首都圏人口格差 昼間はガラガラ! ますます進む一極集中

働く若者は東京を目指し、高齢者は他3県へ

(Image:Sean Pavone / Shutterstock.com)

 東京都への人口集中が止まらない。総務省が発表した最新のデータ(2017年1月1日時点)によると、東京の人口は1304万人を突破。日本全体で1億2558万人だから、その割合は実に1割を超える。地方創生が叫ばれるなかで、一極集中の傾向はますます強まっているのだ。
 埼玉県では、10~20代の若年層が東京都区部に転出している一方、30~50代の中年層や60代以降の高年層が東京都から転入する傾向が強い。千葉県と神奈川県は似たような傾向があり、10~40代の若年・中年層が東京都区部へと転出し、逆に東京都区部の60代以降の高年層が転入しているのだ。
 こうして10~20代の若年層の東京都区部への転入超過数は約7万3000人に達している。一方で60代以降は約8600人の転出超過。人口の一極集中だけでなく、若者を奪っているともいえるだろう。
 とはいえ、東京はあくまで働くための都市。15歳未満の年少人口割合を見ると、東京都は11・5%で全国44位と低水準なのである。その一方で高齢化が進んでいる埼玉県や神奈川県は同12・6%で全国24位。人口の多い都市が低くなる傾向にあるが、それにしてもこの差は無視できない。子どもを持った世帯は東京ではなく、周囲の3県などに移住する傾向があるようだ。
 ちなみに、東京都は人口の転入率も転出率も全国1位。人の入れ替わりが激しいのは言うまでもない。次いで神奈川県が転入率、転出率ともに同2位で続く。千葉県は転入率が3位、転出率5位。埼玉は転入率4位、転出率8位となっている。首都圏のなかでは埼玉県がもっとも人口流動が少ない。
 ただ、神奈川県、千葉県、埼玉県も人口が減少しているわけではない。全国で人口が増加しているのは愛知県や沖縄県などの8県のみだが、そのなかに首都圏3県も含まれている。人口増加率は年々鈍ってはいるものの首都圏としての名目は保っているといえるだろう。

意外にも衰退の危機に瀕している神奈川県

(Image:picture cells / Shutterstock.com)

 神奈川県といえば、全国市区町村でナンバーワンの人口を誇る横浜市、京浜工業地帯を担う川崎市などの大都市を擁している。人気の東急東横線の沿線エリアは、人口流入に伴い、大型タワーマンションなどの開発も進んでいる。武蔵小杉駅周辺は10年前と見違えるほどの発展を見せている。鎌倉や湘南といった観光都市も充実し、首都圏では東京に次ぐ二番手という位置づけにあることに異論はないだろう。
 何かとハイソで都会的なイメージが強い神奈川県だが、実は人口増加にかげりが見え始めている。
 要因はいくつか考えられる。まず、ひとつにこれまで人口増加を支えてきた横浜神話の衰退だ。かつて「首都圏の住宅地」と呼ばれ、集合住宅が次々と建てられた港南区は高齢化による人口減少が徐々に進行。転入は平成19(2007)年に1万1563件だったが、平成24(2012)年には9281件まで低下。そのほか横浜18区のうち8区でも人口減少に転じている。平成28(2016)年には横浜市全体で戦後で初めて自然減(出生数─死亡数)を記録し、2019年以降は人口減少年に転落する可能性が指摘されているほどだ。

東京のベッドタウン機能を追求する埼玉県

(Image:picture cells / Shutterstock.com)

 埼玉県は7都県と隣接しており、関東では神奈川をのぞくすべての都県にアクセスできる交通の要衝だ。特に鉄道網の発達は目を見張るものがある、東北・上越などの新幹線6路線をはじめ、宇都宮線や高崎線、京浜東北線といったJR在来線だけでなく東武線や西武線の各私鉄も充実。東京・千葉・神奈川へのアクセスは鉄道だけで済んでしまうのだ。鉄道の客が県内を移動しているかどうかを示す鉄道旅客域内移動率は36・95%。全国平均が78・88%なので、多くの人が県外へ移動していることになる。こうした数字を裏付けるのが、定住人口のうちどのくらいの人が通勤・通学で県外へと移動するかを示す昼間人口比率だ。
 埼玉県は1960年代から県全体では人口増加を続けるものの、もっとも昼間に人が減る県でもある。昼間人口比率は88・9で全国で最低を記録し、その地位を揺るぎないものとしている。少し古い言葉を使うならば、まさに「ベッドタウン」なのである。
 通勤・通学で向かう先でもっとも多いのは、もちろん東京都で94万602人。次いで多いのは意外にも埼玉県民がライバルとしている(?)千葉県で、4万245人。ちなみに千葉県から埼玉県に流入する人口は3万8557人。やや勤務地や通学地としては千葉県のほうが若干勝っているのかもしれない。そして3位は神奈川県……ではなく群馬県。2万6613人が毎日群馬に通っている。
 駅まではおそらく自転車を利用しているのだろう。人口100人あたりの自転車保有台数は全国トップ。平地が多いこともあり、家から駅までは自転車で、そこから電車というのが埼玉県民の生活スタイルのようだ。

はっきりと西高東低の差が出る千葉県

(Image:Ned Snowman / Shutterstock.com)

 首都圏のなかでは、もっとも東日本大震災の被害が大きかった千葉県。直後は人口転出が相次いだが、平成26(2014)年から転入超過に転じて見事にV字回復を果たした。東京に近い北西部で船橋市や流山市といった若い子育て世帯に注目を浴びていることも影響しているのだろう。そもそも千葉県はポテンシャルが高い。というのも人が住むための土地の割合を示す可住地面積割合が大阪府に次いで全国2位で、まだまだ余裕があるのだ。
 しかし、千葉県は全体が半島のため、東京にアクセスできる地域が北西部に限定されている。神奈川県や埼玉県に比べると、鉄道によるアクセス網が県内全域に浸透しきれなかったのだ。
 東京への鉄道アクセスはJR京葉線や総武線、東京メトロ東西線などがメインだが、本数や私鉄の充実度では神奈川県、埼玉県には遠く及ばない。そのため、県南部や太平洋沿岸部では少子高齢化の波をもろに受けている。夷隅地区(勝浦市、いすみ市、夷隅郡)と安房地区(館山市、鴨川市、南房総市、安房郡)では、老年人口(65歳以上)の割合が40%間近になっている。市区町村別の平均年齢でも御宿町で57・3歳、次いで鋸南町の56・2歳。ここ10年以内で平均年齢が60歳を超え、限界集落となる可能性も示唆されるほどだ。

引用元:首都圏格差 首都圏生活研究会 (著)(三交社刊)

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