テレビのリモコンに「U-NEXT」がある理由は? GYAO!やライブドアと絡む歴史

テレビのリモコンにNetflixと並んで「U-NEXT」のボタンが配置されていることが増えていますよね。リモコンに主に並ぶNetflixやHulu、YouTube、Amazonプライム・ビデオなどはいずれも海外発祥のVOD。よくよく考えると、国産VODであるU-NEXTがリモコンに並んでいるのは実はすごいこと。

(画像は「U-NEXT」プレスリリースより引用)

ではU-NEXTがいち早くコネクテッドTVの普及に対応できた秘訣は何でしょうか。実はその裏にはGYAO!やライブドアとも絡む「放送と通信の融合」の歴史があります。今回は意外と知らない「U-NEXTのすごさ」を解説します。

U-NEXTは実は「GYAO!」にルーツを持つサービス

U-NEXTは2007年、USENが「GyaO NEXT」として提供を開始したサービスです。つまりU-NEXTはGYAO!をルーツとするサービスであると言えるでしょう。

そんなGYAO!は2005年にサービスを開始した古参の動画配信サービス。2009年にヤフーに買収されて以降、GYAO!(※2014年以前はGyaO!表記)をヤフーで視聴していた方も多いのでは?

そしてGYAO!が登場した2005年は「放送と通信の融合」が話題になった時代です。

GYAO!」立ち上げとほぼ同じ時期に、ライブドア社がニッポン放送買収に乗り出し、フジテレビと経営権をめぐり争いに。翌2006年にはライブドアに対する東京地検の捜査が行われ、いわゆる「ライブドア事件」が大きな波紋を呼びました。この問題の発生後、私財95億円でフジからライブドア株を取得してライブドアを支援したのは当時USEN社長の宇野康秀氏でした。

ライブドア社によるニッポン放送買収やGYAO!誕生といったトピックが連続的に発生していた00年代半ばの日本は、今日の動画配信サービス全盛の時代やコネクトテッドTVの普及前夜。いわば「放送と通信の融合」の胎動が見られた時代だったと言えるのではないでしょうか。

そして、この時代にライブドアを支援した宇野康秀氏が率いる「U-NEXT」が、「Paravi」の統合などを経て国内最大の動画配信サービスへと発展。コネクテッドTVのリモコンにも搭載され、放送と通信の融合を果たしているのは「20年越しの快挙である」と言って過言ではないでしょう。

テレビ向け動画配信にいち早く対応していたU-NEXT

U-NEXTが現在、テレビのリモコンに専用ボタンを持つまでに至った背景には、早くからテレビ向けの動画配信に注力してきた戦略があります。

たとえば2010年にはソニーの「ブラビア」向けに動画配信サービスを開始し、2012年にはシャープ「アクオス」、東芝「REGZA」などに向けて動画配信サービスの提供を行っています。また、同年にはPCやスマホなどマルチデバイス向けの動画配信サービスを始めました。

つまり「GYAO!の時代から続く配信サービスとしての知名度、ユーザー数の多さ」「テレビ向け動画配信を長らく手掛けていることへの信頼性」といった点がテレビのリモコンに「U-NEXT」ボタンが搭載されている一因と言えるのではないでしょうか。

(画像は「U-NEXT」公式サイトより引用)

さらに2013年には「イオンシネマWEBスクリーン powered by U-NEXT」を開始。映画館との連携を強めていきます。

U-NEXTが新しかったのはPCやスマホなどでのマルチデバイス配信「だけ」ではなく、テレビ向けの動画配信に極めて早い段階から乗り出していたこと。また映画館との連携も強めていたことではないでしょうか。

2007年にGyaO NEXTが立ち上げられた当時、時代はまだ3G回線であり、利用されている端末もガラケーが主流でした。3G回線で動画配信をリッチに楽しむのは難しい時代だったでしょう。

この時代に「テレビ向け動画配信」としてサービスが拡大した上で、4Gが普及した2012年にマルチデバイス配信に乗り出したことで「テレビ」「スマホ」「PC」など様々な視聴デバイスを自然と確保できていたことがU-NEXTの強みと言えるかもしれません。

USENの「光ファイバー」を活用した動画配信サービスの強み

余談ですが、宇野康秀氏の先代、元忠氏(故人)は全国の電柱に同軸ケーブルを無断で張り巡らせ、有線放送を実施するという強烈な個性と先進性を持ち合わせていた人物として知られています。

電柱の不正使用問題を2代目である宇野康秀氏は、早期に解決することに成功。2001年には正式に手にした有線ネットワークと光ファイバーを組み合わせることで、USENはブロードバンド事業に進出。

GYAO!はブロードバンドと動画配信の組み合わせをいち早く実現していた点にも、先進性がありました。そうした先進性は今日のU-NEXTにも引き継がれていると言えるでしょう。

国内のVODの「伸び悩み」の歴史とU-NEXTの現在

いまでこそVODは日本でも多くの人に利用されていますが、日本で最初に始まったSVOD(サブスクリプション型ビデオ・オン・デマンド)サービスは、「Hulu」。日本では2011年にサービス提供が開始されました。

しかし、日本ではなかなか利用者を増やすことができず、2014年に日本テレビに買収され、弾みに。利用者を延ばしていきましたが、それでも伸び悩みは続き、ディズニープラスとのセットプランの提供を行うなど、打開策を模索しているようにも見えます。

さらにドコモが2011年にスタートした「dビデオ」は、当初エイベックスがドコモの協業サービスである「BeeTV」のコンテンツも視聴できるのが売りでしたが、その後ドコモの映像配信はdTVやLeminoへと移り変わっていきます。

一方、こうした厳しい市場環境の中でも、U-NEXTは成人向けコンテンツや格闘技の中継、サッカー・プレミアリーグの配信開始などラインナップの独自性を強めています。

(画像は「Hulu」公式サイトより引用)

また通信業界と放送業界の相互参入が進展する中で、U-NEXTはParaviの統合によって放送業界との繋がりも一層含めています。00年代に夢見られた「通信と放送の融合」を高いレベルで実現している国内サービスの雄として、U-NEXTの今後にも目が離せません。

※サムネイル画像は(Image:「U-NEXT」プレスリリースより引用)

オトナライフ編集部
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