今さら聞けない「ネット銀行」って何? メリットとデメリットを解説

アナタは「ネット銀行」の口座を持っていますか? ネット銀行はスマホでサクッと振込ができたり、普通の銀行より金利が高めで、ATMや振込手数料が無料になるといったメリットがあるので、今どきネット銀行の口座をひとつくらい持っていても損はありません。「でも、ネット銀行ってよく分からないし何となく不安……」と言う人もいるでしょう。そこで今回は、ネット銀行のメリットとデメリットについて初心者にも分かりやすく解説しましょう。

そもそも「ネット銀行」って何? 大手銀行と何が違うの?

まず、「ネット銀行」とは“実店舗を持たずインターネット上でサービスを提供する銀行”のことです。たとえば、楽天銀行、ソニー銀行、住信SBIネット銀行、PayPay銀行、auじぶん銀行、UI銀行(東京きらぼしFG)などは、実店舗をもたない「ネット専業銀行」として有名です。

また、イオン銀行、SBI新生銀行、東京スター銀行、あおぞら銀行などは実店舗もありますが、ネット専業銀行に近いサービスを提供しているので、筆者は「準ネット銀行」と呼ぶことにしています。

これらネット銀行の特徴は「ネットで口座が開設できる」「スマホで振込ができる」「通帳が発行されない」「金利が高め」「ATMや振込手数料が無料になる」といった特徴があります。

しかし、最近は大手銀行でもインターネットサービスがかなり充実してきており、新規口座開設では通帳が発行されないケースも増えています。そのため、実店舗を持っている準ネット銀行との線引きは少々難しくなっていることはご了承ください。

ネット銀行では基本的に通帳は発行されないが、スマホで入出金や残高を確認できる。もちろん、キャッシュカードは発行されることが多いが、最近はスマホでATMを操作できる「スマホATM」なども利用できる(筆者撮影)

東京スター銀行は首都圏のローカル銀行で、実店舗を31店も構えているため「ネット銀行」とは言えない。しかし、ネットサービスが充実しているので、筆者は「準ネット銀行」に分類している(筆者撮影)

ネット銀行にはさまざまなメリットがあります。まず、口座の開設を含め、基本的にすべてのサービスがスマホやパソコンで完結すること。わざわざ店舗に出向く必要がないのは楽チンです。

たとえば、通帳がなくてもスマホで入出金明細は確認できますし、スマホから代金の振り込みも簡単にできます。もちろん、キャッシュカードは発行されますので、現金が必要なときは提携しているコンビニやゆうちょ銀行のATMなどで引き出すことも可能となっています。

次に、ネット銀行では預金額や投資額、特定サービスの利用によって「ステージ」や「ランク」が上がるシステムが導入されていることが多く、それによってATMや振込手数料が無料になる回数が増える仕組みになっています。1回数百円かかる手数料が無料になるのですから、かなりお得ですね。

そして何よりも、ネット銀行では大手銀行の100~200倍もの金利を実現していることが最大のメリットとなっています。現在、大手銀行の普通預金金利は0.001%ですが、ネット銀行のなかには0.2%という驚くべき高金利を提供しているところもあります。

とはいえ、「店舗もなく馴染みのない名前のネット銀行って本当に大丈夫なの?」と不安に感じる人も多いでしょう。

でも安心してください。ネット銀行も大手銀行と同じように国の預金保険制度の対象となっていますので、万一、破綻しても、普通預金や定期預金などの一般預金であれば、元本1,000万円とその利息は保護されます。

【1】口座の開設がスマホでできる

ネット銀行の口座開設は、わざわざ実店舗に出向かなくても自宅にいながら、スマホやパソコンからできます。必要なのは「メールアドレス」と「本人確認書類」で、基本的に印鑑は不要です。

本人確認書類としては「運転免許証」「健康保険証」「マイナンバーカード」などが利用できますが、画面の指示に従ってスマホで撮影すればOKです。また、最近は自分の顔をスマホで撮影しなければならないところが多いようです。

申し込み手続きが終われば、数日後にキャッシュカードや振込用の乱数表カードなどが送られてきます。なかには自分で申し込まないとキャッシュカードが発行されない場合もありますので注意してください。

