臨時列車「サンライズ出雲91号」に乗ってみた! 通常列車とは何がどう違う? やっぱりソロはシングルより狭い?

現在、唯一の定期運行寝台特急「サンライズ出雲」。鉄道ファンならずとも、秘密基地感覚で大人が楽しめると大人気だ。そのサンライズ出雲は、GWや年末年始には通常列車に加えて臨時列車が運行されているのをご存じだろうか? 停車駅や移動時間なども通常列車とは異なるうえ、年に8本しかない希少性から、鉄道ファンの間では臨時列車のほうが人気があるらしい。そこで今回は、実際に筆者が2021年12月30日の臨時列車「サンライズ出雲91号」に乗ってみたぞ!

サンライズ出雲は繁忙期に臨時列車が出るの知ってた?

日本で唯一の定期運行寝台特急「サンライズ出雲」は毎日運行されており、2021年3月13日のダイヤ改正以降、下りは夜21時50分に東京駅を出発、翌朝9時58分に終点の出雲市駅に到着する。

上りは18時51分に出雲市駅を出発し、途中の大阪駅でも乗車可能で翌朝7時8分に東京駅に到着する。いずれも約12時間もかかる長旅だ。

そんなサンライズ出雲だが、繁忙期には臨時列車が編成されている。たとえば、2021年のGWは4月30日と5月5日に東京駅22時11分発→出雲市駅13時7分着の下り「91号」が、出雲市駅15時33分発→東京駅6時23分着の上り「92号」は、4月29日と5月4日に運行された。

また、年末年始は2021年12月30日と2022年1月3日に、東京駅22時21分発→出雲市駅13時5分着の「91号」が、2021年12月29日と2022年1月2日は、出雲市駅15時33分発→東京駅6時23着の「92号」が運行されている。

臨時列車は、運行時間帯の都合で通常列車よりも時間がかかり、乗車時間はなんと約15時間! それでも鉄道ファンには「通常より3時間も長く乗っていられる!」と好評らしい。

さほど熱心な鉄道ファンではない筆者にすれば、通常列車のほうが良かったのだが、今回はたまたま2021年12月30日発の臨時列車「サンライズ出雲91号」の「ソロ」に乗ることになってしまったので、そのレポートをお届けしよう。

サンライズ出雲は、東京駅-出雲市駅間を毎日走る貴重な寝台特急。列車内部は2階建て構造になっており、通常列車はサンライズ瀬戸も連結しているので14両編成になっている(写真は通常列車)

不覚にも初歩的なミスで「10時打ち」に失敗! 

サンライズ出雲のチケットの基本的な取り方は→こちらで確認してほしいが、現在はJR西日本の「JRおでかけネット」から、のびのびシートだけでなくA寝台、B寝台の個室も予約可能となっている。

筆者も事前にJRおでかけネットの会員登録をし、乗車1カ月前の11月30日の朝10時に予約する準備はしていたが、まずは定石どおり、朝9時にみどりの窓口に出向き「10時打ち」してもらうことに。

ところが、最寄りのJR御徒町駅のみどりの窓口は、つい最近閉鎖されたばっかりだった。まさか、こんな初歩的なミスをやらかしてしまうとは! 慌てた筆者はすぐにJR神田駅に移動するも、なんと神田駅のみどりの窓口まで閉鎖されているではないか……。

間抜けなミスで10時打ちを諦めざる得なかった筆者は、JRおでかけネットに望みを託すものの、さすがに繁忙期なのでこちらでも予約はできず、結局、サンライズ出雲の切符を確保することができなかったのだ。トホホ……。

サンライズ出雲はJR西日本の「JRおでかけネット」から個室の予約も可能となっている。繁忙期の切符はアクセスが集中して予約しづらいが、平日の通常列車なら1カ月前の10時にアクセスすれば、B寝台は普通に予約できるだろう

ヤフオク!で切符を確保するときの注意点は?

