ニュースでよく耳にする「デッドセクション」での車両の緊急停車。2024年9月17日にもJR水戸線で事故が発生し、130名が1時間以上も閉じ込められました。でも、デッドセクションっていったい何なのでしょうか? そこで今回は、鉄道ファン以外にはあまり知られていないデッドセクションについて解説します。
そもそも「デッドセクション」って何なの?
「デッドセクション」とは、鉄道に送電されるシステムが切り替わる境目のことです。この境目には送電されていない区間があり、その区間を“デッドセクション”や“無電区間”と呼びます。デッドセクションは送電されないため、走行する列車は加速できず惰性走行となります。そのため、踏切などで緊急停止をしてしまうと、その車両は電力が供給されず動けなくなってしまうんですね。
それでは、なぜこのようなデッドセクションがあるのでしょうか? その理由は大きく分けて3つあります。
■デッドセクションが設けられている主な理由
・交流と直流が切り替わるため
・電圧が切り替わるため
・周波数や位相が切り替わるため
電車の送電システムには「交流(AC)」と「直流(DC)」があります。どちらを採用しているかは地域や会社ごとで異なっているため、走行中に切り替える必要があるんですね。
まず、「直流」は電池やスマホ・パソコンのバッテリーなどで使われており、+と-があります。しかし、直流で長距離を送電すると、徐々に電力が減衰してしまうため、送電設備が必要となりコストがかかってしまうのです。とはいえ、直流の車両は電気系統の設備が単純なので、車両の生産コストを抑えることができます。そのため、範囲が限定される東京や大阪などの大都市部では、多くの車両が直流を採用しているというわけです。
これに対し、「交流」は家庭用コンセントなどでも使われており、+と-が入れ替わる方式。降圧が簡単で高電圧送電しやすく、長距離の送電には向いているのです。ところが、交流は降圧装置や交流から直流に変換する整流回路などが必要となり、車両の生産コストは高めになります。そのため、少数の車両でも対応できる閑散部で採用されています。
このように、交流と直流にはそれぞれメリット・デメリットがあり、各地域や会社での事情も絡んでくるため、全国で簡単に統一することはできません。そのため、今でもデッドセクションが存在するというわけです。
また、交流と直流の切り替え以外にも、電圧や位相、周波数の切り替わるデッドセクションも日本国内に多数あります。しかし、これらのデッドセクションは距離が短くて事故も起こりにくいため、ほとんど知られていません。
交流・直流のデッドセクションは日本に9カ所ある!
現在、日本には車両基地などを除き、交流と直流が切り替わるデッドセクションは9カ所あります。
■JR取手駅からJR藤代駅(JR常磐線)
首都圏からも行きやすいデッドセクションが、このJR常磐線のJR取手駅からJR藤代駅のデッドセクションです。ここでは取手駅側が直流、藤代駅側が交流でデッドセクションが設けられています。
この区間は近くに踏切があるため緊急停止しやすく、「デッドセクションの事故といえばここ!」ぐらいメジャーなスポットになっているのです。
■JR小山駅からJR小田林駅(JR水戸線)
次に紹介するのは、JR水戸線にあるJR小山駅からJR小田林駅間です。小山駅側が直流、小田林駅側が交流のデッドセクションになります。この区間にも踏切があるため、緊急停止により列車が立ち往生することがあります。
■JR黒磯駅(JR東北本線)
JR黒磯駅は、駅構内に交流と直流を切り替えるデッドセクションが設けられていました。踏切がないため緊急停止などのリスクは低く、さらにプラットホームからデッドセクションの区間が見える珍しい駅となっています。現在は、黒磯駅から盛岡方面へ移設されましたが、プラットホームから見えるのは変わっていません。
■JR村上駅からJR間島駅(JR羽越本線)
■つくばエクスプレス守谷駅からみらい平駅(首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス線)
■えちごトキめき鉄道日本海ひすいライン梶屋敷駅からえちご押上ひすい海岸駅(えちごトキめき鉄道日本海ひすいライン)
■JR中津幡駅からIRいしかわ津幡駅(JR七尾線)
■ハピラインふくい線敦賀駅から南今庄駅(ハピラインふくい)
■JR門司駅構内(JR山陽本線)
まとめ
いかがでしょうか? 今回はたびたび電車が止まってしまう「デッドセクション」について解説しました。とくにJR常磐線は利用客も多く、以前はデッドセクションを通るといきなり車内灯が消えてしまうので、驚いた人も多かったと思います。筆者のようなガチ乗り鉄にとっては、それがけっこう楽しみでした。
しかし、現在のJR常磐線はデッドセクション対策が施されたE531系車両が運行されており、消灯することはほとんどありません。そのため、現在、このデッドセクションに気づくのは、一部の鉄道マニアだけになっているのです。
※サムネイル画像(Image:KenSoftTH / Shutterstock.com)