2021年10月5日、Microsoft(マイクロソフト)が新たなOSとして「Windows 11」の提供をスタートした。ベースとなるのは「Windows 10」で、10からはWindows Updateで無料アップグレードも可能だ。さまざまな優れた機能が提供されており、ユーザーにとってはより使いやすく、スマートな作業が可能となる。
しかしそれは裏を返せば、要求されるハードウェア要件もこれまでより高くなるということ。つまり、パソコン1台や2台だけのアップデートというわけにはいかない企業にとっては、アップデートは「ちょっと待った!」な状況なのである。
企業のPCは「あと数年はWindows 10のまま」という調査結果も
IT資産管理ソフトウェアを手掛けるLansweeper社が、6万組織が持つ約3,000万台のWindows端末を対象に調査を実施し結果によると、多くの企業が今後何年にもわたって、Windows 10を使い続ける可能性があるとしている。
というのも、マイクロソフトが示したWindows 11のCPU要件である、2コア以上の64ビットCPU、という条件を満たすPCを使っているのは、6万組織のPCのうちわずか44%だった。また、セキュリティ機能を提供するマイクロチップである、Trusted Platform Module(TPM)2.0も必須となるわけだが、その要件を満たすのも、52%ほどしかなかったのである。つまり約半数のPCがWindows 11へのアップグレードに追いつかない端末を使っているということになる。
さらにPCの台数が1台2台レベルの話ではない企業にとっては、いつどの部署を優先してPCを新調するのかという計画&予算にも大きく関わる、頭のイタ~イ話でもあるのだ。
ネットでは「6年かけてやっとWindows 10が安定してきたのにまた新OSとは」「少なくとも今の時点ではリリース直後のWindows 11よりも10の方が優れている」という声も少なくない。これまで何年もかけて世界中のユーザーから報告されていた不具合を潰しながら、最適に近づけてきていわば完成形に近いのが今のWindows 10、新しくてスペック上の性能はばっちりだが、これからどんな重大な不具合が起こるかわからないのがWindows 11である。
すでにWindows 11では「印刷しようとするたびに管理者資格情報の入力を求められる」「一部のネットワーク接続経由で試行した場合に、プリンターのインストールに失敗する」「カスタム印刷プロパティが印刷サーバークライアントに正しく提供されない場合がある」といった不具合が報告されており、早々にWindows 11に移行したユーザーは、ユーザーであり不具合を見つけるデバッガーのような役割を果たしているとも言えるだろう。
とはいえ、そのWindows 10も、2025年10月でサポートが終了予定となっている。先延ばしにできてもあと4年。これは企業にとっては、そう長いとはいえない時間である。それではいつ企業はWindows 11を導入すべきなのだろうか。それは、これまで新OSがリリースされてきたときと同じように、社内や組織内での検証・テスト・精査が終わり、そして顧客側のソフトとの互換性などについて、取引先に迷惑をかけないことが確認できてからにした方がよさそうだ。
Windows 10を使い続けながら、同時に導入計画を立て、段階的にWindows 11を導入していく。マイクロソフトやパートナーに助言やサポートを求めるのも有効だろう。そしてWindows 10のサポート終了までに、スムーズな移行を済ませるのが理想だ。……と、口では簡単に言えるが、これをどれだけの企業、特に中小企業で実行できるかは大きな疑問であり、課題でもある。
参照元:企業がWindows 11に「すぐにアップデートしてはいけない」明確な理由【ビジネス+IT】
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