キャッシュレス推進なのでは? それでも日本政府が「新紙幣を発行」をする理由とは?

便利なキャッシュレスが一般化してきた近年。しかし、日本政府は新500円硬貨を2021年11月から、新紙幣を2024年から発行するため、巷ではこの両政策に「ちぐはぐしているのでは?」と疑問に思っている人もいるのではないだろうか。しかし、日本政府が国民から非難されるような政策を行っているとは思えないし、思いたくはない。

今回は、帝京大学経済学部教授の宿輪純一氏が解説している両政策について紹介しよう。

キャッシュレスによって削減できるコストがある!

数十年、百年後は、完全にキャッシュレスになる時代が来るのだろうか

 キャッシュレス化の推進政策は、2018年に経済産業省が策定した「キャッシュレス・ビジョン」に基づいて遂行されている。政府としては、キャッシュレス化によって現金の取扱いコストの削減を減らそうと考えたのだ。実は、日本は現金決済比率が他の国に比べて高く、経済・金融全体で年間約1.6兆円ともいわれている、と宿輪氏は述べている。キャッシュレス化を推進することでこのコストを削減し、生産性の向上や企業・産業が発展し、日本経済が成長することを見込んでいるようだ。

 日本のキャッシュレス化の目標は「2025年までに40%」であり、決してキャッシュレス化を100%にしようとしているわけではない。しかし消費税の引上げによる影響を軽減するために「キャッシュレス・消費者還元事業」として約5,000億円が支援のために使われるなど、キャッシュレスの推進に力を入れている。それにもかかわらず新紙幣を発行するということは、相応の理由があるのだろう。

日本では、偽札を作ること、使うことは、無期懲役などの重罪に課せられるため、抑止力になっているかもしれない

 紙幣や硬貨を新しく発行する理由は、不正使用対策のようだ。偽札などの不正対策のため、高い技術を使った紙幣、硬貨に更新し続ける必要があり、20年毎に更新されることになっている。この周期には理由があり、肖像が浮かび上がる技術である3Dホログラムなどの新技術を定期的に導入することと、人的な問題が背景にある。紙幣も硬貨も熟練した人の手で制作されることから、人から人への伝承が必要で、20年という周期が設けられたようだ。

 また、日本の紙幣や硬貨を製作する技術水準は世界と比較しても高く、一方でその技術の甲斐もあって偽札が非常に少ない傾向にある。そのため日本では、「新紙幣の製造コストは高くなり、偽札の取り締まりにかかる費用を上回ってしまう」といった、平和な日本だからこそ起こってしまう悩みも存在するという。

 国家の重要な紙幣や硬貨ということで、人の手は必ず介入しなければならず、全てをデジタル化することは難しいことなのだろうか。費用や資源の削減にもなるし、新紙幣や硬貨の製造費用を削減できるといいが……。

参照元:日本政府が「キャッシュレス推進」しながらも「新紙幣を発行」するワケ【マネー現代】
出典元:新しい日本銀行券及び五百円貨幣を発行します【財務省】

(※2021/9/16 記事の一部を訂正いたしました)

オトナライフ編集部
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