2020年12月10日にサービスが開始された「ANA Pay」。名前の通り航空会社のANA(全日空)が提供しているQRコード決済だ。当然、ANAのサービスで優待を受けられるのだが、不自由さも浮き彫りとなっておりこのサービスがどこまでシェアを伸ばせるのかは未知数と言わざるを得ない。
今回は、コロナ禍で需要の落ち込みに苦しむANAにとって、ANA Payが救世主となるかどうかを考えていきたい。
航空業界からキャッシュレスへと進出したANA
今回、ANA PayでQRコード決済業界へと参入を果たしたANA。ANAにとって畑違いの世界であることは間違いないが、近年は様々な業界から多くの企業がQRコード決済に進出してきており、その流れの一部と考えればさほど突飛な選択でもないと言えるだろう。
しかし、数年前はまだまだ未開拓で“ブルーオーシャン”だったQRコード決済も、2018年頃から「PayPay」や「楽天ペイ」といったサービスが業界の覇権を握るために攻防を繰り広げたことは記憶に新しい。現在では、「100億円あげちゃうキャンペーン」などインパクトのある還元キャンペーンで圧倒的なシェアを獲得したPayPayに対し、他のサービスがどうにか劣勢を跳ね返そうと奮闘している状況だ。
そんな世界にこのタイミングで新規参入というのも、なかなかにチャレンジングな選択であると言えるかもしれない。
チャレンジングなのは参入時期だけでなく、サービスの制度面でも同様のことが言えるだろう。というのも、ANA PayにチャージするにはJCBのクレジットが必要となる。「ANA JCBカードからチャージすれば、1,000円で最大11マイル獲得できる」というものの、チャージ方法がブランドの限定されたクレジットカードのみとなると、一般ユーザーをどこまで獲得できるのかという点で大きな疑問符がついてしまう。
利用可能店舗も、ANA PayおよびJCBの提供しているQRコード決済スキーム「Smart Code」が利用できる場所に限られている。そうした利用場面の少なさでも、QRコード戦国時代が一段落し各社がある程度ユーザーを囲い込み終えた状況の業界に飛び込んでいくことへの不安に拍車をかけているのではないだろうか。
ご存知の通り、現在の航空業界は旅行、とくに海外への便数はほとんどゼロに近い状態にまで追い込まれており、ANAの業績ははっきり「悪い」と言わざるを得ない。そんな背景を考えるとANAは、ANA Payに「この劣勢を打破する起爆剤」としての役割を求めて世に送り出したのかもしれない。(構想の段階ではコロナの影響は無かっただろうが)
ANA Payは期待通り金の卵を産むサービスへと成長するのか。それとも業績振るわずANAの負担を増しただけのお荷物事業となってしまうのか。今後のサービス展開に要注目だ。
※サムネイル画像(Image:Yangxiong / Shutterstock.com)