この記事をお読みの方の中には、Windows 95はリアルタイムで使用していたものの、『Windows 95の登場以前はパソコンに馴染みがなかった』という方もいるのではないでしょうか。良くも悪くも「Windows 95の登場以後」にパソコン及びインターネットの利用を始めた方にとっては、Web(ワールドワイドウェブ)は何が画期的だったのか、イメージが付かないかもしれません。
「Web」登場以前、PCの通信は「パソコン通信」が主流でした。そしてパソコン通信は今日のインターネットより「遥かに狭いネットワーク」だったのが特徴です。今回はこの懐かしのパソコン通信と、Webの違いについてご紹介します。
パソコン通信は「パソコン通信A」と「パソコン通信B」が繋がらない
パソコン通信の最大の特徴は、それぞれのネットワークが独立したクローズドな環境であったことです。たとえば「パソコン通信A」と「パソコン通信B」がそれぞれ別々のネットワークとして存在しているとしましょう。
この場合「パソコン通信A」と「パソコン通信B」のユーザーは交流できません。それどころかパソコン通信Aのユーザーが、パソコン通信Bに乗り換えた場合、電子メールやBBS、アクセス用のソフトの設定などをすべて「パソコン通信B用」に再設定する必要がありました。
これはパソコン通信のアクセス方法などはプロバイダに依存し、パソコン通信Aやパソコン通信Bごとに設定が共通化できなかったことが大きな要因です。一方、Web(ワールドワイドウェブ)では多くの方がその恩恵を日常的に得ているように、Webサイト及びそのアクセス手段などは世界で共通です。
パソコン通信ではたとえばBBS1つにアクセスするにも、パソコン通信Aとパソコン通信Bでは使い方もキーボード操作も、そもそもアクセス方法すら異なるのがごくごく当たり前のことでした。Webにはパソコン通信のような制約がなく、データへのアクセス手順まですべて共通化されていると言えるでしょう。
「WWW」の登場は1991年
World Wide Web(WWW)、通称「ウェブ」はティム・バーナーズ=リー氏によって考案され、1991年に登場しました。同氏はURLやHTTPmHTML の最初の設計も手掛け、異なるコンピューター間でのシームレスな情報交換を技術的に実現しました。そんな「WWW」は、登場当初は大学や研究機関のデータ共有を目的に使用されました。
爆発的な「WWW」の広まりはWindows 95の登場がきっかけ
WWWの普及に大きな転機をもたらしたのが、1995年に発売された「Windows 95」。Windows 95は爆発的に売れたOSであり、国内の発売日である1995年11月23日は午前0時ぴったりに販売を開始する店舗も多数。秋葉原では販売開始までのカウントダウンが行われたり、深夜イベントが行われたほどです。
そんなWindows 95が特に注目された理由には「インターネット対応」が挙げられます。従来のWindows 3.1は標準でネットワーク機能を持っておらず、「WWW」を使うには別途で通信ソフトが必要でした。しかし、Windows 95はTCP/IPプロトコルを搭載しており、ダイヤルアップ接続機能やWebブラウザも搭載されていました。
つまり「Windows 95を買えばインターネットが使える」という分かりやすさが、一般の方を大きく惹きつけたと言えるでしょう。Windows 95の登場以降は爆発的に「WWW」が普及し、パソコン通信は徐々に下火へと転じました。
インターネット普及後の「パソコン通信」
パソコン通信はWindows 95の登場とインターネットの普及後、しばらくは一定のニーズを保ち続けましたが、00年代に差し掛かるころには大きく利用者数が減少しました。
たとえばニフティは当時、国内でパソコン通信サービスを提供している主要企業のひとつでしたが、2006年5月31日をもってサービスを終了。2006年のサービス終了時には利用者数は約2万人でした。
一方で、パソコン通信の文化の一部は、インターネット上のコミュニティやサービスに受け継がれています。たとえばパソコン通信で親しまれていた掲示板などのコミュニケーション機能は、現在のSNSやメッセンジャーアプリにも通じるものがあります。このように、パソコン通信は現在のインターネット文化の礎となった面もあるのです。
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