ネット銀行の口座を開設すれば、残高確認や入手金確認、振込手続きなども、すべてスマホのアプリやパソコンでできるようになります。

ネット銀行はスマホから簡単に口座開設できるのが特徴。本人確認書類もスマホで撮影してアップロードすればいい(画像はauじぶん銀行の場合)

【2】振込手数料が無料になる

通常、大手銀行から他行宛にお金を振り込むときは、1回当たり数百円の手数料がかかりますよね。でも、ネット銀行ならステージやランクによって、一定回数の他行あて振込手数料が無料となる場合があります。

たとえば、UI銀行は総預金額が10万円未満のユーザーの「ステージ1」であっても、月2回は他行宛振込手数料が無料になります。これだけでもかなりお得でしょう。さらに総預金額500万以上の「ステージ5」になれば、なんと月20回も他行宛振込手数料が無料になるのです。

UI銀行では総預金額10万円未満の「ステージ1」でも月2回、総預金額500万以上の「ステージ5」になると月20回も他行宛振込手数料が無料になる(画像はUI銀行公式サイトより転載)

【3】ATM出金手数料が無料になる

大手銀行のATMで現金を引き出すと、休日や深夜の場合は1回数百円の手数料を取られることがありますが、ネット銀行ならステージやランクによって、一定回数のATM出金手数料の無料が当たり前になっています。

たとえば、UI銀行ではセブン銀行ATMと提携していますが、総預金額が10万円未満のユーザー「ステージ1」でも、セブン銀行ATMの出金手数料が月1回は無料に。「ステージ5」なら月20回も無料になるのです。

どうしても、休日や深夜にお金を引き出すことが多い人には、とてもありがたいサービスですね!

UI銀行では総預金額10万円未満の「ステージ1」でも月1回、総預金額500万以上の「ステージ5」になると月20回も、セブン銀行ATMの出金手数料が無料になる(画像はUI銀行公式サイトより転載)

【4】銀行振込はスマホから24時間いつでもできる

代金の支払いをするために銀行振込をするときも、ネット銀行の口座を持っていれば、わざわざ遠方のATMを利用する必要はありません。スマホアプリで自宅にいながら24時間いつでも振り込むことができます。

相手の銀行には即時入金に対応している銀行であればリアルタイムで着金になります。しかも「ステージ」によっては他行宛振込手数料も毎月、数回かは無料になります。

また、同じグループの証券会社で株取引を行っている場合、「自動入出金(スイープ)機能」を設定しておけば、リアルタイムで投資資金をネット銀行から移動することができるなど、便利な機能も利用できます。

ネット銀行のアプリなら24時間いつでも銀行振込手続きができる。アプリで他行宛の振込無料回数や1日の限度額を確認することも可能だ(画像は楽天銀行アプリの場合)

【5】大手銀行より金利が100~200倍も高い!

超低金利がつづき、多くの大手銀行では、普通預金金利は、0.001%しかありません。これは100万円を預けても1年後にもらえる利息はたったの10円(税引き後は約8円)ということです。

定期預金金利も大手銀行の金利では概ね0.002%なので、こちらも100万円預けて、受け取る利息は20円(税引き後は約16円)しかないのです。

しかし、ネット銀行なら普通預金でも最大0.2%、1年定期預金なら0.3%もの高金利を実現している銀行もあります。

これは、通常の100~200倍もの高金利になりますので、もし、大手銀行に数百万円を預けているなら、今すぐネット銀行に移したほうがよいでしょう。

なお、ネット銀行の金利について詳しく知りたい人は、こちらの記事を確認してください。

あおぞら銀行 BANK支店では定期預金ではなく、普通預金の金利が年0.2%だ。これは大手銀行の実に200倍もの高金利となっている(画像はあおぞら銀行 BANK支店公式サイトより転載)

いいことずくめのネット銀行ですが、何かデメリットはないのでしょうか? 実は筆者はすでに10以上のネット銀行口座を所有していますが、普段利用している分にはほとんどデメリットを感じたことはありません。

ただし、それはスマホやパソコンの操作に慣れた人の話です。たとえば、パスワードの変更やワンタイムパスワードアプリの利用、銀行振込の口座登録や1日当たりの振り込み上限の設定など、ネットの操作に慣れていない人は少々戸惑う場面もあるでしょう。

