「povo2.0」の基本料0円と、楽天モバイルの1GBまで0円は何が違うの?

楽天モバイルが“月1GBまで0円廃止”を発表してから、にわかに注目されたのが基本料0円の「povo2.0(ポヴォ)」だ。でも、楽天モバイルの0円とpovo2.0の0円って何がどう違うのだろうか? そこで今回は、楽天モバイルの月1GBまで0円とpovo2.0の基本料0円は、何がどう違うのか解説したいと思う。

楽天モバイルとpovo2.0って何がどう違う?

楽天モバイルが2022年6月末で月1GBまで0円プランを廃止すると発表した。2022年7月1日から楽天モバイルのユーザーは自動的に新プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」に移行され、最低でも月3GBまで月額1,078円を支払うことになる。

ただし、月1GBまでの人は2022年7月~8月までは0円で運用でき、9月~10月までは1,078ptがポイント還元されるので、タイムリミットは実質10月までとも言える。

7月からの「Rakuten UN-LIMIT VII」新プラン

これまで月1GBまでは0円だった楽天モバイル。7月からは月3GBまで月額1,078円の新プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」に移行される(画像は楽天グループ「2022年度第1四半期決算説明会CEOグループ戦略」より転載)

●楽天モバイル(公式)→こちら

もちろん、これまで楽天モバイルで0円運用していた人の多くは、すでに解約したり他社に乗り換えたと思うが、移転先の有力候補として注目を集めているのが、auの格安プラン「povo2.0(ポヴォ)」だ。

povo2.0は基本料0円で、自分に合ったデータトッピング(データ量)を追加するスタイル。180日に一度は何かしらのトッピングを追加する必要があるが、実質年間440円で運用できるため、楽天モバイルで0円運用してきた人にとってはピッタリの乗り換え先なのだ。

それにしても、楽天モバイルとpovo2.0はいずれも0円プランだが、具体的には何がどう違うのだろうか? 疑問に思っている人もいると思うので、今回はこの2社の違いについて解説したいと思う。

●povo2.0(公式)→こちら

povo2.0

厳密には年間440円支払う必要があるが、povo2.0も0円運用が可能な格安スマホプラン。自分で必要なデータ量を追加するシステムになっている(画像は「povo2.0」公式サイトより転載)

どうして楽天モバイルは月1GBまで0円プランを廃止したのか?

そもそも、楽天モバイルはどうしてこのタイミングで、月1GBまで0円プランを廃止したのだろうか? 

楽天モバイルは、もともと格安SIM(MVNO)の楽天モバイル(ドコモ回線等)を提供しており、この顧客がすでに230万にいた。そのため、楽天モバイルがキャリア事業(MNO)を開始すれば、すぐに300万人は達成できると思われていたが、そうはいかなかった。

そこで、楽天モバイルは新規加入で2万5,000pt付与、1年間無料といった大盤振る舞いを実施。2021年4月からは月1GBまで0円の「Rakuten UN-LIMIT VI」を投入した。その後は順調に加入者を増やし、2021年8月には500万回線を突発している(MVNO契約者を含む)。

また、楽天モバイルは当初基地局が少なく、パートナー回線(au回線)のローミングに頼っていた。もちろん、2022年4月時点では4万4,000局超、人口カバー率は97.2%に到達しており、パートナー回線のローミングもほとんど終了している。

しかし、今後も4Gの人口カバー率を99.9%に近づける必要があるし、高速5G回線基地局の建設など、費用は増すばかり。

ちなみに、楽天グループ2022年度第1四半期決算説明会CEOグループ戦略資料によると、2022年3月末時点で無料キャンペーン対象者が課金ユーザーに転換した割合は75%程度となっている。

今後、0円プランを終了することで、このお金を使わない約15%のユーザーを切り捨て、2022年6月末には100%が課金対象になると見込んでいるのだ。

もちろん、0円運用ユーザーはお金を使わないどころか維持管理費用がムダにかかるだけで、まったくのお荷物となっている。できるだけ早く切り捨てたいのは当然のことだろう。

●楽天モバイル「楽天グループ2022年度第1四半期決算説明会CEOグループ戦略」→こちら(PDF)

2022年3月末時点で無料キャンペーン対象者が課金ユーザーに転換した割合

楽天モバイルの資料によると、2022年3月末時点で無料キャンペーン対象者が課金ユーザーに転換した割合は15%程度、2022年6月末には100%が課金対象になると見込んでいる(画像は楽天グループ「2022年度第1四半期決算説明会CEOグループ戦略」より転載)

