NTTドコモは、2022年6月3日からドコモショップや家電量販店などにおいて、人気のiPhoneを割引価格で購入するときは、箱に名前を書くかショップのゴム印を押すことを要請している。これを拒否すると割引は受けられないそうだ。これは転売防止策とみらているが、いったいどういうことなのか? 実際に、箱に名前があるとiPhoneの買取価格はどのくらい下がるのだろうか……。
ドコモが6月3日から、iPhoneの箱に名前を記入するかショップのゴム印を押す転売防止策を開始!
最近ネット上では、ドコモで人気のiPhoneを割引価格で購入するとき、箱に名前を書くか、それが嫌な人はドコモショップのゴム印を押すことを要請されるという噂が広まっている。
Twitterでは、実際にドコモショップの店舗名が書かれたゴム印を押された箱の画像などが投稿されている。
どうしてドコモが箱の記名を要請する事態になったのか?
それにしても、どうしてドコモがこのような転売防止策を行うことになったのだろうか?
そもそも、大手キャリアでは2年の長期契約をすることでスマホを大幅に安く購入できる「抱き合わせ販売」が当たり前だった。
2006年に電話番号を維持したままキャリアを乗り換えられる「MNP(携帯番号ポータビリティ)」が実施されると、他キャリアからの引き抜き合戦が活発になる。
さらに、2014年頃には「スマホは一括0円」「家族4人でMNP乗り換えすると20万円キャッシュバック」といった過剰なキャンペーン合戦が繰り広げられ、社会問題に発展してしまう。
そこで、2019年には電気通信事業法が改正され、「SIMと通信契約とスマホは分離して販売」や「スマホとSIMの通信契約をセットで販売する場合の値引きは額2万円まで」といった規制が行われることになった。
そのため、現在では大手キャリアの店舗や家電量販店のキャリア販売コーナーでは、SIMの通信契約なしでもスマホの単体購入を拒めない状況なのである。この辺りの事情はこちらの記事で確認してほしい。
つまり、ドコモショップにおいて転売目的でSIMの通信契約をせず、iPhoneのみを割引価格で購入。そのまま新品未使用で中古スマホ店やフリマで転売する者が続出することになったわけだ。
もちろん、転売するときは新品に近い状態のほうが高く買い取ってもらえるので、今回のドコモの措置は、それを防止するための裏技と言える。
ドコモにおいて、割引価格でiPhoneを購入する場合、箱に名前を書くことが要請される理由は、何となくお分かりいただけたと思うが、実際、箱に名前が記入されることで、買取額にどのくらいのダメージがあるのだろうか?
たとえば、中古スマホ専門店として有名なイオシスでは、公式サイトで買い取り価格や条件を明記している。
それによれば「iPhone 13 Pro Max docomo版SIMフリー(256GB・グラファイト)」の場合、未使用(Sランク)の買取価格上限は12万6,000円、使用感が少なく傷はない状態(Aランク)で11万8,000円となり、買取価格が8,000円ほど安くなる。
また、Aランクの状態の注意書きには「付属品(外箱、マニュアル含む)が1つ~全部欠品の場合役5%の減額になります」とある。つまり、箱に名前が書いてあることで欠品扱いとなっても、最悪5%の減額で済むことになるわけだ。
筆者も仕事柄、何度かイオシスでスマホを買い取ってもらったことがあるが、この買取価格表はかなり正確な数字なので信頼できると思う。
●イオシス(公式)→こちら
まとめ
いかがだろうか? 筆者はドコモがiPhoneを割引販売するときに箱に名前書くことを要請するという話を聞いて、「ドコモが本当にそんな嫌がらせみたいなことをするのだろうか?」と半信半疑であった。
実際に、そんなことをしても買取価格にはさほど影響がなく、転売で荒稼ぎしているいわゆる“専売ヤー”にはほとんど効果がないと思ったからだ。
むしろ、ドコモショップの押印が箱にあれば、盗んだものではなく“ドコモショップで購入した正規品という証”になる可能性もあるため、これが逆効果にならなければいいが……と、少々心配しているところである。