離れて暮らす親にスマホをプレゼントするときの注意点、実はガラケーとスマホの2台持ちがおすすめ!

日本国内のスマホ所有率は年々増加しており、徐々にシニア世代にもスマホが普及しているが、頑なにガラケーを使い続けている親も多い。とくに、田舎に住む親がスマホを持ってくれると、電話やメール、FAXではなく、LINEで手軽に連絡が取れるので、子どもにとっても都合がいいはずだ。もちろん、親が何歳かにもよるが、スマホデビューを子どもが後押しするのは悪くないことだろう。そこで今回は、田舎に住む70歳前後の親のスマホデビューを成功させるポイントと実践テクニックを紹介するぞ。

高齢の親にスマホを持たせるにはどうすればいいか?

 ある日突然、筆者の70歳になる母親が「最近友だちがみんなスマホに変えた」「周りがみんなLINEで連絡を取っている」「撮った写真を友だちと共有したい」と言い始めた。誰しも自分の親がガラケーからスマホへの移行に積極的なら、何とか後押ししてあげたいと思うだろう。もちろん、子ども側も親がスマホを持ってくれると、LINEで手軽に連絡を取り合えるので何かとありがたいはずだ。

 総務省の令和2年の「通信利用動向調査」によれば、80歳代のスマホ所有率は11%、70歳代で38.3%、60歳代になると67.4%になるという。60歳〜70歳と70歳〜80歳ではデジタル機器への馴染み具合が大きく異なることが伺えるが、もし、自分の親が60歳後半〜70歳前半なら、なんとかガラケーからスマホに移行させることができるかもしれない。そこで筆者は、どうすれば田舎の親がガラケーからスマホにスムーズに乗り換えられるのか必死で考えた。今回は、その結果を報告しよう。

周囲がスマホを使い始めると、自分も欲しくなるのは当然だろう。高齢者と言っても60歳〜70歳くらいのシニア世代なら、若い時に会社でパソコンを使いこなしていた人も多いはずだ

結局、ガラケーとスマホの2台持ちさせることに!

 そもそもガラケーは3G携帯電話である。ドコモでは「FOMA」音声プランおよび「iモード」は、2019年9月30日に新規受付を終了しており、2026年3月31日には完全に3Gのサービスが終了される予定だ。ソフトバンクは2024年1月下旬、auにいたっては2022年4月1日には3Gサービスを終了してしまう。いずれせよ、高齢者のガラケーは数年後には使えなくなるのである。これは大問題だ!

 ということで、筆者は田舎の親にガラケーからスマホにスムーズに移行させる方法はないか必死で考えた。高齢者のなかには、スマホに乗り換えたのはいいものの結局使いこなせず、ガラケーに戻したいと言い出す人も多いと聞く。しかし、ガラケーのプランを一旦解約してしまうと再契約はできないので、万一のことを考えればガラケーの契約を残したままにすべきだろう。幸い、筆者の場合は弟が親と同居しているので、操作が分からないときは弟が対応してくれるはず……。

 そこでひらめいたのが「ガラケーとスマホの2台持ち作戦」である。新規で別にスマホを契約すれば、電話とメールは使い慣れたガラケーを使えるので安心だし、少しずつスマホに慣れたところでガラケーを止めればいい。これで親も子もストレスなくスマホに移行できるはずだ。

いきなりガラケーを止めてスマホに乗り換えると、高齢の親は電話やメールさえまともにできなくなる恐れがある。ガラケーの契約を残しておけば親も安心だろう

田舎の親に渡すスマホの通信回線はドコモ一択!

 意を決して実行することにした「ガラケーとスマホの2台持ち作戦」だが、ここで重要になるのは、子どもが親に買ってあげるスマホとSIMカードをどこで契約するかだ。最近は驚くほど安い格安SIM会社がたくさんあるので、音声通話付きの月1〜3GBのプランなら月額利用料1,000円以下で契約できる。毎月、数百円の出費なら親に渡すスマホ代の負担も厳しくはないだろう。具体的な格安SIMの料金について→こちらで確認してほしいが、LINEやメールをすることを考えると、さすがに月1GBでは厳しいので月3GBのプランで検討することにした。ちなみに音声通話付の月3GBプランは「HISモバイル」が月額790円、ソニー「nuroモバイル」で月額792円である。また、格安SIMではデータ通信のみのプランもあるが、LINEをするにはSIMカードがSMSに対応している必要があるので、やはり音声通話付プランのほうが無難だろう。

 次に注意したいのが通信回線である。実は、筆者の親は九州の山間部に住んでおり、auやソフトバンク回線が繋がらないことがある。格安SIMはほぼドコモ回線を選択できるので問題ないが、サブキャリアはauやソフトバンク回線しか使えないので選択肢から外れる。まして、自社回線の敷設が遅れている楽天モバイルは論外だ。

サブブランドと格安SIMの最安値料金プランを比較してみた。格安SIMなら音声通話付の月3GBプランが月額700円台という安さだ(2021年9月9日現在)。また、田舎で使うときは通信回線にも注意する必要がある

高齢の親が使いやすいスマホはズバリiPhone 8だ!

