渋谷区の「高齢者スマホ無料貸与」に賛否…LINE、KDDIが潤うだけなら公平性を明らかに

渋谷区がはじめた高齢者へスマートフォン貸与の実証事業が賛否両論だ。デジタルサービスを推進する渋谷区にとって、高齢者などの情報弱者との溝を埋めることが大きな課題となっている。そのためスマホを貸し出して高齢者にもデジタル文化に慣れてもらうことは社会的意義も大きい取組みといえるだろう。

しかし一方で、この事業の課題点についてもネット上で複数指摘されはじめており、SNS上では不信感も広がっている。

高齢者へのスマホ貸与、情報格差を解消するか?

無償提供によって情報格差は解消されるのか?

 9月6日、渋谷区とKDDIが65歳以上の高齢者へスマホ無料貸し出しなどを実施する実証事業をスタートすると発表した。端末貸与の試みは今月からはじまり、2023年8月まで行われる。対象はスマホを未所持の人になるため、貸与にともないスマホデビューのための勉強会を行ったり、使いこなせるようになるまでの継続的なサポートが行われる予定だ。「まったくどう使えばいいか分からない未知のもの」であるスマホを活用してもらい、見守りや各種手続き、健康づくりなどに役立ててもらうことが狙いだ。

 高齢や貧困を理由にした情報格差(デジタルデバイド)が、生活の質に影響を与えることはあきらかだ。特にスマートフォンは生活のインフラである。無償貸与によって解消される社会問題があるのは明らかだが心配の声もある。

公平性、透明性、安全性の担保が推進の鍵か

 たとえば、今回の実証事業は大手キャリアの一角KDDIとの協力で行われることから「無償貸与後はそのまま契約になることを考えると『囲い込み』では」と危惧する声が上がっている。また貸与される予定の機種が2019年4月に発売されたサムスン製の「Galaxy A20」であることから、「まだ売ってたのか」「在庫処分では」と企業のメリットありきの動きではないかという疑念も。しかし逆に新製品を貸与すれば「売り上げほしさか?」と言われることは目に見えている。在庫の余る“型落ち”を利用するのは、今後の持続可能なしくみを目指すなら妥当なラインだろう。とはいえ、行政が行うことなので機種選定や入札の詳細を明らかにしてほしいという気持ちは当然だ。

 さらに、渋谷区は「LINE」を活用した区民への情報配信や防災アプリなどのデジタルサービスを進めているため、スマホ貸与とともに同サービスを浸透させていくことになる。ただ今年3月、LINEはユーザーの個人情報が中国の関連会社からアクセス可能になっていたという前科も。結果的に個人情報の流出はなかったとしたが、ユーザーに不安を与えたことはたしかだ。

 不安や疑念が渦巻くなかで、渋谷区とKDDIは社会の格差を埋めていけるのだろうか。

参照元:渋谷区とKDDI、高齢者1700人にスマホ2年間無料貸与–デジタルデバイド解消へ【CNET Japan

オトナライフ編集部
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