そのようなときに、ネット銀行ではよくある質問を調べたり、チャットやメールなどで問い合わせることになりますが、やはり窓口の対面でないと不安だという人には、あまりネット銀行はおすすめできないのです。

ネット専業銀行に店舗はないので、トラブルがあったときはスマホアプリからメールやチャットなどで問い合わせすることになる(画像はソニー銀行の場合)

【1】通帳がないのが困る

ネット専業銀行ではスマホやパソコンで入出金明細が確認できるので、基本的に通帳は発行されません。

昔から通帳を利用してきた人にとっては多少抵抗感があるでしょうが、実は最近、大手銀行でも通帳は廃止されているところが多く、通帳発行手数料や長期間利用しない口座の管理手数料が発生する場合もあります。

つまり、「通帳がない」ことはネット銀行だけの問題ではなくなってきているのです。詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

ネット専業銀行で通帳は発行されないが、現在では大手銀行でも新規口座開設時に通帳は発行されないところが多い(筆者撮影)

【2】トラブル時に窓口で対面相談できない

ネット専業銀行に実店舗はありませんので、何かトラブルがあったときはチャットやメールなどで問い合わせることになります。

スマホやパソコンの操作に不慣れな人にとっては、何事もスマホで行うネット銀行は、逆に煩わしいと感じることがあるかもしれません。したがって、スマホやパソコンの操作が得意でない人にはネット専業銀行はおすすめできないのです。

どうしても「窓口で相談できないと不安」ということなら、実店舗もある「準ネット銀行」のほうがよいでしょう。たとえば、イオン銀行なら全国のイオンに窓口やATMが設置されているので安心です。

イオン銀行は全国のイオンモールなどに窓口を設けており、対面で相談することができる。また、イオン銀行ATMは全国に6,000台以上あり24時間365日利用できるのが便利だ(筆者撮影)

【3】口座開設時の本人確認が意外と難しい

ネット銀行で口座を開設するときは、不正口座を防止するために必ず本人確認をする必要があります。

本人確認システムには、スマホで身分証明書や自分の顔を撮影する「eKYC」と呼ばれるものが導入されている場合がほとんとですが、実はこのeKYCは、慣れないと意外と面倒くさいのです。eKYCに関してはこちらの記事が参考になるでしょう。

かなりスマホの操作に慣れている筆者でも、eKYCには何度も苦労させられているので、そうでない人はヘタをすると本人確認がクリアできず、口座開設を諦めてしまう人がいるかもしれません。ちなみに、筆者が過去にネット銀行口座を開設したときの手順こちらの記事で確認できます。

こちらは、キャンペーン金利が0.22%という「商工中金」のネットバンクサービス申し込み画面。実は口座を開設するときに、身分証明書と印鑑を一緒に撮影する必要があり、かなり苦労させられた。商工中金ではネットで口座を開設しても通帳が送られて来るので、準ネット銀行とも言えないのかもしれない……

まとめ

ネット銀行にはたくさんのメリットがあることがお分かりいただけたと思います。スマホやパソコンの操作が苦手でなければ、是非、ネット銀行を利用してみましょう。

ちなみに、マイナポイント第2弾では公金受取口座の登録をすることで7,500ptをもらえますが、メインで使っている大手銀行の口座を登録すると「国に自分のお金の流れを掴まれるのでは!?」と心配する人がいるようです。

もちろん、そんな心配をする必要はないのですが、どうしても気になるようならネット銀行の口座を登録してみてはいかがでしょうか? 口座残高を0円にしておけば心配無用です。

監修日:2023年1月30日

大竹麻佐子/ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所・ファイナンシャルプランナー
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での勤務を経て、2015年FP事務所開業。より豊かに自分らしく生きるためには、「お金と向き合うこと」が大切との想いから、相談・執筆・講師として活動。知識だけでない経験を踏まえたアドバイス、そしてサポートをさせていただきます。

藤原博文
編集・ライター。長年、パソコンやスマホ、サブカル関連雑誌の編集部を渡り歩いてきた編集者。個人的に株式、投資信託、FXなどの投資活動を活発に行っているほか、クレカや電子マネー、スマホ決済アプリなどのポイ活にものめり込み、最近はマネー系の記事も数多く手掛ける。

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