ソフトバンクとKDDIが通信障害対策でデュアルSIMサービスを発表 − 今後は何がどう変わる?

2023年2月1日、産経新聞は「通信障害対策にデュアルSIM KDDIとSBが提供へ」という記事を報道しました。これによると相次ぐ大規模通信障害対策として、KDDIとソフトバンクがデュアルSIMの新サービスを提供するとのこと。果たしてこのサービスによって、今後スマホはどう変わるのでしょうか? そこで今回は、大手が提供するデュアルSIMサービスとはどのようなものなのか、また、どんな効果が期待できるのか解説しましょう。

そもそもデュアルSIMって何? どんなメリットがあるの?

KDDIとソフトバンクがデュアルSIMの新サービスを提供

2022年7月、KDDIにおいて大規模通信障害が発生し、延べ3,000万人以上が電話が繋がらない、あるいはデータ通信が利用しにくい被害を受けたことは記憶に新しいと思います。

そのようななか、2023年2月1日、産経新聞は「通信障害対策にデュアルSIM KDDIとSBが提供へ」という記事を報道しました。

引用元:産経新聞「<独自>通信障害対策にデュアルSIM KDDIとSBが提供へ」は→こちら

これによると、相次ぐ大規模通信障害対策として、KDDI(au)とソフトバンクがデュアルSIMの新サービスを提供するとのことです。

そもそもデュアルSIMとは、ひとつのスマホで異なるキャリアの回線を同時に利用できるようにすること。たとえば、au回線に通信障害が発生しても、デュアルSIMならソフトバンク回線で通信が可能になるというわけです。

すでに、複数のキャリアを利用可能なIIJmioやmineoなどの格安SIMでデュアルSIMは利用可能となっており、音声対応SIMとデータ通信専用SIMを組み合わせることで、月額数百円という驚くべき低価格で利用することも可能です。

今回のニュースは大手キャリア同士でも、通信障害時対策として、このデュアルSIMサービスを提供するというわけです。デュアルSIMに関して詳しく知りたい人はこちらの記事を参考にしてください。

「デュアルSIM」とはSIMカードスロットに2枚のSIMを入れることで、ひとつのスマホで2つの回線を同時に利用できること

「デュアルSIM」とはその名のとおり、SIMカードスロットに2枚のSIMを入れることで、ひとつのスマホで2つの回線を同時に利用できる。これならメイン回線がダメでも緊急時には他社回線が使える(図は筆者作成)

最近はスマホ本体に内蔵されたチップがSIMカード代わりになる「eSIM」対応機種も多い

最近はスマホ本体に内蔵されたチップがSIMカード代わりになる「eSIM」対応機種も多い。こちらはSIMカードスロットに1枚のSIMカードしか入らなくても、内蔵のeSIMとの組み合わせることでデュアルSIM運用できる(図は筆者作成)

それにしても、どうして今、大手キャリア同士で通信障害時対策としてデュアルSIMサービスの提供を始めるのでしょうか?

実は、相次いで大規模な通信障害が発生したことを重く見た総務省は2022年9月から「非常時における事業者間ローミング等に関する検討会」を開催してきました。

ここでは“非常時における通信手段の確保に向けて、携帯電話の事業者間ローミングをはじめ、Wi-Fiの活用などの幅広い方策について検討”することになっています。

「ローミング」とは、ユーザーが契約しているキャリアの範囲外で、ほかキャリアの回線を利用して音声通話やネットでのデータ通信を利用できる仕組みのこと。

たとえば、新たにサービスを開始した楽天モバイルの回線がまだ整備されていない時期は、楽天モバイルの電波が届かない場所で、提携先のau回線にローミングされて自動的に接続されていました。

ところが、大手キャリア同士で大規模なローミングを行うにはそれなりの費用と時間がかかるため、早期に提供できる「デュアルSIM」サービスを先に開始する案が浮上してきたわけです。

今回の報道では、まずソフトバンクとKDDIがデュアルSIMサービスを提供するようですが、今後はドコモや楽天モバイルなども同様なサービスを提供するのではないかと見られています。

●総務省「「非常時における事業者間ローミング等に関する検討会」の開催」は→こちら

今回の報道ではソフトバンクとKDDIがデュアルSIMサービスを提供することになった(筆者撮影)

具体的にはどんなサービスになるの?

それでは大手キャリアが提供するデュアルSIMとは、いったいどのようなサービスになるのでしょうか?

まず、産経新聞の報道によると、ソフトバンクとKDDIは全国の販売代理店やオンラインストアで新サービスを提供する予定です。

次に、ケータイWatchの記事によると、KDDI広報は「それぞれの回線の予備として緊急時の利用を想定したオプションサービスとして提供するもの」としています。

このデュアルSIMの利用はKDDIとソフトバンクにそれぞれ申し込む必要はなく、どちらか片方と契約していればオプションの申し込みだけで利用可能となり、いわゆる「ワンストップ」手続きになりそうです。

引用元:ケータイWatch「「KDDIとソフトバンクがデュアルSIM提供」産経新聞報道に両社コメント」は→こちら

ソフトバンクは2023年2月2日、プレスリリースを発表。そのなかで「2023年3月下旬以降から、個人・法人のお客さまが通信障害や災害などでスマートフォンでの通信ができなくなった場合の備えとして、緊急時にソフトバンクまたはauの予備回線に切り替えて通信サービスをご利用いただけるデュアルSIMサービスの提供を開始します」と発表しました。

また、この発表では「具体的なサービス内容や提供料金、申し込み方法などは、別途発表します」となっていますが、ITmedia Mobileの報道によると、KDDIの高橋社長は2023年2月2日の決算会見において、auとソフトバンクのデュアルSIMの料金は「数百円程度で提供したい」と語っています。イザというときに数百円の負担で他社の回線が利用できるのは、ありがたいことですよね。

●ソフトバンクのプレスリリースは→こちら
●KDDIのプレスリリースは→こちら
引用元:ITmedia Mobile「auとソフトバンクのデュアルSIMは「月数百円程度」を想定、eSIMにも対応」は→こちら

まとめ

いかがでしょうか? すでに格安SIMの一部ではデュアルSIMが利用可能でしたが、大手キャリアでも大規模災害時にデュアルSIMサービスが利用できるようになるのは、安心ですよね。

ちなみに、iPhoneでは2018年に発売されたiPhone XS/XS Max/XR以降のモデルはデュアルSIMに対応していますし、2020年に発売された第2世代以降のiPhone SEもデュアルSIMが利用できます。

もちろん、ここ数年で発売されたAndroidスマホもデュアルSIMに対応するモデルは多いので、今後は万一に備えてスマホはデュアルSIMで運用するのが当たり前になるかもしれませんね。

ちなみに、筆者はドコモ回線の格安SIM「LIBMO」とauの格安プランで基本料金無料の「povo2.0」(eSIM)でデュアルSIM運用を行っており、大規模通信障害があってもどちらかの回線を利用できるようにしています。

筆者はLIBMOのデータ通信専用SIMカードを物理SIMで、povo2.0をeSIMで運用している

デュアルSIM運用の場合は常に2つの回線のアンテナが表示される。ちなみに、筆者はLIBMOのデータ通信専用SIMカードを物理SIMで、povo2.0をeSIMで運用している

すずきあきら
編集・ライター。パソコン通信時代からネットワークに接しWi-Fiやインターネット、SNSなどに精通。30年に渡って、パソコンやスマホ関連のムック本や雑誌記事を手がけてきた大ベテラン。最近は格安SIMなどのケータイ料金やアプリ、通信費全般の記事を執筆することが多い。

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