アップルにとっては大きな打撃になる法案が欧州連合(EU)で可決される見通しだ。スマートフォンやタブレットなどの充電器端子を「USB-C」に統一するという内容で、年内にも正式承認されるという。アップルでは独自のコネクタ・Lightning端子を使っているが、以前から他のデバイスとの互換性がないことで、一部のユーザーは不満を抱いていた。
EU域内で流通する製品に「USB-C」を義務化
6月7日、EUの加盟国と欧州議会(European Parliament)は、EU域内で販売されるスマートフォンやタブレットなどの充電器端子をUSB-C規格に統一することで合意したと発表した。規制案の正式な承認はまだだが、2024年秋の施行までに、すべてのメーカーが対応する必要があるという。
端子を統一するメリットとしてEUが挙げるのは、電子機器の産業廃棄物の削減だ。また消費者にとっては、端子の共通化による利便性の向上、新しいデバイスを購入するたびに新品の充電器を揃えるコストが省けるとしており、規制は圏内の電子製品をより持続可能にする取り組みになるという。
規制によって大きなあおりを受けるのはアップルだろう。ご存じのように、アップル製品であるiPhoneやiPadの充電器は、Lightning端子という独自の規格を使用している。EU27カ国に流通させるアップル製品のすべてがLightning端子からUSB-Cへ統一するとなれば、日本を含む他の地域で販売する製品でも標準となる可能性は大いにある。
これに対して、SNSでのユーザーの反応はまさに賛否両論だ。「これでやっとLightning消えるのかやったぜ」「規格が増えすぎていて選択を誤ると充電できないので、これは本当に素晴らしい」など、コストや互換性のなさなどに不便さを感じていたユーザーにとっては吉報だったよう。
一方で、「消費者としては歓迎するけど、技術者としては議会がこれを義務付けるべきではないと考える。今後USB-Cに代わる画期的な端子が出現したときに、ものすごく大きな障壁になってみんなが困ると思う」「Lightningの『本体側の』強靭さは高い評価なのよね(中略)『端子で本体を立たせて展示できる』とか他じゃ無理」「Lightning端子が嫌いな人も多いのは知っているけど、USB-Cは多用しているとすぐガバガバになるから自分は嫌い」など、今後の技術革新を阻むことへの懸念や、Lightning端子がメリットごと消えてしまうことへの残念な声も上がっている。
アップルはEUの決定に反論を唱えているが、規制案の承認は年内をめどにほぼ確実となっている。EU圏のユーザーを切るという突飛な判断でもしない限り、Lightning端子の消滅は現実のものとなりそうだ。
アップルも裏ではそれを想定していたのか、最近では「2023年発売のiPhone 15から、端子がUSB-Cに切り替わる」といったリーク情報もたびたび報じられていた。反対の姿勢は表明しつつも、実際に規格が統一された際の準備は進めてきていたようだ。
はたしてLightning端子は消滅することとなるのだろうか。今後の展開も要注目だ。
引用元:【AFPBB News】
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