ここ数カ月、携帯通信業界のシェアが大きく揺れている。各社が利用料金の基本無料・実質無料キャンペーンなどを武器にユーザーの確保に奔走していることは多くの人がご存じのことだろう。そのような“戦国時代”へと業界を一変させたのは、やはり楽天モバイルの“0円廃止”に他ならない。今回は、そのような業界の変化の考察についてお伝えしていきたい。
“0円廃止”による楽天モバイルユーザーの意向は?
スマートフォン・IT分野のマーケティングリサーチ会社であるMMD研究所は7月22日、「『楽天モバイル0円廃止』による通信業界の影響と今後」と題したコラムを発表。同社がこれまで発表してきたデータを基に、楽天モバイルの“0円廃止”のもたらした変化と、これからの動向についての予測を伝えている。
6月に実施・発表された「楽天モバイル0円廃止発表後の実態調査」からは、楽天モバイルの利用スタンスがメイン利用かサブ利用かで、継続利用の意向の割合が大きく変化することが明らかとなっている。メイン利用者では「継続」意向がおよそ3人に2人だったのに対し、サブ利用者では3人に1人を少し上回る程度と、ほぼ半減する結果となった。やはりサブで利用しているユーザーは、メイン利用に比べて「他社乗換え」や「解約」の意向が多いのだ。
これは、メイン利用者ではデータ使用量が「2GB~20GB」が35.1%、「21GB以上」9.9%と、既存のプランでも有料の範囲で利用していた人が多いことも影響しているだろう。“0円廃止”が大きく伝えられる楽天モバイルだが、実はこれはプラン全体が値上げされているわけではなく、これまで0円だった0GB~1GBの料金設定が3GBまでの料金設定に吸収されただけ。つまり0GB~1GBのユーザー以外にとっては、プラン料金はなにも変わらない話なのだ。
それを証明するかのように、サブ利用者の中でも有料利用者は継続意向が「49.1%」と、サブ利用者全体と比べて高い数値を記録している。
また、楽天モバイルの特徴は“0円”プランと合わせて「楽天経済圏に属していること」も挙げられるだろう。経済圏の中では各種キャンペーンの還元がポイントで戻ってくることも多く、ポイントを受け取るため楽天ポイントに登録している、という人も一定数存在するのではないだろうか。
なお、同社の調査では「『楽天経済圏を最も意識しているユーザー』の利用する携帯通信会社」のランキングで「楽天モバイル」が20.5%で1位。「ドコモ」も20.0%で僅差の2位、3位は「au」の14.7%となった。この結果から言えるのは、楽天経済圏は楽天モバイルに限らず、さまざまなキャリアのユーザーが利用しているということだ。
日頃から楽天ポイントとTポイントは意識していなくても「ポイントカードはお持ちですか?」と聞かれることも少なくない。それだけ世の中に浸透している共通ポイントと言っても過言ではないだろう。そうしたフックからユーザーを楽天経済圏全体へと導くことができれば、楽天モバイルも失ったシェアを回復し、さらに拡大させていくことができるかもしれない。今後の楽天モバイルにも要注目だ。
出典元:「楽天モバイル0円廃止」による通信業界の影響と今後【MMD研究所】
※サムネイル画像(画像は一部編集部で加工しています)