2020年度の国内パソコン出荷台数が過去最高を記録した。出荷台数は1,728.3万台で、前年比12.9%増という伸長。1995年の調査開始以来、最高記録だった2013年度の記録を更新しているが、出荷金額は前年比1.2%減の1兆4,009億円。これは、低価格ノートパソコンの出荷が増加したことが要因だ。出荷されたパソコンの平均単価は81,057円で、2019年度の92,663円から11,607円の低下となる。出荷数が増えるほど低価格化が進んでいくのは市場原理だが、2021年度は世界的な半導体不足の影響もあり、市場が縮小していくと予測されている。
GIGAスクール構想に積極姿勢を見せたNECレノボが好調
メーカー別の出荷台数を見ると、1位はNECレノボの632.8万台。シェアは36.6%で前年度比9.5ポイント増と大きく伸ばしている。これは、小中学校向けに「一人に端末1台」を目標に掲げる、政府の「GIGAスクール構想」に力を入れたことで、グーグルのOSを搭載した普及型パソコン「Chromebook(クロームブック)」の出荷台数が大きく伸びたことが要因とみられている。
2020年度の市場全体で見ても、GIGAスクール向け出荷は約481万台(市場構成比27.8%)で、NECレノボや日本HP、デルなどが出荷したChromebookが約406万台を占めており、「GIGAスクール向けパソコン=Chromebook」という図式が出来上がりつつある。また、Chromebook全体の出荷台数は430万台で市場構成比は24.8%。つまりパソコンの4台に1台がChromebookという状況だ。で、圧倒的なシェアを占めるWindows OSに追いつく日が来るかもしれない。
2位は日本HPの264.9万台、3位がデルの227.3万台、4位富士通(FCCL)187.9万台、5位ダイナブック98.5万台と続く。どこも前年記録を下回っているが、6位のアップルだけは64.5万台の前年比121.7%と伸長を見せた。
法人市場全体を見ると1,246.2万台の前年度比13.6%増とのびているが、GIGAスクール需要を除くと約750万台。これは2019年度を32%下回る結果で、成長に翳りを見せている。個人向け市場では出荷台数は482.1万台で前年度比11.3%増と2年連続の増加となった。コロナ禍の影響で在宅勤務・在宅学習がすすみ、パソコンの買い替えや買い増し需要が増加したことが要因と見られている。
過去最高を記録した2020年度とはうってかわり、2021年度の市場は大きく縮小するだろう。調査では過去最大の減少率である前年度比30.7%減の1,198万台を見込んでいる。内訳を見ると、個人市場がほぼ横ばいだが、法人需要が減少すると予測。小中学校に続き、高校でも配備が期待されている高校版GIGAスクールは、政府が一律に一人1台化の予算を計画しておらず、財源不足に悩む自治体は私物スマホの活用など方針を多様化させているため、GIGAスクール特需は見込めない。また、在宅勤務を推進する法人は首都圏の大企業限定であり全国でみると普及していないことや、世界的な半導体の供給不足の影響がパソコン部品にも及ぶことで、パソコン市場は大きく落ち込むと推測されている。
いちユーザーとしては、出荷台数が減ることでパソコン価格が上がってしまうのだけは避けてほしいものだ。
参考元:「XP」更新需要の13年度を抜く過去最高の1728.3万台【 株式会社MM総研】
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