国内の多数のPCが、コンピュータウイルスに感染している可能性があるようだ。海外捜査当局から情報提供があったといい、感染が疑われるPCのユーザーにはプロバイダから注意喚起のメールが届くという。このウイルスは「Emotet(エモテット)」と呼ばれる種類のもので、これまでに世界中で被害の報告が相次いでいる。過去には日本国内の大学でも被害が確認された。
今回は、そんな注意すべきコンピュータウイルスの情報や、今後出てくるかもしれないこの注意喚起に便乗した新たなリスクについて考えていきたい。
国内で2万件以上の被害報告?
現在注意が促されているエモテットは、海外の捜査当局から「国内のIPアドレス約2万6,000件の感染が確認された」という情報が寄せられ、警察庁が自身の調査でその情報がほぼ正確であることを改めて確認したとしている。
エモテットとは、主にメールによって感染が広がるタイプのウイルス。メールの添付ファイルや、本文にあるリンク先でダウンロードされるファイルから感染することが多いという。感染するとユーザーの意思とは関係なく、PCにある情報を盗み取ったりそのPCからさらに別のPCへと感染を広げようとしたりする。2019年11月には首都大学東京でも被害が報告され、2万件近い送受信メールの情報が盗み取られる事態となった。その際も、被害にあったアドレスに実在する雑誌社の名前を騙ったメールが送られてきて、添付ファイルを開いたことでウイルスに感染。被害につながったとされている。
今回の情報提供を受けた警察庁は総務省等と連携しながら、報告に含まれていた被害ユーザーに対してプロバイダ各社から注意喚起のメールを送りはじめている。注意喚起を受けたユーザーは、総務省が設置する「NOTICEサポートセンター」のHPで示されている対応を行うように案内されることになるだろう。
しかしここで気がかりになってくるのは、“注意喚起メールを騙った偽のサイトに誘導されてしまう”二次被害の可能性だ。プロバイダ(を騙る悪意あるユーザー)から「あなたのPCがウイルスに感染しているおそれがあります。至急下記HPをご確認ください」というメールが届いたとしたら、完全に無視できる人がどれだけいるだろうか。そこから悪意あるファイルをダウンロードしてしまったり、金融機関等のアカウント名・パスワードの情報を入力させる「フィッシング詐欺」の被害にあってしまったりする可能性もゼロとは言えない。今後は緊急性があるように装ったメールにも注意が必要となってきそうだ。
フィッシング対策協議会によれば、2021年1月に同協議会に寄せられたフィッシング報告の件数は43,972 件。前月より11,801件増加しているという。近年増加の一途をたどっており、報告分だけでこの件数となると実情はさらに多いことが予想される。
ウイルス感染もフィッシング詐欺も、もはや誰にとっても無縁ではないものだ。被害にあわないよう、日頃のPCでも意識を高めていってもらいたい。
参照元:国内PC2万6千件、「エモテット」感染か 注意喚起へ【朝日新聞デジタル】