2024年8月に資金移動業者としていち早く厚生労働省の指定を受けたPayPayは、給与をデジタルマネーで支払う「給与デジタル払い」のサービスを開始した。すでにソフトバンクグループでは、希望する従業員に給与の一部をデジタル払いで支払っており、少数ながら一部の企業でも導入の動きがある。一方、従業員側は給与のデジタル払いについて、どう思っているのだろうか。エン・ジャパンの調査内容をみてみよう。
給与デジタル払いの認知度は6割強あるものの、7割は「利用したくない」と回答
エン・ジャパンは2024年9月26日~10月28日、求人サイト「エン転職」のユーザー4,830人を対象に、インターネット調査を行った。給与デジタル払いの認知度については、「よく知っている」が8%、「概要は知っている」が56%と、6割強の人に認知されていた。一方、3割強が「知らない」と回答したことから、給与デジタル払いの認知度はまだ発展途上のようだ。
「給与のデジタル払いを利用したいか」という質問では、「あまり利用したくない」と回答した人が42%と最も多く、次いで「利用したくない」が28%と、合わせて7割の人が給与デジタル払いの利用に否定的だった。年代別にみると、他の年代に比べて20代がやや前向きな姿勢を示したものの、「とても利用したい」と「利用したい」を合わせても23%と、少数派であることは否めない。
キャッシュレス決済が普及したにもかかわらず、給与デジタル払いを利用したい人が少ないのは、なぜだろうか。
給与デジタル払いを利用しない理由は「口座への資金移動が面倒」
給与のデジタル払いを「利用したくない」と答えた人にその理由(複数回答可)を尋ねたところ、最も多かったのは「銀行口座への資金移動が面倒だから」(49%)だった。具体的には、家賃や公共料金などの支払いを銀行口座の引き落としに設定しているため、逆に手間がかかると考えている人がいるようだ。
次いで多かったのは「アプリ・電子マネーへのチャージは自分でしたいから」(34%)。また、現金払いのみの店舗が一定数あることを踏まえ、約3割が「アプリ・電子マネーが使える店舗でしか買い物できないから」と回答した。
また、「利用したくない」と答えた人に「どんな条件が揃えば、今後利用してもよいと思うか」を尋ねた。最も多かった回答は「出金手数料の無料化」(61%)で、約6割の人が、電子マネーを銀行口座に入金したり、現金化したりするときに、手数料がかかることを気にしていた。
情報漏洩の不安やアクシデントが起きたときのことを想定し、「障害発生時の保障」(46%)や「アプリ・電子マネーのセキュリティ強化」(37%)を懸念する人も多かった。
また、「ポイントの還元や上乗せ」(46%)など、現金振り込みよりもメリットを感じる施策があれば、検討したいという声も。
給与デジタル払いの利用に消極的な意見が目立ったが、例えばPayPayでは、デメリットを補うサービスや機能を取り入れている。例えば、本人名義の金融機関口座への送金は、月1回なら手数料が無料。また、毎月1回指定日にPayPay残高を送れる「おまかせ振分」の機能も追加されたため、公共料金や家賃の支払いなどを自動化できるようになった。ほかにも、万が一PayPayが破綻したとしても、6営業日以内にPayPayアカウントで保有されている給与相当額の保証金が支払われる三井住友海上火災保険の保証サービスがある。
給与デジタル払いは認知されているものの、詳細に関しては、あまり理解されていないようだ。今後普及していくためには、給与デジタル払いのメリットを、よりわかりやすく伝える必要があるだろう。
出典元:【エン・ジャパン株式会社】
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