総務省の最新報告書で判明!「SIMロックの原則禁止」と「キャリアメールの持ち運び」が実現する?

アナタは、総務省が携帯電話事業者間の乗り換えの円滑化への取り組みを検討する有識者会議「スイッチング円滑化タスクフォース」を定期的に開催しているのをご存じだろうか? 2021年5月24日の最新報告書によれば「SIMロックの原則禁止」「eSIMの導入推進」「キャリアメールの持ち運び実現」「MNP手続きのワンストップ化」などを推進していく方針が決まったようなのだ。果たして、スマホは今後どうなっていくのか? 今回は総務省の最新報告書で見えてきたスマホの近未来を占ってみる。

SIMロック原則禁止、キャリアメール持ち運びも可能に!?

 2021年春、菅政権によるスマホ料金プランの値下げ要求により、ドコモの「ahamo(アハモ)」、auの「povo(ポヴォ)」、ソフトバンクの「LINEMO(ラインモ)」など、大手キャリアはこれまでよりも劇的に安い新料金プランを発表することになった。この機会にスマホのキャリアを乗り換えた人も多いのでは? 
 だが、電話番号を変えずにキャリアを乗り換えるには、MNP(携帯電話ポータビリティ)の予約番号を取得したり、今使っているスマホのSIMロックを解除するなど、面倒な作業を伴う。もちろん、ネット申し込みのスキルも必要だ。そのため、面倒くさがり屋のおじさんや高齢者などは、今までどおり高額なスマホ料金を払い続けていることだろう。結局は、デジタルネイティブな若者だけが得をしているのである。
 実は、総務省では携帯電話事業者間(キャリア)の乗り換えの円滑化への取り組みを検討するための有識者会議「スイッチング円滑化タスクフォース」を定期的に開催しており、このような問題を解決する方策を打ち出している。2021年5月24日の第7回報告書によれば、「SIMロックの原則禁止」「eSIMの導入推進」「キャリアメールの持ち運び実現」「MNP手続きのワンストップ化」などを推進していくことになったそうだが、今後、スマホはどうなっていくのだろうか?

■総務省「スイッチング円滑化タスクフォース」(第7回)報告書の要点

【1】eSIMの促進
→2021年夏頃を目途に導入する
→eKYCによる本人確認でセキュリティを確保する

【2】SIMロック解除の一層の推進
→SIMロックは一律に禁止されるべき

【3】キャリアメールの持ち運びの実現に向けた検討
→2021年中を目途に速やかに実現することが適当である

【4】MNPの手続きの更なる円滑化に向けた検討
→今後2年以内をめどにワンストップ化が実現できるよう、課題の解決に向けて取り組むことが適当である

(Image:soumu.go.jp)

総務省では携帯電話事業者間の乗り換えの円滑化への取り組みを検討するための「スイッチング円滑化タスクフォース」を定期的に開催している。ここで話し合われた内容が将来の携帯電話に大きな影響を与えることは間違いない

「eSIM(イーシム)」とは、物理SIMカードを差し替えなくても、スマホ本体内蔵チップのデータを書き換えることでキャリアの乗り換えがスムーズにできる便利なシステム。日本でもすでにeSIM対応スマホは発売されており、楽天モバイルや格安SIMのIIJmioなどが対応している。auやソフトバンクも一部サービスを開始しているが、ドコモは対応表明のみで提供はまだだ。また、大手3キャリアが格安SIM(MVNO)に対してeSIMの機能を開放しておらず、多くの格安SIMがeSIMを提供できないでいるという。実際にeSIMがどんなものなのか知りたい人は→こちらで確認してほしい。
 もちろん、eSIMはネットリテラシーの高い人しか利用できないが、携帯電話事業者間の乗り換えの円滑化を促進するには必須の技術であり、新型コロナウイルス収束後は海外旅行者などの利便性向上の観点からも、2021年夏頃を目途に導入することが適当としている。なお、eSIMでのキャリア乗り換えについては、本人確認はeKYCを利用することが適当であるとしている。eKYCについては→こちらを参照してほしい。

こちらは楽天モバイルの物理SIMカード。物理SIMカードは、申し込みからSIMカードが届くのに数日間は待つ必要があるが、eSIMなら申し込みの数分後には乗り換えが完了する

キャリアのSIMロックは一律に禁止されるべき!

