「ネット史上、最大の事件」とも言われている実話をもとに製作された映画『Winny』が、2023年3月10日に公開された。
天才はなぜ警察に潰されたのか。7年に渡る、権力やメディアと戦った男たちの真実に基づく物語、映画『Winny』の魅力を今日は皆さんにお伝えしたい。
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ネット史上最大の事件
禁断の実話が映画化!
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映画『#Winny』3.10公開天才は
なぜ警察に潰されたのか――。7年に渡る
権力やメディアと戦った男たちの真実に基づく物語。#松本優作 監督#東出昌大#三浦貴大#金子勇 pic.twitter.com/76eOR4Onew— 映画『Winny』全国大ヒット上映中!! (@winny_movie) January 31, 2023
Winnyって何をするもの?
読者の皆さんは、そもそも「Winny」とは何かご存じだろうか。Winnyは、2000年代前半に大きな話題となった、ファイル共有ソフトだ。もしかすると、実際に使ったことがあるという方も、中にはいらっしゃるかも知れない。
インターネットを介してWinnyをインストールしているパソコン同士が繋がることで、当時は自分の持っているファイルを公開したり、欲しいファイルの名前をWinny上で検索すればダウンロードすることも出来た。2002年のベータ版公開当時から、匿名性が高いソフトであったことも相まって、Winnyは瞬く間にそのシェアを伸ばしていったのである。
Winnyで共有可能なファイルは、映画やアニメなどの動画から、音源、画像、ゲームなど、ありとあらゆるものが対象だった。しかし、このことが著作権を無視した違法アップロードへと繋がり、次第に社会問題と化していく。Winnyを経由した機密情報や個人情報などの流出も後を絶たず、コンピューター上で予期せぬウイルスの拡散も流行。Winnyは次第に「悪のソフト」としてのレッテルを貼られてしまったのだった。
Winnyを開発した金子勇さんの人生
(画像は「Amazon」公式サイトより引用)
Winnyを開発したのは、金子勇さんというプログラマーの方である。
Winnyに応用されたPeer to Peerは、現在のブロックチェーンの先駆けとも呼べる技術だったのだが、金子さんはWinnyを開発したことで「著作権法違反幇助」の容疑がかかり、2004年に京都府警に逮捕されてしまう。若く才能あふれる金子さんの逮捕は、「殺人に使われた包丁をつくった職人は逮捕されるのか」ということを、多くの人に考えさせるきっかけとなった。
その後、7年という長い歳月をかけて、金子さんは2011年に無罪を勝ち取ったのだが、2013年に心臓の病で帰らぬ人となってしまう。
映画では「なぜ、一人の天才開発者が日本の国家組織に潰されてしまったのか」ということを軸に、開発者の未来と権利を守るために、権力やメディアと戦った男たちの真実を描いていている。
実際に映画『Winny』を鑑賞してみた!
筆者は、池袋のTOHOシネマズへ映画『Winny』を観に行ったのだが、スクリーンで見る裁判のシーンは圧巻だった。東出昌大さん演じる作中の金子勇は、どのような時にも前向きで、自分の好きなことには少年のようなキラキラとした眼差しで向き合う、非常に純粋な心をもっている。他人を疑わない一面もあり、世のソフトウェア開発者らしいどこか憎めないキャラクター設定は、見ていてとても好感が持てた。
作中では、Winnyが最初に公開された掲示板である「2ちゃんねる」の住人たちが、金子勇の無罪を応援するためにと、銀行口座に弁護士費用のお金を集めるシーンがある。拘置所での面会時に、三浦貴大さん演じる弁護士の壇俊光が、金子勇への激励メッセージを込めた通帳をガラス越しに見せるシーンは、涙腺にぐっと来るものがあった。
また、映像内では実際のWinnyの画面が細かく再現されているのも、見どころのひとつかも知れない。ほんの1秒ほどだったが、Winnyのダウンロードファイル一覧に、平井堅の『大きな古時計』が入っていたのは、「あの頃」を思い出してなんとも言えない懐かしい気持ちになった。
映画『Winny』は、実話を元にした作品なので、当時を知る人も知らない人も存分に楽しめるのではないだろうか。一人一台スマホを持つのが当たり前となった令和の今、インターネットが各家庭にようやく普及し、定額常時接続が浸透し始めた20年前に、一体どのようなことがあったのかを知るというのは、若い世代にとっても大きな価値があるはずだ。
大学時代、シネマ研究会に所属するほどに映画好きな筆者としては、久しぶりに面白いと思える邦画だった。気になる方は、ぜひ映画館に足を運んでみてはいかがだろうか。
※サムネイル画像は(Image:「映画『Winny』予告編 3月10日全国公開」YouTubeより引用)