【完全ガイド】生活保護の受給条件ともらえる金額の目安、計算方法:デメリットも

生活保護とは、国や自治体が「健康で文化的な最低限の生活」を保障するために経済支援を行う制度です。しかし、生活保護を受けるには、一定の条件を満たさなければなりません。また、受給額は個人や世帯の状況によって異なります。

この記事では、生活保護の受給条件ともらえる金額の目安、計算方法を詳しく解説します。

生活保護の受給金額はいくら?もらえる金額の目安

生活保護の受給金額は、最低生活費と呼ばれる基準額に基づいて決められます。最低生活費とは、食費や住居費など、必要最低限の生活をするために必要な金額です。最低生活費は、世帯人員や年齢、地域によって異なります。また、年金などの収入がある場合は、最低生活費から収入を差し引いた差額が支給されます。

ここでは、生活保護支給額の計算方法と支給例を見ていきましょう。

生活保護支給額(最低生活費)の計算方法

生活保護支給額(最低生活費)は、生活扶助基準、加算額、住宅扶助基準、教育扶助基準・高等学校等就学費、介護扶助基準、医療扶助基準の合計で構成されています。

生活保護支給額(最低生活費)の計算方法1

これら6つを合計した金額が、最低生活費となります。ただし、生活費などの基準費と住居費は、世帯人員や地域によって異なる基準額が設定されています。そのため、自分の世帯人員や地域に応じた基準額を調べる必要があります

具体的な計算方法は以下の通りです。

生活保護支給額(最低生活費)の計算方法2

計算式を見てもわかりにくいという方は、以下で世帯人員や地域別の支給例も紹介するので、ぜひそちらを参考にしてください

参考元:厚生労働省

世帯人員や地域による生活保護の支給例

たとえば、40代夫婦2人+中学生と小学生の子ども2人という4人世帯の場合、都市部では19.9万円、町村部では16.1万円です。一方、単身75歳以上の場合、都市部で7.2万円、町村部で6.2万円と、支給額が大きく異なってきます。

世帯人員や地域による生活保護の支給例

先述した通り、生活保護費は地域や家族構成、年齢、家計の収入によって大きく異なってきます

年金などの収入がある場合の計算方法:最低生活費との差額で額が決まる

年金や労働収入など、一定以上の収入がある場合は、その収入と最低生活費との差額が生活保護費として支給されます。

年金などの収入がある場合の計算方法:最低生活費との差額で額が決まる

年金やアルバイトなど収入がある場合も、生活保護の受給は可能です。ただし、全額が支給されるわけではなく、最低生活費と実際の収入を照らし合わせて、その差額のみが支給される形となります

生活保護の支給日はいつ?

生活保護の支給日は自治体によって異なりますが、「月初め」を支給日としているところがほとんどです。 毎月1日~5日の間に、生活保護の支給日を設定している自治体が多くなっています。東京都の場合は、原則として毎月「3日」が支給日です。土日や祝日の場合はずれることもあります。

生活保護の対象となる条件とは:どんな人が支給対象?

生活保護の対象となる人は、「世帯収入が最低生活費を下回っている人」、「持ち家や車などの資産を持っていない人(特例あり)」、「生活保護以外に受けられる公的融資制度がない、もしくは利用したうえでなお困窮している人」、「親族から支援を受けられない人」、「病気や障害が理由で働けない人」などです。

生活保護の対象となる条件とは:どんな人が支給対象?

特例を除き、画像の条件を満たす人は生活保護の対象となります。ただし、一概には判断できず、実際には市区町村の生活保護担当窓口で申請書を出した後、家庭訪問や扶養調査などで個別に審査されます

世帯収入が最低生活費を下回っている人

まずは世帯収入が最低生活費を下回っていることが、支給の最低条件です。最低生活費は前述の計算式で求められますが、多くの場合「13万円前後」となります。世帯収入が13万円以下で、なおかつ各種融資や支援を受けられず資産も無い場合は生活保護の対象になりえます。

持ち家や車、土地など各種資産を持っていない人

持ち家や車、土地など換金できる資産を保有している場合は、生活保護の支給対象にはなりません。それらの資産を換金すれば十分に生活が成り立つと見なされるためです。一方、換金できる資産が手元になく、世帯収入も最低生活費を下回っている場合は支給対象になる可能性があります。

