“テレワーク”という言葉が世の中に定着してから1年が経った。最初は何かと不便だったテレワークも次第に環境が整い、私たち自身もオンラインの概念を理解できるようになり、今となっては通常業務を問題なく遂行できている人も多いはずだ。「通勤のストレスがなくなった」「電話対応がないため効率的」といった声も多く、テレワークの導入は日常生活に良い影響を与えている印象が強い。出社しなくても仕事はできると分かった以上、パンデミック終息後もテレワークを続ける企業もあるだろう。
一見、良いこと尽くしのように感じるテレワーク。しかし蓋を開けてみると、メリットばかりではない驚きの事実が明らかになった。
70%以上の人が、テレワークによって体調・精神面が悪化?
日本ユニファイド通信事業者協会が一都三県でテレワークを行っている会社員551人を対象に行ったアンケート調査によると、回答者の72%が、テレワーク導入後に「体調や精神面におけるなんらかの変化があった」と回答。変化の内容については「体重が増えた/減った」という回答が最も多く、次いで「体力が低下した」「肩がこるようになった/悪化した」という回答が多かった。
また、精神面でも「ストレスがたまりやすくなった」「ストレスを解消しにくくなった」という項目に一定数の票が集まり、身体だけでなく精神面でも疲弊している人が多いことがわかる。一方で、テレワーク導入に消極的な企業に対して、「導入するべきだと思う」と回答する人が76%となった。“テレワークで心身的なストレスを感じているけど、導入は促進するべき”という矛盾が発生してしまっているのは、コロナ感染防止とテレワークによるストレスを天秤にかけた結果だろう。
なぜ70%以上もの人が、テレワークによって心身ともにストレスを感じているのだろうか。まず身体的な面だと、慣れない姿勢でPC作業をしていることが大きな影響を与えていると言える。オフィスには、ちょうどいい高さの机や、長時間座ることを想定して作られた椅子がある。しかし自宅にあるのはたいていが食事を主な用途として作られた家具。ここで作業をしていれば、身体のどこかしらが痛くなるのは無理もない。通勤がなければ一日中家にこもりきることもあるだろう。これは体力低下や体重増加を招く大きな要因だ。
精神的な面では、これまでのように人と喋れない環境になったことがひとつの理由として挙げられる。メールの相手にイラっとした時や、上司が無理難題を押し付けて去って行った時、オフィスであれば近くの同僚に「聞いてくれよ……」と愚痴をこぼすことができるだろう。しかしテレワークの場合、イラっと来ても「わざわざチャットを送るほどのことでもないか」と自分の中に留め、結果的に消化不良を起こしてしまう。これが積もり積もってパンクしてしまう人も少なくないのだ。
ただでさえ不安が多いコロナ禍。それに加えてストレスを発散できない環境となれば、慢性的に憂鬱な状態が続くような、いわゆる“コロナうつ”になってしまうのも仕方がない。事実、コロナ禍の影響を受けて増加した疾患について、医療情報提供サービス会社・eヘルスケアが全国の医師にアンケート調査を行ったところ、40%近くが「精神疾患」を挙げたという。冬を越えて感染者数増加のピークは過ぎたが、生活環境の変化がもたらすコロナうつにはまだまだ油断は禁物。趣味に没頭したり、気の置けない人たちとオンラインで積極的にコミュニケーションをとったりとそれぞれにストレス発散方法を見つけることで、このパンデミックを乗り越えていきたい。
参照元:市場統計:テレワークの導入実態と課題に関するアンケート調査結果【JUSA】