それでも、12月30日のサンライズ出雲に乗りたかった筆者は、毎日JRおでかけネットでキャンセル待ちを検索してみたものの、やはり予約はできず。ついに最終手段「ヤフオク!」で切符を確保することにした。

ところが、ヤフオク!では12月30日の通常列車の切符はなく、臨時列車しか出品がなかった。どうやら、鉄道ファンのなかには複数のルートで切符を手配し、ダブって購入してしまう人もいるようだ。

しかも、通常1万1,000円のシングルの切符は、2万円〜4万円の高値で落札されていたため手が出せず、筆者はやむを得ずあまり人気のなかったサンライズ出雲91号のソロの切符を1万円ちょっとで落札することに。

ちなみに、ヤフオク!で切符を落札するときは、出品者の切符購入時の支払い方法が「クレカ」か「現金」かには注意したい。万一、キャンセルして払い戻しするとき、現金なら問題ないがクレカの場合は原則出品者のクレカが必要になるからだ。

こちらが、今回筆者がヤフオク!で落札したサンライズ出雲91号のソロの切符。本当は狭いソロより広いシングルが欲しかったが、今回ばかりは仕方ない

今回利用した臨時列車と通常列車は何がどう違う?

そもそも、サンライズ出雲の通常列車と臨時列車は、何がどう違うのだろうか? まず、通常列車のサンライズ出雲は、四国に向かうサンライズ瀬戸と連結しているので14両編成だが、臨時列車はサンライズ出雲だけの7両編成である。

次に、臨時列車の下りでは、通常は乗れない大阪駅から乗車することができる点が、大きな違いであろう。

また、サンライズ出雲は東京駅の在来線ホームから出発するが、通常列車は東海道線の9番線なのに対し、臨時列車は上野東京ラインの8番線から乗車することになる。

もちろん、サンライズ出雲には通常列車でも食堂車はないし売店もない。あるのはソフトドリンクの自販機だけ。したがって、アルコールや食事は必ず事前に購入して持ち込む必要がある。

しかも、臨時列車は出雲市駅に13時5分に到着するので、翌日の朝食だけでなく昼食の確保もしておかないとダメだ。そこで気になるのが、22時21分発の臨時列車に乗る前に東京駅で駅弁が買えるのかどうかであろう。

だが、その心配は必要なかった。今回は年末営業なのか、駅構内の弁当売り場は21時30以降もまだ営業しており、8番ホームにあるNewDaysでも食料は確保できたのである。

サンライズ出雲の通常列車は、東京駅の東海道線9番ホームから乗車するが、臨時列車は上野東京ラインの8番ホームから乗車することになる

21時50分に9番線から通常列車が発車すると、その10分後に臨時列車が8番線に入ってくる。やはり鉄道ファンの人気は高く写真を撮る人がたくさんいた

東京駅のホーム内では帰省客向けなのか、21時30分過ぎでも弁当を販売していた。最悪でも8番線ホーム上にNewDaysがあるので、何とか食料は確保できるだろう

今回利用した個室「ソロ」と「シングル」はどう違う?

サンライズ出雲にはさまざまな個室が用意されており、以前、筆者がB寝台のシングルに乗ったときの様子は→こちらで確認できる。

今回、筆者が乗るB寝台のソロはもっとも安い1人用個室で、シングルよりも1,100円ほど安い9,900円となっている。だが、1,100円多く払ってもやっぱりシングルにしたほうがいい。

その理由は、ソロはシングルと違いベッド部分に出っ張りがあるためかなり窮屈なので、室内に荷物を置くスペースが少ないこと。次に、弁当を置けるテーブルも設置されていないため、お弁当を食べるのにも一苦労するからだ。

また、シングルの車両は上段と下段で通路が分かれているが、ソロの車両は上段も下段も同じ通路から入室する形になっている。

そのため、下段はドアを開けるとすぐベッドが見えるが、上段は室内に階段があって上のベッドに登るような構造だ。上段はこの階段部分に荷物を置けるし、窓も湾曲したワイドなので解放感もある。