なお、家と車に関しては通院に車を利用している場合、家を売却すると住むところがなくなってしまう場合など、特例を認められることも。しかし、許可なく新たに取得した場合には生活保護が打ち切られたり、返還を求められることもあります。

公的融資制度の対象にならない、もしくは利用したうえでなお困窮している人

「お金が無い」「一時的にお金が必要」という場合は、生活保護以外の公的融資も用意されています。

利用できる制度は、以下の4種類です。

貸付制度 種類 融資の対象
総合支援資金 生活支援費 生活を立て直すのに継続的な支援が必要な人
住宅入居費 賃貸契約を結ぶ際の敷金・礼金が必要な人
一時生活再建費 生活を立て直すのに一時的な支援が必要な人
福祉資金 福祉費 障がい者サービスを必要とする人
緊急小口資金 生活維持が困難であり、位置的かつ早急に支援が必要な人
教育支援資金 教育支援費 高等学校や大学に入学したり、授業料などを必要とする人
就学支度費 高等学校や大学の就学にかかる経費が必要な人

生活保護の受給条件は「国の他の制度を利用した上で生活が困難であること」です。生活保護を申請する前に、表で紹介した他の制度の利用を検討する必要があります。

親族から支援を受けられない人

親族から支援が受けられる場合も、生活保護の受給対象とはなりません。親族が支援を行うことで、その親族の生活も困窮し、保護を要する世帯へと転じてしまう場合においては「世帯分離」が可能なケースもあります。

しかしそうしたケースは例外的であり、基本的には3等身以内の親族に支援を行う余力があれば生活保護は受けられません。

病気や障害が理由で働けない人

生活保護を申請する時点で一時的に困窮していたとしても、健康体であり就職も可能である場合は生活保護の対象にはなりません。基本的に生活保護は、病気や障害などやむを得ない理由で働けず、なおかつ前述の通り、資産が無く公的融資制度でも生活の再建が難しいと判断された方のための制度です。

生活保護には一定の要件で、受給額が加算される特例もあります。たとえば「ひとり親世帯の被保護者」が生活保護を受給する場合、生活水準を保つことができるように加算されます。

具体的な加算項目の例は以下の通りです。生活が困窮しており、生活保護の条件を満たしており、なおかつ以下に該当する項目がある場合は、生活保護の加算特例を受けられる可能性があるため、まずは最寄りの福祉事務所に相談してみてましょう。

加算項目 内容
妊産婦加算 妊娠中及び産後6カ月以内の被保護者(妊産婦)に対し、栄養補給など追加的に必要となる経費を補填
母子加算 ひとり親世帯の被保護者に対し、ひとり親世帯がふたり親世帯と同等の生活水準を保つために必要となる費用を補填
障がい者加算 障がい者の被保護者に対し、住居環境改善や点字新聞などに必要となる費用を補填
児童養育加算 児童の養育者である被保護者に対して、子どもの健全育成費用(学校外活動費用)を補填
介護施設入所者加算 介護施設に入所している被保護者に対し、嗜好品、教養娯楽費といった理美容品などの裁量的経費を補填
在宅患者加算 在宅で療養に専念している患者(結核または3カ月以上の治療を要するもの)である被保護者に対し、追加で必要となる栄養補給のための経費を補填
放射線障がい者加算 放射能による負債、疾病の患者である被保護者に対し、追加で必要となる栄養補給等のための経費を補填
介護保険料加算 介護保険の第1号被保険者である被保護者に対し、納付義務のある介護保険料に相当する経費を補填

参考元:厚生労働省 ※PDF番号6ページ

生活保護の受給に関するよくある疑問

生活保護の受給に関するよくある疑問と回答を紹介します。

アルバイトで働きながら生活保護を受けられる?

アルバイトをしながら生活保護を受けることは可能です。

アルバイトで働きながら生活保護を受けられる?

アルバイトをしていても生活保護は受給可能です。ただし、アルバイトなどで得た収入と最低生活費の差額分が支給される形となります。また生活保護は「世帯収入」の申告が必要な点に注意。たとえば親が生活保護を受けている場合、子どものアルバイト代は世帯収入と見なされ、その分の受給額が減ります。申告しないと不正受給になってしまうため、まずはケースワーカーに相談をしましょう

年金を受給しながら生活保護を受けられる?

