現在、キャリア各社がユーザー確保にしのぎを削る、スマートフォンの契約シェア争い。この1年ほどでも、政府の要請を受けて各社が提示した「新プラン」でより魅力的なプランを競い合っていたことは記憶に新しい。そのようなシェア争いの結果を示す数字が、総務省から発表された。
今回は、スマホキャリア4社の現在の業界シェアとその推移、さらにはこれからの動向についても考えていきたい。
ドコモが業界最大手の座を堅守
総務省は6月17日、「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(令和3年度第4四半期(3月末))」を公表した。その中の「移動系通信の契約数における事業者別シェア」によれば、ドコモのシェアは36.3%(ドコモ系MVNOを含めると41.7%)、KDDIは27.1%(MVNO含め30.5%)、ソフトバンク21.1%(MVNO含め25.4%)、楽天モバイルは2.4%となった。
やはり業界最大手はドコモであり、2位のKDDIと10ポイント近い差をつけている断トツぶりだ。一方で、キャリア4社のうち最下位となった楽天モバイルは、2.4%と他キャリアとの差はまだ大きい。
しかし2021年3月の同調査では、楽天モバイルのシェアは1.5%であり、そこから四半期ごとの調査で1.9%→2.1%→2.2%と、着実に成長してきたうえでの今回の2.4%なのだ。ドコモ36.9%(2021年3月)→36.3%(2022年3月)、KDDI27.1%(2021年3月)→27.1%(2022年3月)、ソフトバンク21.1%(2021年3月)→21.1%(2022年3月)と、他キャリアがシェア率を下げるか現状維持に留まっている中での成長は見事と言ってもいいだろう。
楽天モバイルの急拡大ぶりは、「無料」の大盤振る舞いの影響を抜きには語れないだろう。2020年の新規参入直後から300万人限定で「プラン料金1年無料」のキャンペーンを実施。業界唯一の従量制プランである「Rakuten UN-LIMIT VI」でも「データ使用量1GBまで0円」を設定し、お得に敏感なユーザーやサブ回線としての需要を取り込んでいった。
しかし、楽天モバイルは5月に「Rakuten UN-LIMIT VII」を発表。これまで0円だった「0~3GB」の範囲も税込1,078円と設定され、一番の強みであった無料の終了が伝えられた。「無料終了」のニュースは大々的に報じられ、ネット上でも注目を集めていた。
そして世間の反応を見る限り、楽天モバイルの無料終了によって、少なくない数のユーザーが他のキャリアやMVNOに流出したとみられている。「基本使用料0円」のKDDIの新プラン「povo2.0」には発表直後から多くのユーザーが殺到。一時は、本人確認業務がパンクするほどの申込みが続き、申込数が前月比2.5倍に膨れ上がったことも明らかになっている。また、LINEMOのミニプランも、使用料と同額の「PayPayポイント」の還元によって“実質無料”となるキャンペーンを実施し好評を博しているようだ。
はたして今回の一件で、どれだけのユーザーが楽天モバイルから流出することになるのだろうか。目覚ましい成長を遂げた2021年の勢いを削ぐことになっていないといいのだが…。総務省の次回発表からも目が離せない。
出典元:電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(令和3年度第4四半期(3月末))【総務省】
※サムネイル画像(Image:筆者撮影)