「SIMロック」とは、特定のキャリアのSIMカードが差し込まれたときだけ動作するようにスマホを制限すること。これに対し「SIMロックをしていない」あるいは「SIMロックを解除した」スマホを「SIMフリー」という。
 SIMロックをする理由は、割引販売や分割購入されたスマホを転売させないなど、不適切な行為を防止する目的があるが、購入者の権利を不当に制限しているほか、キャリアの乗り換えを阻害しているのは間違いない。すでに、楽天モバイルはSIMフリーでスマホを販売しているし、ドコモも一括払いやクレカでの購入ならSIMロックを解除してスマホを渡すようにしているが、auとソフトバンクは購入者の申し出がない場合はSIMロックされた状態で渡しているという。
 そのため、少なくとも一括購入やクレカ払いの場合は、一律にSIMロックは禁止されるべきであるとしている。そもそも、SIMロックは、電話回線とスマホを分離して販売するという「改正事業法」の趣旨にもそぐわないので、今後は一律禁止されることになるだろう。

日本では長らく2年の長期契約でスマホが0円になるような販売方式が採用されてきた。「SIMロック」はまさに抱き合わせ商法の名残であり、今後は原則禁止される方向である

キャリアメールの持ち運びは2021年中に実現される?!

 ahamoやpovo、LINEMOでは、それまで大手キャリアで利用していたキャリアメール(ドコモなら@docomo.ne.jp)が利用できないことから、乗り換えを断念した人が20%ほどいたそうだ。これでは、携帯電話事業者間の乗り換えの円滑化が阻害されるため、キャリアメールの持ち運びの実現に向けた検討も行われている。キャリアメールの持ち運びの方式に関しては検討中だが、2021年中を目途に速やかに実現することが適当であるとしている。ただし、キャリアメールの持ち運びに関しては、コストがかかることから有料サービスになる可能性もあるようだ。

(Image:docomo.ne.jp)

3大キャリアが提供するキャリアメールはahamo、povo、LINEMOでは利用できないため、乗り換えを断念する人もいる。そのため「キャリアメールの持ち運び」が検討されているのだ
(写真はドコモの公式サイトより)

 今使っている電話番号のままキャリアを乗り換える「MNP(携帯電話番号ポータビリティ)」は、携帯電話事業者間の乗り換えの円滑化で外せないシステムである。だが、実際にキャリアを乗り換えるには、まず現在のキャリアでMNP予約番号を取得し、乗り換え先で予約番号を提示する2手順(ツーストップ方式)が主流となっており、利用者にとってはやや分かりにくい。もちろん、一部ではすでに乗り換え先で申請すれば1回の作業で乗り換えができる(ワンストップ方式)も利用できるため、今後2年以内をめどにワンストップ化が実現できるよう、課題の解決に向けて取り組むことが適当であるとしている。
 とはいえ現状では格安SIM業者の一部がワンストップ化に対応するのが困難である、そのため、新たなシステムの構築が必要になり、当面はツーストップ方式も併存することになりそうだ。

(Image:soumu.go.jp)

ツーストップ方式はMNP予約番号を取得し、乗り換え先に提出する2手順となる(上写真)。ワンストップ方式は乗り換え先だけで手続きができる(下写真)

スマホのSIMフリー化でも残る周波数問題とは?

 いかがだろうか? 総務省「スイッチング円滑化タスクフォース」の報告書を読めば何となくスマホの近未来が読み取れるだろう。だが、ネットでは総務省がやることはピントがズレていると否定的な意見も多いのだ。
 たとえば、キャリアで販売されるAndroidスマホは、利用できる周波数帯(バンド)がそのキャリアのものに限定されていることが多い。これでは、同じ品名のスマホであってもSIMフリー版とキャリア版では利用できる周波数帯がそれぞれで異なるため、SIMフリーであっても他キャリアのSIMカードでは電波が掴みづらいという問題が残されてしまうのだ。
 そこで、キャリア専用端末の禁止や、キャリアは電話回線(SIM)だけ、スマホは家電量販店などでSIMフリー版を買えるようにすればいいという意見も見られた。しかし、そうなって困るのは格安SIMやahamoなどに見向きもしないアナログな人たちである。やはり、彼らにとっては料金が高くても店頭ですべてやってもらえるドコモショップの安心感が必要なのである。

●総務省「スイッチング円滑化タスクフォース(第7回)」(公式)は→こちら

文=すずきあきら/編集・ライター

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