこで今回は、SSHDとはいったい何者なのか基礎から解説したいと思う。
安価で大容量なHDDだが速度は遅くデメリットも多い
謎の「SSHD」の話をする前に、まずはパソコンのストレージ(記録装置)の基本から解説しよう。まずはHDD(ハード・ディスク・ドライブ)から。
長年パソコンのストレージ(記録装置)として使われてきたHDDは、回転するディスクにヘッドを近づけデータを記録する。内部でディスクを高速回転させるため、本体は重くどうしても駆動音と消費電力が大きくなる。また、物理的な衝撃に弱く、うっかり落とすと簡単に壊れてしまうのだ。だが、昔からある成熟した技術なので、安価で大容量、信頼性も高いストレージだと言える。
したがって、HDDは比較的安いパソコンによく使用されており大容量で安価だが、転送速度が遅いためOSの起動速度も遅くなってしまうデメリットもある。2020年9月現在、ノートパソコン内蔵用2.5インチの2TBなら7,000円~1万円程度で購入可能だ。
■HDDの特徴
【メリット】
・大容量でも安価
【デメリット】
・転送速度は遅い
・騒音や消費電力が大きい
・衝撃に弱く落とすと簡単に壊れる
・本体が重い
SSDは高価だが転送速度がとにかく速いのが魅力!
SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)とは、簡単に言えばUSBメモリやSDカードと同じようにフラッシュメモリを使用したストレージのこと。HDDのように内部に駆動するパーツはないので、本体が軽く発熱や電力消費も少ない。また、衝撃にも強くノートパソコンなどでも安心して使用できる。そして、SSD最大の特徴が転送速度が速いこと。WindowsなどのOSを起動させる(C)ドライブとして使用すると、HDDより起動時間が格段に速くなる。ただし、価格がHDDよりかなり高くなるため、性能重視の高価なパソコンに使用されることが多い。2020年9月現在、ノートパソコン内蔵用2.5インチの2TBなら2万5,000円~3万5,000円程度はする。
■SSDの特徴
【メリット】
・転送速度が速い
・騒音や消費電力が小さい
・衝撃に強い
・本体が軽い
【デメリット】
・HDDに比べるとかなり高価
ここまでの説明でHDDとSSDの違いは把握して頂いたと思うが、この両者は容量・速度・価格のバランスが真逆なのが悩ましい。そこで、両者のいいとこ取りをしたのが「SSHD(ソリッド・ステート・ハイブリッド・ディスク)」である。
SSHDはざっくり言うと“HDDにフラッシュメモリをキャッシュメモリとして追加したもの”だと考えていい。価格的にはSSDより安いが、大容量でSSDのように転送速度も速いのである。まさに理想的なストレージだ。ただし、基本的にはHDDなので騒音や発熱は大きく、衝撃にも弱いので取り扱いには注意が必要となる。
■SSHDの特徴
【メリット】
・転送速度が速い
・SSDより安価で大容量
【デメリット】
・騒音や消費電力はHDDと変わらない
・衝撃に弱い
・本体が重い
SSDが安くなって今ではSSHDのメリットは少ない?
HDDとSSDのいいとこ取りのSSHDさえあればすべて解決! と言いたいところだが、現状は必ずしもそうではない。実は、数年前にSSHDが登場したときはSSDが非常に高価だったので、SSHDの存在意義は大きかった。ところが、その後SSDの大容量化が進み価格も急激に安くなってきたため、現在では、SSHDとSSDの価格差がかなり縮まってきているのだ。
したがって、ストレージを複数搭載できるデスクトップパソコンでは、速度重視のSSD(500GB~1TB程度)をOSの起動用に使い、データ保存用には安価なHDD(3~4TB)を使い分けるのが主流となっている。ストレージをひとつしか搭載できないノートパソコンでも、やはり内蔵ストレージはSSDでデータ保存はUSB接続の外付けHDDを使う人が多いのだ。というわけで、残念ながら現在ではSSHDの立ち位置は非常に微妙なものになっているのである。
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