2019年頃から世の中に浸透し、爆発的に利用者が増加したQRコード決済。老若男女、性別・年代を超えて広く利用されている。ところで、そのQRコード決済をはじめとしたキャッシュレス決済について、ご両親がどんなサービスを使っているかあなたは把握しているだろうか?実は把握しているか否かで、もしご本人に万が一のことがあった場合、QRコード決済などプリペイド式の残高がどう扱われるか変わってくる可能性があるのだ。
今回は、あなたが相続人となる際に絶対に把握しておくべき、キャッシュレス決済の相続についてお伝えしたい。
プリペイド残高は“規約上は”相続権利が無い
誰かが亡くなった際、故人の財産を遺産として分配する相続。縁起でもない話だが、30代のビジネスパーソンにとっては少しずつ現実味を帯びてくる出来事かもしれない。相続する際、現金・貯金であれば比較的簡単に等分でき、土地や金融資産も現物のままでも換金してからでも必要に応じて分配することができる。ではQRコード決済やICカード決済でチャージしていた残高は、どのように処理されるのだろうか。
結論から言えば、プリペイド式キャッシュレス決済の残高は相続権が発生しない。例としてQRコード決済最大手「PayPay」の規約を挙げると、「第5条 権利義務などの譲渡の禁止」で「PayPay残高アカウントに関する契約上の地位およびこれにより生じる権利義務の全部または一部は、利用者に帰属し、利用者は、これらの権利を第三者に譲渡、貸与または相続させることはできないものとします」と2020年9月の時点で規定している。明確に「相続させられない」と宣言しているのだ。そのため「亡くなった父のアカウントに100万円分残っていました」と判明しても、その残高を相続対象に含めることはできないのだ。
そうは言ってもサービスの運営会社も、「相続できない」とただ突っぱねているわけではない。相続人から問い合わせがあった場合に個別対応し、払い戻しを行っているケースも多いという。そのため「規約にあるから」と泣き寝入りして残高をフイにするのではなく、まず運営会社に相談することが大切だと言えるだろう。
しかし相談するためにはまず、故人が生前利用していたサービスを把握していることが不可欠だ。引き落としで後から通知の来るキャッシュカード決済などと違い、プリペイド式ではとくに通知が無く、その存在を発見しづらいサービスも多い。そのため亡くなってから「どんなサービス使っていたんだっけ?」と調べ始めるのではなく、生前からしっかりとコミュニケーションを交わしてスマホやICカードでどんな決済サービスを利用しているか把握しておこう。
相続に限った話ではなく、親しい相手との日頃のコミュニケーションは何かあった際の心残りを少なくするためにも大切なことだ。小さな心がけを、未来を見据えた行動につなげていこう。
参照元:亡夫の「○○ペイ」に数十万円の残高… 電子決済システムは払戻や相続できる?【相続会議】
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