一方、auの格安スマホプラン「povo1.0」は、ドコモがahamoを投入したことに対抗して、急遽2021年3月に投入された。

当初は、月20GBで月額2,728円というライバルと同じようなプランだったが、2021年9月には現行の「povo2.0」にプラン内容を変更。基本料0円でデータ通信料やかけ放題はトッピングになっており、自分で自由に追加できるようになった。

ちなみに、povo2.0でデータトッピングをしないと128kbpsという超低速になり、電話やメールは使えるが、基本的にWebサイトすら満足に見ることはできない。もし、メイン回線として使うなら必ずデータトッピングを購入することになるだろう。

また、基本料0円とはいえ、povo2.0は180日間以上まったく利用がないと契約を解除されてしまう場合がある。これをクリアするには、何かしらのトッピングを購入するか、通話料やSMS送信料の支払いが660円以上あればいい。

このようにpovo2.0は、楽天モバイルのように完全に0円で高速回線を維持できるわけではなく、多少なりともお金を払わないと回線を維持できない点が大きく異なる。povo2.0で年間数百円しか使わない人もいるだろうが、数十万人単位になればその差は無視できないだろう。

もし、povo2.0についてさらに詳しく知りたい場合は、povo2.0のメリットとデメリットをまとめてあるこちらの記事を確認してほしい。

ちなみに、povo2.0ではデータトッピングを購入しなくても、データ通信料をもらえる「#ギガ活」というサービスがあるのがユニークだ。

たとえば、ローソンにおいて1回500円以上の買い物をau PAYで支払うと、300MB(3日間有効)をもらうこともできるので、筆者も2日おきにローソンで商品を買っては300MBをタダで利用している。

#ギガ活

#ギガ活では買い物などでデータ通信量がもらえる。メールで送られてきたプロモード欄を張り付けて「利用する」をタップすれば(左写真)、3日間高速データ通信がタダで利用可能となる(右写真)

povo2.0はこのまま基本料0円を続けられるのか?

楽天モバイルとpovo2.0。この両社が決定的に違うのは、まず、インフラ面だ。すでに通信網が完成しているKDDI(au)に対し、楽天モバイルはまだまだこれからインフラ整備にお金がかかる。

次に、楽天モバイルはキャリア(MNO)として、全国に実店舗を設置する費用もかかるが、povo2.0はネット専用プランなので維持コストも大きく異なる。

また、楽天モバイルはすでにローミングを打ち切っているとはいえ、実際には東京都内でもau回線につながる場所もあるため、その費用の支払いが結構重いようだ。もちろん、povo2.0にそのような費用負担はない。

そのようなpovo2.0だが、この先も基本料0円を維持できるかと言われれば多少の不安要素もある。たとえば、KDDIの「2022年3月期決算」資料でマルチブランドARPUの推移を確認すると、グループID数は急激に伸びており付加価値ARPUも上がっているが、通信ARPUの収入は下がっている。

この後、さらに楽天モバイルで0円運用していた“お金を使わないユーザー”が大量に流入してくるわけで、その乗り換え費用や回線維持コストは決して馬鹿にならないだろう。

●KDDI「2022年3月期決算」→こちら(PDF)

KDDIの「2022年3月期決算」資料

こちらはKDDIの「2022年3月期決算」資料。マルチブランドARPUの推移では、グループID数と付加価値ARPUが伸びているが、通信ARPUの収入は下がっているのが分かる(画像はKDDI「2022年3月期決算」より転載)

まとめ

いかがだろうか? 楽天モバイルが顧客獲得のための大出血サービスとして高速回線の“1GB以下0円”を行っていたのに対し、povo2.0では超低速128Kbpsを基本としたプランを0円で提供しているのが大きな違いだ。

しかも、povo2.0はKDDI(au)の回線を使っているためインフラ整備のための出費がなく、運営コストもかなり安いことがお分かりいただけただろう。

もちろん、今後、楽天モバイルからお金を使わないユーザーが大量に流入すれば、コストがかさみ「やっぱり基本料0円やめます!」と発表する可能性もゼロではないが、しばらくはこのプランを継続すると思われる。

なお、今後楽天モバイルからpovo2.0に乗り換えたいと思った人は、実際に筆者が乗り換えたときの記事を参考にしてほしい。

すずきあきら
編集・ライター。パソコン通信時代からネットワークに接しWi-Fiやインターネット、SNSなどに精通。30年に渡って、パソコンやスマホ関連のムック本や雑誌記事を手がけてきた大ベテラン。最近は格安SIMなどのケータイ料金やアプリ、通信費全般の記事を執筆することが多い。

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