これまでフェイクニュースの影響を最小減にするには、ファクトチェックにより情報の正確性を吟味する作業が欠かせないと言われてきた。しかし、今回の実験では今までの研究結果とは真逆の新たな事実が判明した。ツイッターでフェイクニュースを拡散している人に対して、正確な記事へのリンクを返信すると「フェイクニュースを訂正された人はかえってリツイートの質が低下し、偏りや有害性が強まってしまう」という結果となった。
フェイクニュースの指摘訂正はさらに悪化をさせてしまう
英国エクセター大学のMohsen Mosleh氏らの研究チームは、フェイクニュースの訂正がその後の行動に与える影響を研究するため、虚偽だということが判明しているフェイクニュース11件を拡散しているツイッターユーザー2,978人を特定。そのうち、本当にそのフェイクニュースを信じていると思われるツイッターユーザー約2,000人を今回の実験の被験者とした。
そして研究チームは、フェイクニュースを訂正するためのアカウントをツイッター上に複数作成し、被験者がフェイクニュースを拡散するリツイートを投稿するたびに、そのアカウントからSnopes.com(米国のファクトチェックサイト)のリンクを含むリプライを送るという実験を行った。
実験後、プロのファクトチェッカーが作成した「ニュースソースの品質スコア」を使用して、ファクトチェックによる訂正を受けた後の被験者の「リツイートの質」と「偏り」を調査したところ、いずれも有意に悪化していたという。また、Google Jigsaw Perspective API(投稿に対して「暴言度」を評価することができるAPI)を用いて被験者の「言葉の有害性」を分析した結果、訂正を受けた被験者は暴言が増加したり言葉づかいが荒くなったりしていたことが確認された。
これまで、同様の研究結果では「フェイクニュース対策には、記事の見出しが正確かどうかを考えさせることが有効」とされてきたが、今回発表された実験ではまったく逆の結果となった。
しかし、今回の実験の被験者が“逆上”する気持ちを理解できなくもない。というのも、まったく関係のない人物から、突然真っ当に間違いを指摘されたらムッとしてしまうのも分かるからである。なおさら、SNSで全世界に向けて公開された状態で自分の信じている意見を完全否定されるのだから、被験者たちの感情はさぞかし逆撫でされたことだろう。しかしだからといって事実無根の情報を拡散していいわけではなく、今回対象となったフェイクニュースの拡散者には冷静に行動していただきたいばかりだ。
人間には、自分の考え方に沿った情報は簡単に受け入れて、反対の情報は排除する傾向があるそうだ。SNS内で何回も同じニュースに触れるうちに、同じ意見だけが共鳴し合って拡散され、反対意見は排除されていく。たとえ疑問を抱いたとしても、知人がリツイートしているなら真実だろう、などと都合よく捉えるようにもなる。そこでいま一度、ネット上は間違った情報が拡散しやすい環境であることを認識した上で、簡単に噂話を信じたり事実確認もせず人に伝えたりしないよう、一人ひとりが気を付けたいものである。
参考元:Twitterでフェイクニュースを指摘された人は「かえって意見が偏っていく」との研究結果【GIGAZINE】
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