しかし、下段は個室というより“押し入れ”に窓が付いているような狭さで、むしろ「のびのびシート」のほうが広いくらいだ。機内持ち込みサイズの小型カバンなら入口に置けるが、大きなカバンは置き場所に困るだろう。

ちなみに、ソロの車両にはミニラウンジが設けられているので、食事はここを利用すればよい。また、売り切れ必至のシャワー室(チケットはすぐ売り切れる)や自動販売機などもソロの車両に設置されている。

シングル下段の部屋は、狭いながらもベッドに出っ張りはないので大きめのバッグも置ける。弁当を置ける大きめのテーブルも付いているので、まさに客室という雰囲気だ

こちらはソロ上段の部屋。室内に階段がありその上にベッドがある特殊な構造。ラウンドした大きな窓があり意外と開放的だ。また、奥の天井側に小さな物置スペースもある

筆者が利用したソロ下段は、ベッドの半分以上が出っ張りで塞がれているので、もはや客室というより“押し入れ”のような狭さ。ただし、小型カバンなら入口にギリギリ置ける

ソロの車両には、誰でも利用可能なミニラウンジが設置されている。ソロの個室で食事するよりは、こちらのラウンジでゆったり食べたほうがいいだろう

途中駅はどうなっている? 食事を買えるチャンスは?

実際に臨時列車のサンライズ出雲91号に乗って気付いたことをまとめておこう。まず、筆者はわりとどこででも寝られるほうだが、ハッキリ言ってサンライズ出雲は左右・前後・上下に揺れるし、とくに下段は車輪をダイレクトに感じられるので、熟睡することはできない。

東京駅を出てから横浜駅や沼津駅などでも停車するのでその度に目が覚めるし、朝6時過ぎに大阪駅に到着すると姫路駅あたりでは夜が明けてしまう。その後も、岡山駅から伯備線に入ると備中高梁駅や新見駅などでも停車するので、ほとんどの人は睡眠不足になるだろう。

次に、通常列車は早朝6時27分に岡山駅に到着してサンライズ瀬戸と切り離す作業が入るため7分間停車するが、臨時列車は8時48分に岡山駅に到着しても停車時間はたった3分しかない。

それでも、1番ホームには売店があり弁当を買うことも不可能ではないが、6号車あたりで待機してダッシュしないと厳しいはずだ。

次のチャンスは伯備線の備中高梁駅になる。9時48分に到着して14分間も停車するが、残念ながらここで駅弁の売店はない。その代わりスターバックスコーヒーがあるので、温かいコーヒーを買うことは可能であろう。

岡山駅で停車する1番線ホームには自動販売機があるので、ドリンクを買う時間は十分ある。ただし、売店で弁当を買うなら、あらかじめ6号車あたりで待機していないと、弁当を買っている間に置いてけぼりになるかも……

伯備線の備中高梁駅には14分間も停車するので、タバコを吸ったりスターバックスコーヒーで温かいコーヒーを買うこともできる。このあと、出雲市駅までの間にこのようなチャンスはない

約15時間の長旅の末、サンライズ出雲は出雲市駅に13時過ぎに到着した。やはり臨時列車には鉄道ファンが数多く乗っていたようで、みんな到着後は記念写真を撮っていた

いかがだろうか? 今回筆者が乗った臨時列車サンライズ出雲91号は、“乗車時間が長すぎる”というのが正直な感想だ。初めて乗るならやはり12時間で到着する通常列車のほうがいいだろう。

また、ソロ下段はシングルに比べると想像していた以上に狭く、客室という感じはまったくない。初めてのサンライズ出雲で豪華な夜行列車の旅をイメージしている人にはおすすめできない。

とはいえ、ソロ下段に慣れてくると、閉塞的な空間で不思議と秘密基地感が高まって、シングルでは味わえないワクワク感も得られた。もし、何度かサンライズ出雲に乗ったことのある人なら、あえて今までとは異なるソロの狭さを楽しんでみるのもいいかもしれない。閉所恐怖症でなければ……。

●JR西日本「JRおでかけネット」(公式)→こちら

文=植村照明/編集・ライター

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