あなたは、中国の「Alipay」というサービスをご存知だろうか。Alipayは世界的なアリババグループが提供しているQRコード決済サービスで、日本でも多くの店舗で利用できるグローバルぶりが特徴だ。それだけに中国国内でも多くのシェアを獲得しているのだが、Alipayに搭載された機能の中には日本では考えられないものも存在する。
今回は日本の各種サービスと一線を画した、Alipayの機能「芝麻信用」(ゴマしんよう)についてご紹介していきたい。
様々な優遇を受けられる芝麻信用
Alipayは、中国国内のスマホ決済の中でおよそ半数のシェアを占めていると言われる大手サービスだ。「日本の数倍キャッシュレス化が進んでいる」と言われている中国で大手となっているだけに、WeChatペイとともに日本のコンビニなどでも支払いに利用できるようになっているほどその勢力圏を拡大している。
そんなAlipayには、芝麻信用という“利用者の信用度合いを数値化”する機能が備わっている。この数値が高いほど社会的信用の高い人物とされ、中国国内では様々なサービスで優遇措置が受けられるという。
優遇の例としては、ホテルやレンタカーを利用する際に前もって支払う保証金(デポジット)が不要になる。病院などの料金を後払いできるようになる。アリババグループの金融会社でローンを組む際に、ローンの金利が優遇される、などのメリットが存在する。そのため、Alipayを利用するユーザーは、こぞって芝麻信用の数値を上げることに熱心になっているようだ。
「優遇が受けられるなんていいじゃん。日本のサービスにも導入されないかな」と思った人もいるかもしれない。しかしそう思うのは、芝麻信用がどのように算出されているかを聞いてからでも遅くはない。
詳細は公表されていないものの、運営会社のアリババによれば、芝麻信用は学歴・勤務先といった社会的ステータス、資産・返済状況などの金銭面、さらにはその人の人脈や日々の行動から算出されているという。この中で注目すべきは、人脈と行動だ。学歴・勤務先や資産・ローンなどの返済は日本でも比較的調べやすい内容だが、人脈・行動については、その人を常時監視していないと判別できない要素となる。
中国の噂では「交通違反」「レンタル品の未返却」「ホテルの備品を持ち帰る」などが数値を低下させる原因になるとされており、「誰が・いつ・どこで・何をしたか」を1企業が把握していることになる。“超監視社会”とも呼ばれる中国らしいと言えばそれまでだが、これが日本で導入されたとなれば非難の嵐で即座に終了することは火を見るより明らかだろう。
逆に(企業にとって)良いことをすれば芝麻信用の数値は上がるとされ、利用者は買い物で積極的にAlipayを利用するようになっている。これが外国である日本でも支払い可能な理由のひとつであることは間違いない。便利と監視が共存する中国のQRコード決済を、羨ましいと思うか怖いと思うかは人それぞれだろう。
参照元:アリペイが好んで利用される理由「芝麻(ゴマ)信用」とは?【UnivaPay】
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