厚生労働省は、副業・兼業の規定例を盛り込んだ「モデル就業規則」を2018年に発表している。それまでのモデル就業規則では「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」と禁止トーンの条項を定めていたが、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」と、副業を容認する表現に変わった。改正から3年が経ったが、副業の普及は肌で感じるが、一方でいろいろな理由で副業を禁止する企業もまだまだある。その理由とは何なのか。
パーソル総合研究所による、企業の“副業”に関する調査結果を紹介しよう。
企業における副業の容認割合は、3年で微量にアップ
まずは、副業の容認割合の変化を見ていこう。2018年の調査では、「全面容認」14.4%、「条件付き容認」36.8%、「全面禁止」48.8%。2021年の本調査では、「全面容認」23.7%、「条件付き容認」31.3%、「全面禁止」45.1%となった。容認を示す「全面容認」と「条件付き容認」を含めた割合は3.8%アップ。全面容認も10%近くアップし、副業を一般的なものとして受け入れている企業が増加したようにみえる。
ちなみに、副業を容認する理由(1~3位選択)として、第1位「従業員の収入補填のため」34.3%、第2位「禁止するべきものではない」26.9%、第3位「個人の自由」26.2%が並んだ。10位内の増加数トップ3は、第2位「禁止するべきものではない」26.9%(5.6%アップ)、第6位「優秀な人材の定着」18.9%(3.5%アップ)、第8位「優秀な人材の確保」16.5%(3.3%アップ)。優秀な人材を確保・定着するために、改正された就業規則をうまく利用している企業もあるようだ。その一方で、全面禁止をしている企業は半分近い。時代遅れに感じるのはいなめないが、その理由は一体何なのだろうか。
副業を禁止する理由(1~3位選択)は、第3位「従業員の過重労働につながる」39.7%。第2位「疲労による業務効率の低下が懸念される」42.1%、第1位「自社の業務に専念してもらいたい」49.7%。この結果を見ると、従業員を信頼していないように感じてしまうが、この理由もわからないことはない。実際に問題になっていることに加え、ドラマや映画などで、副業のせいで様々な問題が巻き起こるストーリーを見かけることもあり、脳裏に焼き付いている人もいるのだろう。一方で、「自分も副業しているけど、無理はしていない」「副業してもいいけど、本業に支障をきたしてはいけない」といったネットの声を見かけるため、副業への理解をしっかり持つ人も増えている印象だ。
このように、副業が一般的なものとなりつつある今、ランキング結果を見なおすと、「業務時間外も会社のことを第一に考えろ」と言われているようでもあり、さすがにそれは時代錯誤と言わざるを得ないのではないだろうか。さらに、副業を容認する理由にある、「優秀な人材の確保・定着」からすれば、副業していても優秀な人材によって会社の利益をアップする方が得策な気がする。時代の波に乗って、それを活かすことができる企業が、今後成長していく見込みがありそうだ。
しかし、どれだけ優秀であっても、本業に迷惑をかけてしまうことはまずい。副業を始めるときは、しっかり準備して、自分の能力に見合った仕事を選ぶべし。
出典元:第二回 副業の実態・意識に関する定量調査【パーソル総合研究所】