可能です。しかし、上記の「アルバイト」と同様に、最低生活費に対して年金では足りない差額分のみの支給となります。

外国人でも生活保護を受けられる?

条件を満たしていれば、生活保護の対象になります。具体的には永住者や日本人の配偶者などです。また、人道の観点から難民認定された方にも生活保護の支給は行われます。

生活保護申請の手続きとその流れ

生活保護申請の手続きと流れは、以下の通りです。

生活保護申請の手続きとその流れ

生活保護を申請するためには、まず自分が住んでいる地域の福祉事務所に相談する必要があります。申請時には、現在の生活状況が証明できる書類を提出します。その後、福祉事務所の担当者が家庭訪問し、生活の状況や生活保護を受けるための条件が満たされているかどうかを調査します

調査の結果、生活保護の受給が決定した場合は、原則として14日以内に支給されます。また、生活保護の支給が開始されるまでに当面の生活費がない場合は、都道府県社会福祉協議会が行う「臨時特例つなぎ資金貸付制度」を利用できるケースがあります。まずは福祉事務所に相談をしてみると良いでしょう。

申請時に必要な書類と事前準備

申請時には、以下の書類を準備しておきましょう。

用意する書類 注意点
・マイナンバー 通知書でも可
・直近3カ月分の給与明細、支払証明、収入証明など、就労の収入がわかるもの 世帯内で働いている人がいる場合は、必要です。アルバイトの場合も、収入がわかるものを用意しましょう。
・所持している通帳すべて 現在使用していないものを含め、事前に残高を記帳しておきましょう。
・光熱費、水道費などの公共料金の領収書、または請求書 滞納している場合は、督促状や請求書など滞納額がわかるものを用意してください。
・印鑑 スタンプ式は不可

家賃などの滞納がある場合もそれが分かる書類を準備しておくとスムーズです。年金手帳、生命保険、医療保険証、児童扶養手当などの受給者証、障害手当帳、学生証といったものをお持ちの場合は、それも準備しておきましょう。

支給日や定期訪問について

支給日は前述の通り、おおむね月初の1日~5日です。支給開始後は定期的にケースワーカーが家庭訪問し、生活状況などに関するヒアリングが行われます。たとえば、健康状態の回復などに伴い「アルバイトをしたい」といった際は、ケースワーカーにまず相談すると良いでしょう。

生活保護を受けるデメリット

生活保護を受ける場合には、以下のようなデメリットがあることも確認しておきましょう。

・資産や住居の制限がある
・生活をケースワーカーに管理される
・贅沢できない(貯金もできない)
・申請が通るまでに時間がかかる(最長で1カ月)
・受給額が低い
・受給中は健康保険に加入できない

生活保護を受ける場合には、利用し得る資産、能力その他あらゆるものを生活のために活用しなければならない義務があります

また、生活保護を受けることで、自分で稼いで生活することができなくなるため、自己実現や自立心を失うことになる可能性があります。ただし、生活保護はあくまでも「病気や障害が理由で働けない」「世帯収入が最低生活費を下回っている」という人を対象にした制度です。

なお、就労意欲があり自立を目指したい場合は、生活保護受給者に対する就労支援があります。

ローンやクレジットカードの利用制限

申請時に返済能力があるかどうかを調査される各種ローンやクレジットカードの利用や申請は、難しくなります。

ただし、中には審査不要で利用できるカードもあります。たとえば、「Vプリカ」などのプリペイドカードは、クレジットカードが利用できない場合の代替え手段になるのでおすすめです。

審査なしのクレジットカードについては、以下で詳しく紹介しています。

まとめ

生活保護は誰でも受けられるわけではありませんが、条件に該当すれば申請から原則14日以内には生活保護費が支給されます。生活保護の条件に該当しなかった場合は、生活保護以外の公的公的融資制度を検討するのがおすすめです。

生活保護は、あくまでも病気や障害で働けず、そのほかの支援制度を活用しても生活が困窮している人のための制度です。一時的な資金繰りに悩んでいる場合は、生活保護申請の前に「Vプリカ」など審査扶養のカードや審査に通りやすいクレジットカードの利用も検討してみましょう。

オトナライフ編集部
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