インターネット上の膨大なイラストデータを学習し、法則性を編み出すことで生成される「AIイラスト」。クオリティの高いイラストが手早く生成できるため、ちまたでは、AIにイラストを出力させることを専門とした「AI絵師」と呼ばれるユーザーも登場している。
2023年5月7日に投稿された、じんべいまぐろ@jinbeimaguroさんの「AIイラストについていろんな人の意見聞いてしばらく自分の中で咀嚼してたけど最後に残ったのがこれだった。」というツイートには、一枚の画像が添えられていた。この投稿には、なんと7.2万件を超える「いいね」がついており、ツイッター上で大きな話題となっている。
今回は、こちらのツイートに関する詳細と、リプライ欄に寄せられたさまざまな意見をご紹介します。
いろんなタイプの「絵師」について思うこと
ツイートの画像には、ここ最近の「絵師」について思うことがまとめられていた。なお「絵師」とは、ネット上でイラストを描く人を総称するネットスラングのことである。
さっそくツイートの画像を詳しく見てみよう。
まず、「イラスト描いたよ! ぼくすごいでしょ!!」という、いままでの絵師さんに対しては、「すごーい!! うまい!!!」という感想を抱いているという投稿者。これは今も昔も変わらない、個人の技術力に対する尊敬の気持ちの表れである。
次に「イラスト制作にAIを活用したよ! AIってすごくて便利だね!!」と、AIを取り入れたイラストを制作する絵師さんに対しても、「すごーい!! べんりだね!!!」と好意的な印象を持っている様子。補助的な役割としてAIを活用するのは、より制作の幅が広がるので、こちらの使い方もなんら問題はない。
しかし、ラストの「AIでイラスト描いたよ!! ぼくすごいでしょ!!!」と言っているAI絵師()さんに対しては、「??」のマークとともに、なんとも言えない表情を浮かべる投稿者。この場合、凄いのは絵師本人ではなく、AIなのではないかという疑問が頭をかすめてしまう人も、一定数いらしゃるのではないだろうか。
そこに価値が生まれるのは必然、でも……
このツイートを見たツイッターユーザーたちからは、「「すごーい、どうして、そんな絵ができるんだい?」AI「無断転載サイトの画像を全部丸ごと学習した」そこから無邪気に「すごーい」と言えなくなった 餌が他人の成果物でしかも盗品て…」と、AIは他人の絵を学習してイラストを生成していることが引っかかるとの声や、「AI絵ってAIにイメージを伝えてAIに描いてもらうって作業だからどこまでいってもクライアント側だと思うんだよなぁ。プロの絵描きさんにイラスト頼む時だって完全にお任せする時もあればこんなイメージでお願いしますって頼むのでは? 人がAIに変わっただけでAIで描いてるは違和感。」と、AIで描くという表現に違和感を覚えるとの声など、さまざまなコメントがリプライ欄には寄せられていた。
投稿者のじんべいまぐろさんも、冒頭のツイートに追記する形で、「AIの技術のそれ自体はすごいって本当に思うし、そこに価値が生まれるのは必然だと思う。でもあくまでそれは技術に対しての話で他人の褌(AIの技術)をさも自分の功績のようにして振舞う人を見かけるとそれはうーんってなってしまう。」と述べている。
便利な画像生成AIだが、目にする頻度が増えることで、裏側ではこうしたモヤモヤした気持ちを抱えてしまっている人は意外と多いようだ。
絵師が「AI学習禁止」宣言をしても、法的拘束力はないのが現状
AIイラストは登場したばかりの技術なので、細かなルールなどもまだ明確に定められていない。最近では「AI学習禁止」宣言をする絵師も多くなってきた印象だが、法的な拘束力はないのが現状だ。
投稿者のじんべいまぐろさんは、「あらめて自分の考えをまとめるとAI生成を扱う新技術は素直にすごいと思うけど、今の感覚だと「絵を描く技術」と同じ分野としては評価するのには抵抗がある。きっちりと棲み分けしてそれぞれの良さを認めあえればいいな。」と、語っている。
画像生成AIの「学習」に関して、すでに海外では集団訴訟問題にも発展しているが、今後AIイラストは、一体どのようなポジションに落ち着くのだろうか。
※サムネイル画像(Image:「じんべいまぐろ(@jinbeimaguro)」さん提供)