 高齢の親世代がスマホでつまずくのが操作面である。ガラケーと違って物理ボタンがないため、指が軽く液晶パネルに触れただけで画面表示が変わったり、あっちこっち触っていたらホーム画面に戻れなくなったというトラブルが多いようだ。かといって、比較的若い60歳代後半の世代は「らくらくスマホ」のような“THE シニア”スマホはちょっと恥ずかしいらしい。また、らくらくスマホはホーム画面が独特すぎて、親が操作に困っているときに子ども側も設定変更する方法がよく分からず、苦労することが多いという。

 そこで、おすすめしたいのが物理的な「ホームボタン」がある旧型のiPhoneである。そもそもiPhoneは直感的に使えるように設計されているし、とにかく“ホームボタンを押せば元に戻る”ので、シニア世代も安心して使えるに違いない。ホームボタンのあるiPhoneでは「iPhone 8」あたりがおすすめ。iOS 15へのアップデートにも対応するのでまだまだ現役だし、スマホ専門店では中古のiPhone 8が2万円程度で購入可能。また、SIMカードの契約との同時購入で中古のiPhoneが1円〜1,000円程度の激安価格で買えることも多いのだ。

 ちなみに、老眼の親には画面が大きい「iPhone 8 Plus」の方が適していると思いがちだが、そもそもガラケーの画面はかなり小さい。逆に本体が大きすぎるスマホは片手持ちができない場合もあるで、4.7インチ程度のコンパクトモデルがちょうどいいのだ。

(Image:franz12 / Shutterstock.com)

高齢の親に持たせるスマホは物理的なホームボタンがある「iPhone 8」がおすすめ。画面が大きい「iPhone 8 Plus」は本体が大きくて片手持ちができない場合も……

子どもが親のスマホの契約や設定を全部済ませて贈る!

 高齢者の親が自分で格安SIMやスマホを選んだり、ネットで購入することは難しい。買えたとしてもスマホを使えるように設定(調教)することは絶対に無理なので、ここはデジタルに強い子どもの出番となる。

 筆者はさんざん迷ったあげく、SIMカードはドコモグループの格安SIM「OCN モバイル ONE」で音声通話付の月3GBプラン「新コース」(月額990円)を選んだ。やはり、山間部に住む親に使わせるなら、通信回線の安定性やつながりやすさを最優先すべきだろう。次に、iPhone 8は「OCN モバイル ONE」でSIMカードの契約と同時に「goo Simseller」で購入すると、たった1円で購入できるキャンペーンがあったが、もたもたしている間に売り切れてしまった。そこで、仕方なく秋葉原の中古スマホ専門店「イオシス」で中古のiPhone 8を1万8,800円で購入することにした。

 数日後、筆者のもとにSIMカードとiPhone 8が到着したので、さっそくiPhone 8を使えるように調教することに。まず、SIMカードをiPhoneに挿入したら、ネット接続に必要な「APNプロファイル」を「OCN モバイル ONE」からダウンロードしてネットの開通作業を行う。詳しくは→こちらを参考にしてほしい。もちろん、メールやLINEアプリなどの設定も行っておいた。そして最後に、老眼の親のためにスマホの文字表示を拡大しておこう。iPhone 8の「設定」から「アクセシビリティ」にある「画面サイズとテキストサイズ」で変更すれば、通常よりも文字が大きくなって見やすくなる。これでiPhone 8の調教は完了だ。

契約した「OCN モバイル ONE」からSIMカードが届いた(左写真)。SIMカードをiPhone 8のSIMカードスロットにさす(右写真)。これで電話はすぐに通じるようになるが、ネット接続にはAPNプロファイルを導入する必要がある

まず、iPhone 8でWi-Fi接続できるようにして「OCN モバイル ONE アプリ」を入手(左写真)。APNプロファイルである「OCN モバイル ONE設定用構成プロファイル」の「新コース」をダウンロードする(右写真)

「設定」から「プロファイルがダウンロード済み」を選択すると、「プロファイルをインストール」画面が表示されるので「インストール」をタップ(左写真)。次にパスコードを入力したら「インストール」を押せばいい(右画面)

親向けにiPhoneの文字表示を大きくするには、「設定」の「アクセシビリティ」にある「画面サイズとテキストサイズ」から調整(左写真)。「文字を太くする」や「さらに大きな文字」をオンにして文字サイズを大きくしておこう(右写真)

 いかがだろうか? 田舎に住む高齢の親にスマホデビューさせるための注意点とポイントがお分かりいただけただろうか? 親が子どもと同居していれば、スマホの操作面での心配はいらないだろうが、もし、親が田舎で1人暮らししていた場合は、やはりガラケーとスマホの2台持ちしか選択肢はないと思う。今後、数年で3Gサービスが終了するとガラケーも使えなくなってしまうので、むしろ、今から親にスマホを持たせて、早めに慣れさせておいた方が賢明ではないだろうか。

●総務省「令和2年通信利用動向調査の結果」(PDF)は→こちら
●OCN モバイル ONE(公式)は→こちら
●goo Simseller(公式)は→こちら

文=小沢陽子/編集・ライター

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